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ショスタコの途中 [現代音楽]

只今、モルゴーアQのショスタコーヴィチ弦楽四重奏全曲演奏会、第6番までが終わったところ。正直、これほどヘビーとは思わなかった。なにせショスタコの音楽言語というのは一種の「ハナモゲラ語」なわけだから、途中を寝てたり、飛ばして聴いてたりすることが出来ない。ともかく鳴ってるモチーフは全部聴かなきゃならぬ。だから、猛烈に疲れる。他のことが出来なくなる。月曜朝に入れねばならぬ原稿があるのだが、前頭葉がそっちの方向を向いてくれない。しょーがないから、これから寝て、日曜の午前中のうちに、午後2時過ぎにあの短くチャーミングな第7番が鳴り出す前に一気に決着をつけてしまうしかない。ヘビーだ。

それほどインパクトがある、ということです。1日で全部とかやられたら、数日立ち直れんじゃろ。

モルゴーアQは、これだけ集中して弾くために、イケイケの燃え上がる演奏を続けているわけではありません(昼と夜の演奏会の間の楽屋では、バカ話などをして緊張を解くようにふるまっているそうな)。相当に押さえた表現に終始し、結果として、聴衆にはますます集中力が必要な演奏会になってます。これに400人もの人が付き合ってるのだから、東京もちょっとしたもんじゃあないの。

さても、日曜も2回、水曜に最終回があるこのチクルス、土曜日にいらっしゃらなかった方が足を伸ばす理由は、音楽の他にもふたつあります。

ひとつは、もう世界のどこにも売ってないかの隠れた名盤、「ディストラクション」が山積みになって売ってること。あの吉松隆の秘曲が入っている唯一のお皿です。これを買うためだけに、いらっしゃいませ。廃盤になって処分されるところを、モルゴーアQが全部引き取って、個人的に演奏会場でだけ販売しているもの。なくなったらオシマイです。

もうひとつ。当チクルスのプログラムに、モルゴーアQの演奏会の冊子にいつも執筆なさっている林光さんによるショスタコーヴィチ弦楽四重奏全曲の曲目解説が掲載されていること。これ、猛烈な貴重品です。そこのあなた、チンピラ音楽ライターの商売のための売文ではないんだよ。林光という創作者が、別の創作者のどういうところを聴いているかがはっきりと覗える文献、「林光ショスタコを論ずる」という内容です。ショスタコーヴィチという作曲家が調性(機能和声)というユニヴァーサルな文法をどう逆手に取っているかがよく判るまともな曲解なんだけど、「へえ、林さんはそういう風に聴いているのかぁ」と思わされる部分も少なくない。この曲目解説を手に入れるためだけにも、晴海は第一生命ホールで木戸銭を払う価値は充分にあります(断言!)。ショスタコ・ファン、林光ファン、現代音楽ファン、それぞれに必携ながら、今後は極めて入手困難な「幻の文献」となること必至ですぞ。

さて、では一寝入りして、8番9番という派手派手な午後から、いよいよ後期のショスタコの迷宮へと巡りいる秋の宵へ。まだまだショスタコの途中。一生途中のまんまのような気もするけど。

追記:最初は「弦楽四重奏」カテゴリーにしてた駄文ですけど、ご覧のようにホントのテーマは「モルゴーアのショスタコーヴィチ演奏」じゃなくて「林光のショスタコーヴィチ弦楽四重奏論」なので、後の検索のために「現代音楽」カテゴリーにしておきます。


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