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「楽しい」も「簡単な」も「わんぱく」もなく [音楽業界]

1日夕方が続いているような、ドンヨリした曇り空のハイデルベルクです。「ハイデルベルクの春」音楽祭最終日、これからまた新市街のアルテ・ペタゴギッシュ・ホッホシューレに行き、延々となんのかんの。で、深夜までやってた筈の昨日の感想をひとことだけ。

ええと、昨今、なんだろーが、日本国のローカルな都市で「音楽祭」というイベントが大流行で、朝から晩までいろんな演奏会を次々やるのはもう完全に定番でありますな。その基本にあるのは、「誰でも楽しいクラシック」であり「簡単な入門の音楽を次々と」であり「わんぱくな君も楽器にチャレンジ」であり、ま、よーするに、いかに間口を広げるか、が課題。みんながジャブジャブ来てくれないと、自治体が金を出したりするわけにいかぬ、と首長さんが口から泡を吹いたりするわけだしさ。

んで、昨日のハイデルベルクのイベント、正直、「楽しく」もなければ「簡単」でもなければ、ましてや「わんぱくちびっ子」など相手にしていない。集まるのはこの街の御隠居たち、ま、みんな車で来てるからフランクフルト南部やらシュトゥットガルトの北、マンハイムやらくらいの人も来てるんだろうけど、ともかく、数百人の老人が相手です。

んで、やってることも、もう全く媚がない。なんせ、学校講堂に並べた300くらいの椅子をいっぱいに、老男女が自由席確保に列を成し、熱心に聴き入るレクチャーが、「ベートーヴェン作品131の構造分析」であります。講師はかのアルバン・ベルクQのチェロ奏者、エルベン先生。それにアマリリスQにセカンドはヴォーチェQの眼鏡っ娘じゃない方を入れた弦楽四重奏が横にいて、いろいろ音を出す。
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レクチャーは、いきなり「オヴィデウスの「メタモルフォーゼン」に於けるアポロとヒアキントスは…」で始まって、ゲーテが出て来て、いつ弦楽四重奏が出てくのかと思う頃にやっと演奏家が出て来て、そこから先は冒頭のファーストの音型が「トリスタン」の溜息モチーフに似てる話になり、延々とモチーフの変容を追いかけ、最後は、コーダの12小節がまるで「サロメ」の最後のように突然終わる、ってさ。楽しい、だとか、感動、とかいう言葉は一切ありません。そんなこと、説明に使う言葉じゃないんでしょーな。

どこをどう叩いてもまるっきりガチガチ。これ以上固いネタをやってくれ、と言われても困るくらいのもの。それを1時間半弱、延々とやってて、聴衆は誰一人逃げ出さない。

そう、ここに、教養がある。もう正真正銘、逃げも隠れも出来ない、なんか文句あるかって教養がジャブジャブ溢れてるのでありますよ。これで15Euroの有料イベントです。

無論、この後、夜の9時からは同じ会場にバーカウンターを持ち込み、テーブル席も並べ、ビールやワインを飲みながら楽しく深夜まで次々と演奏を聴く、というお楽しみも控えているわけですけど…ショスタコの2番第1楽章で始まり、モーツァルトのト短調五重奏、それからヴェーベルンの作品5、って「楽しい」曲が並び、みんなビールを片手に、シーンと沈黙し集中して聴いてるぞ。ま、夜の10時を過ぎたところで小生はトンズラしたのだけど、その後にスカンジナヴィアのフィドル大会になったり、アコーディオンが出て来たりするんで、そっから空気が変わるんだろうだけどさぁ。

だからなんだ、ってんじゃないです。でも、こういう「ちびっ子」が「わんぱく」に「ふれあう」んじゃない音楽祭が、ここにはある、ってこと。それだけ。

フランクフルト空港から1時間という便利な場所なんだから、ちょっくら橋下市長でもご招待したいですね。これに1日付き合ってくれるなら、飛行機代、あたしが出して上げるよ。

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