ゼンタさんったらもーたいへん [演奏家]
バイエルン国立歌劇場の「彷徨えるオランダ人」を見物してきたです。

以下、この演出を観る可能性があり、何が起きるか絶対に知らずにいたいという方は、読んではなりません。ネタバレです。
今シーズンは今日が最後みたいだし、小生はコンヴィチュニーという演出家さんを追いかけているわけではないので知らなかっただけで、もう5シーズン以上前から出ている演出なので、話題としては今更、なんですけど。
恐らくはヴァーグナーの数ある作品の中で、いちばん滅茶苦茶がやれるのが「オランダ人」なんじゃないかしら。「タンホイザー」とともに、終幕に向けての5分でバタバタバタバタといろんなことが起きて、あれあれあれぇ、と思ってるうちに相当に無茶な展開を音楽の力で説き伏せてしまい、「あああ凄かった」と納得してしまう。真にもって音楽で他人を言いくるめちゃうヴァーグナーの詐欺師みたいなパワーは、小泉元総理よりも、はたまた橋下市長よりも、遙かに強いぞ。
さても、本日のコンヴィチュニー演出の舞台、序曲の最後で救済の部分がなかったことから、これはまともな終わり方はしないな、と予告がされてた。全幕を通しで2時間半くらいで一気に上演しちゃうやり方です。
幕が上がると、案外と起きてくることはまとも。最初に登場したオランダ人がモノローグで身の上話をしてる最中に白いすっぴんのワンピースの天使(当日に無料配布物に「天使」なんて役柄がキャスト一覧の最後に出ていたので、これまたなんかやらかすことは判った)が出て来て、オランダ人にパントマイムで絡んだりしてはいるものの、ま、全然まとも。娘達が糸紡ぎをするシーンはフィットネスクラブで、みんなで自転車漕いでるのは爆笑ものだけど、これもコンヴィチュニーならというか、今時の舞台ならビックリするほどのことではない。オランダ人たちのレンブラントの絵から出て来たみたいな衣装と、村人達の今風の生活スタイルが対比されて、とても良く分かる。どんな絵面かをご覧になりたければ、こちらをどうぞ。まだアップされてると思うけど。
http://www.bayerische.staatsoper.de/889-aWQ9ODM2JnRlcm1pbj0xMDAwOQ-~spielplan~oper~veranstaltungen~vorstellung.html
そこから先は、設定は多少は突飛だけど、やってることは案外というか、全くまとも。311前に二期会でもやったアムステルダムで出た「ヨカナーンとサロメの愛の成就の物語」みたいな強引極まりない大技があるでもなく、政治的な含みがあるでもなく。へえぇ、6年くらい前の演出だけど、コンヴィチュニーさんもすっかり大人じゃないの、これじゃビオイトやらの過激演出と渡り合うことなどしない大家の芸でんがな、と思ってたですよ。
ところがどっこい、やってくれましたわ。
最後の最後、オランダ人がゼンタにもう救いはないと言い放つところで、ゼンタはオランダ人の叫びを前に、デカイ声で笑ってる。あああ、ゼンタさん、切れちゃったぁ。どーするのか、すっかりいっちゃったゼンタさんが勝手に自殺して、オランダ人もとっとと去っちゃって、エリックとパパがぼーぜんとしている、って最近ではお馴染みの幕切れなんじゃろなぁ、人々のコミュニケーションの不全を描く定番のやり方だべぇ、と思いながら眺めてた。
そしたらなんと、ゼンタさん、最後に「あたしが救ってやる」なんて訳の判らぬことを叫び、ゴロゴロと樽を転がしてくる。どうやら火薬樽みたいで、歌い終わるやいきなり火をつけちゃう。で、ドッカーンとデカイ音がして、舞台はいきなり暗転。ただ真っ暗。おおお、あんたはブリュンヒルデかぁあああ!舞台から火薬の臭いがするだけであります。なんとなんと、そっからさきは、オケは弾きません!ホントに、弾きません!どこでどうやってるかしらないけど、録音してあると思われる(裏でバンドがやってるにしてはいろんな音がしていたよーな)救済無しの終幕までの2分ほどの部分が、微かに聞こえる。判ってる人には聞こえるけど、わかんないひとにはなにが小さく鳴ってるのと訝しく思うしかないような音楽が響いてる。
