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弦楽四重奏とオケの協奏曲は昨今の流行? [弦楽四重奏]

いよいよ東京の夏の終わりを告げる風物詩(なのか?)、サントリー芸術財団主催の夏のフェスティバルが始まります。出演者が異常に多いコンサートが多く、切符買わずに溜池行くとあらまぁ売り切れで入れません、なんてことも結構あるこのシリーズ、ご関心の向きは、さっさと電話したほーがいいでんがな。

さても、今年の目玉は雅楽による現代音楽なんだが、もうひとつはパスカル・デュサパンでありますな。で、メインの曲は、弦楽四重奏とオケの協奏曲、ってか、これ、弦楽四重奏の第6番だかって、わざわざ妙なタイトルも付いているんですよねぇ。去る1月にパリで聴いたときには、「なんでフランス新放送管のコンサートの真ん中でアーヴィン達が弦楽四重奏弾くんだろう、まあ、このフェスティバルはこういうことやるんだよねー」なんて思って客席に座ってたら、あらまあ、第6弦楽四重奏曲っていうけど、なんのことない、オケと弦楽四重奏の協奏曲じゃないの、って吃驚した。

オケと弦楽四重奏の協奏曲って、ありそうで、というか、なさそうで、あまりない。オケの定期会員数十年やってるって方でも、ソリストに弦楽四重奏が出て来たなんてのは、恐らく、経験したことないんじゃないかしら。たまにフェスティバルなどで学生オケの先生格やってた人達が前に出て、エルガーの《序奏とアレグロ》やるくらい。ま、これがいちばんよく聴きますね。昨年だかの初夏のサントリー青薔薇お庭でエクとアカデミーのフェロー達がやったり、この10月に岐阜のサラマンカホールでヘンシェルQがアマオケとこれやって、後半では何故か《カルミナ・ブラーナ》の中に入って弾く、ってのがある。結構、便利に使われてる曲です。

本格的なものとしては、なんといってもシェーンベルクの協奏曲が滅茶苦茶有名だけど、これも要はヘンデルの合奏協奏曲の編曲版で、ある意味、後のベリオなんかのものの考え方の先駆けになってるという意義はあるものの、ギャラが高い著名弦楽四重奏団をオケがソリストとして雇ってまでやらにゃならん曲ではない。やるとすれば、そのオケの首席奏者が弦楽四重奏として動く、ってのが殆ど。オケといっても室内オケ用の曲だから、わざわざメイジャーオケがやるもんではないし。

シェーンベルク大先生の例からもお判りのように、基本的にこれまでに書かれてきたオケと弦楽四重奏の協奏曲って、コンチェルト・グロッソのモダン版なんですね。オケがトゥッティを弾いて、それに弦楽四重奏がバロック時代の複数ソリスト協奏曲の独奏者達みたいに対応する、って造りです。要は、ヴィヴァルディ作曲「ふたつのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと弦楽合奏のための協奏曲」みたいなもんですわ。

ここから抜け出す新しい発想の協奏曲、ホントに「弦楽四重奏とオーケストラのための」でなければならない協奏曲の決定版はまだ人類史上出現していない、と断言してもあながち間違いではないのではなかろーかと思わないものでなくもない…くらいの感じかな。

てなわけで、考えようによっては、これから先、定番となる新作が出て来る可能性がばっちり残っているジャンルなんです。ほーれ、すすめぇ、ちょっと名前のある作曲家達よ!君たちの名を後世に残し得る形態が君の才能を待っているぞおおお!

こんなことは作曲業界、現代音楽業界にいる人はみんなとっくに判ってるわけで、それなりの数の新作が出て来ています。弦楽四重奏の連中のプロフィルを眺めていると、「〇〇の新作の弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲を初演」なんて表現はゴロゴロ出て来る。要は、お友達の作曲家が書いちゃって、アマオケとか地元オケで初演する、なんて例は案外と多いみたいなんですね。

デュサパンの曲はどうなってるかというと…まあ、明日になればみんなに判っちゃうんだからこんなところで書いても仕方ないけれど、宣伝の意味でちょっとだけ言えば、合奏協奏曲になってしまうことをなんとか拒否する姿勢は貫こうとしている曲ではあります。

じゃあ、どーするのか。ぶっちゃけ、弦楽四重奏は「いかにもアルディッティQ」という20世紀末アルディッティ流超絶技巧主義の音楽を振り撒き、それに対しオケは比較的因習的でノンビリしたロマン派的な響きで対抗する、ってところから始まります。様式の対立にしちゃうんですね。ある意味、ポストモダン王道のやり方で、それはそれで間違っていない。そこから始まってどこに行くのかがお楽しみ…ってところかな。ま、あんまり期待してるとスカって感じもあるんだけど。これがパリで演奏後のアーヴィン社長とデュサパンせんせー。言うまでもなく、いちばん右端がデュサパン様です。
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さあ、聴きたくなったでしょ。作曲家御本人も来てるということなので、どっかオタクっぽい風貌のニートがそのままオッサンになったみたいなデュサパン氏のお姿も拝めます。明日はサントリーホールへ急げっ!

ちなみに、この数年の弦楽四重奏とオケのコンチェルト新作で演奏頻度として最も成功しているのは、やっぱりジョン・アダムスの《アブソリュート・ジェスト》でしょう。SFOで確かセント・ローレンスQが初演して以降(ゴメン、調べてない、うろ覚えの記憶で書いてます)、この作品、世界中で初演合戦になってます。なんせSFOのヨーロッパツアーでやりまくりましたし、それに前後して去る2月にはアタッカQがスペイン初演している。この前にドーリックQがイギリスだかの初演をしてるし、もうすぐベネヴィッツQがチェコ初演をする。オーストラリア初演は数ヶ月前にオーストラリアQがやってます。おお、なんか「大阪国際コンクール優勝団体御用達作品」みたいじゃないかぁ!

中身は、如何にもアダムスらしい才気煥発さで、ぶちゃけ、ベートーヴェンの弦楽四重奏作品がオケとの掛け合いで変容されていく、ってこれまたポストモダンっぽい曲です。ですから、ベートーヴェン作品の音楽祭なんかをやるときに、常設弦楽四重奏がサイクルをやっていて、その団体をゲストにして地元オケとやるには最高の曲なんですわ。なんせ、独奏団体はベートーヴェンの弦楽四重奏をホントに良く知ってる連中であればあるほど効果的なんですから。

実はやくぺん先生のパソコンの中には某団体から送られてきた音データがあるのだけど、まさかここに貼り付けるわけにはいかんなぁ。しょうがないから、アダムスが喋ってる映像。ここまでやって音がないのはなんかホント、隔靴掻痒ですねぇ。ゴメン。

もうセント・ローレンスQの独占権は切れてるということなんで(だから一斉に演奏が始まったわけだが)、日本初演を競っても良いんじゃないんですかね。幸か不幸か、今、日本では現代音楽系の音楽祭を仕切ってるプロデューサーとか作曲家さんはヨーロッパ指向の人ばかりなんで、まだどこも手を付けてませんよ。今年の草津なんかがそろそろやるかと思ったんだけど。

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