んで、オシマイ。
いやぁ、やられましたねぇ。コンヴィチュニー節、文字通り、炸裂でした。どーしていいか判らなくなっておかしくなっちゃったゼンタさんが、舞台の上の全てを全部破壊して終わり、という殆ど途中打ち切りの連載漫画みたいな話になってます。
随分と長く出ているし、最初は凄く話題になっただろう演出だけど、お客さんにこの結末を知っている人は案外といないようで、拍手も戸惑い気味。カーテンコールでいちばん立派に歌ってたエリック(バイロイトで鼠軍団を率いての戦闘指揮を嫁さんの我が儘故に直前にキャンセルした、今や人気うなぎ登りのイケメン君、クラウス・フローリアン・フォーグト)にばかり、盛んに拍手が浴びせられてました。どうやらお気に召さなかった方が数人、天井桟敷にいたようで、指揮者の大野さんに向かってぶーぶー叫んでましたね。最後の大盛り上がりで指揮を放棄するなんて噴飯ものの演出に従ったことに対するこの演出恒例の非難かもしれないなぁ。
てなわけで、猛烈にすっきりしない「オランダ人」でありました。年明けの仕事も始まった週の半ば、フィクションでのカタストロフを期待し130Euro払った方が「ゼンタじゃなく俺が劇場を爆破してやる」と叫んでも、あたしゃ許しますよ。ってか、それが普通でしょうに。こういう演出を斬新だと褒める心の広さは、小生は持ち合わせておりません。
とはいうものの、演出としての体を成していない空前のレベルの低さだった昨年7月の「アッシジの聖フランチェスコ」の悪夢を思えば、演出家としての力量は比べるのが失礼な程だけどさ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-07-02
イースターにはコンヴィチュニー御大、「パルシファル」出してるなぁ。うううん、ちょっと眺めたくなったぞ。

以下、この演出を観る可能性があり、何が起きるか絶対に知らずにいたいという方は、読んではなりません。ネタバレです。
今シーズンは今日が最後みたいだし、小生はコンヴィチュニーという演出家さんを追いかけているわけではないので知らなかっただけで、もう5シーズン以上前から出ている演出なので、話題としては今更、なんですけど。
恐らくはヴァーグナーの数ある作品の中で、いちばん滅茶苦茶がやれるのが「オランダ人」なんじゃないかしら。「タンホイザー」とともに、終幕に向けての5分でバタバタバタバタといろんなことが起きて、あれあれあれぇ、と思ってるうちに相当に無茶な展開を音楽の力で説き伏せてしまい、「あああ凄かった」と納得してしまう。真にもって音楽で他人を言いくるめちゃうヴァーグナーの詐欺師みたいなパワーは、小泉元総理よりも、はたまた橋下市長よりも、遙かに強いぞ。
さても、本日のコンヴィチュニー演出の舞台、序曲の最後で救済の部分がなかったことから、これはまともな終わり方はしないな、と予告がされてた。全幕を通しで2時間半くらいで一気に上演しちゃうやり方です。
幕が上がると、案外と起きてくることはまとも。最初に登場したオランダ人がモノローグで身の上話をしてる最中に白いすっぴんのワンピースの天使(当日に無料配布物に「天使」なんて役柄がキャスト一覧の最後に出ていたので、これまたなんかやらかすことは判った)が出て来て、オランダ人にパントマイムで絡んだりしてはいるものの、ま、全然まとも。娘達が糸紡ぎをするシーンはフィットネスクラブで、みんなで自転車漕いでるのは爆笑ものだけど、これもコンヴィチュニーならというか、今時の舞台ならビックリするほどのことではない。オランダ人たちのレンブラントの絵から出て来たみたいな衣装と、村人達の今風の生活スタイルが対比されて、とても良く分かる。どんな絵面かをご覧になりたければ、こちらをどうぞ。まだアップされてると思うけど。
http://www.bayerische.staatsoper.de/889-aWQ9ODM2JnRlcm1pbj0xMDAwOQ-~spielplan~oper~veranstaltungen~vorstellung.html
そこから先は、設定は多少は突飛だけど、やってることは案外というか、全くまとも。311前に二期会でもやったアムステルダムで出た「ヨカナーンとサロメの愛の成就の物語」みたいな強引極まりない大技があるでもなく、政治的な含みがあるでもなく。へえぇ、6年くらい前の演出だけど、コンヴィチュニーさんもすっかり大人じゃないの、これじゃビオイトやらの過激演出と渡り合うことなどしない大家の芸でんがな、と思ってたですよ。
ところがどっこい、やってくれましたわ。
最後の最後、オランダ人がゼンタにもう救いはないと言い放つところで、ゼンタはオランダ人の叫びを前に、デカイ声で笑ってる。あああ、ゼンタさん、切れちゃったぁ。どーするのか、すっかりいっちゃったゼンタさんが勝手に自殺して、オランダ人もとっとと去っちゃって、エリックとパパがぼーぜんとしている、って最近ではお馴染みの幕切れなんじゃろなぁ、人々のコミュニケーションの不全を描く定番のやり方だべぇ、と思いながら眺めてた。
そしたらなんと、ゼンタさん、最後に「あたしが救ってやる」なんて訳の判らぬことを叫び、ゴロゴロと樽を転がしてくる。どうやら火薬樽みたいで、歌い終わるやいきなり火をつけちゃう。で、ドッカーンとデカイ音がして、舞台はいきなり暗転。ただ真っ暗。おおお、あんたはブリュンヒルデかぁあああ!舞台から火薬の臭いがするだけであります。なんとなんと、そっからさきは、オケは弾きません!ホントに、弾きません!どこでどうやってるかしらないけど、録音してあると思われる(裏でバンドがやってるにしてはいろんな音がしていたよーな)救済無しの終幕までの2分ほどの部分が、微かに聞こえる。判ってる人には聞こえるけど、わかんないひとにはなにが小さく鳴ってるのと訝しく思うしかないような音楽が響いてる。
んで、オシマイ。
いやぁ、やられましたねぇ。コンヴィチュニー節、文字通り、炸裂でした。どーしていいか判らなくなっておかしくなっちゃったゼンタさんが、舞台の上の全てを全部破壊して終わり、という殆ど途中打ち切りの連載漫画みたいな話になってます。
随分と長く出ているし、最初は凄く話題になっただろう演出だけど、お客さんにこの結末を知っている人は案外といないようで、拍手も戸惑い気味。カーテンコールでいちばん立派に歌ってたエリック(バイロイトで鼠軍団を率いての戦闘指揮を嫁さんの我が儘故に直前にキャンセルした、今や人気うなぎ登りのイケメン君、クラウス・フローリアン・フォーグト)にばかり、盛んに拍手が浴びせられてました。どうやらお気に召さなかった方が数人、天井桟敷にいたようで、指揮者の大野さんに向かってぶーぶー叫んでましたね。最後の大盛り上がりで指揮を放棄するなんて噴飯ものの演出に従ったことに対するこの演出恒例の非難かもしれないなぁ。
てなわけで、猛烈にすっきりしない「オランダ人」でありました。年明けの仕事も始まった週の半ば、フィクションでのカタストロフを期待し130Euro払った方が「ゼンタじゃなく俺が劇場を爆破してやる」と叫んでも、あたしゃ許しますよ。ってか、それが普通でしょうに。こういう演出を斬新だと褒める心の広さは、小生は持ち合わせておりません。
とはいうものの、演出としての体を成していない空前のレベルの低さだった昨年7月の「アッシジの聖フランチェスコ」の悪夢を思えば、演出家としての力量は比べるのが失礼な程だけどさ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-07-02
イースターにはコンヴィチュニー御大、「パルシファル」出してるなぁ。うううん、ちょっと眺めたくなったぞ。





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