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ハーゲンQ限りなく録音セッションな演奏会 [弦楽四重奏]

共著本残務整理と積み上がった己に対する秘書仕事で当電子壁新聞に記せていませんでしたが、今、東京は神田川沿いの大曲(おおまがり)、トッパンホールで、ちょっと過去の東京では類例のない演奏会シリーズが行われています。ハーゲンQの「ショスタコーヴィチ&シューベルト」シリーズでありまする。

チケットは完売とのことで、慌てて宣伝する必要などなーんにもない、そんなことされると現場がかえって面倒そうなので、今日まで触れませんでした。だから、「いきたーい」などと思ってもダメです。諦めなさいっ!

ええ、この演奏会、なんだか最近やたらめったらあっちこっちでやられるような気がする「ショスタコーヴィチ+●●」という今時のナウいヤングがシビれるインなトレンド…というわけでもないのだろうが、やっぱり、ある種の21世紀初頭のトレンドなんでしょうねぇ。先週は台北で「ショスタコ+ヴァインベルク+ベートーヴェン」サイクルだったわけだしさ。シンフォニー・コンサートでも、「ショスタコ+ペートーヴェン」というのがちょっと流行みたいだし。

その辺りを議論し始めればいくらでも与太話が出来るんだろうけど、それはこっちに置いておいて、今、大曲でやってるサイクルの話です。ショスタコの3、14、15番を前半に配し、後半はシューベルトの最後の3つをどんどんどん、とひとつづつ並べる3日間。これから出かける最後の日がちょっとヘビーになり過ぎる気もするけど、ま、恐らくは今日は大ト長調のヘビーさとはなんなのか、ステージ上からちょっとばかり毛色の変わった回答が成されそうなんで、「これはこれであり」と思わせてくれるか、楽しみでありますね。

ええ、このサイクル、お聴きになられた方はお判りのように、ともかくハーゲンQの面々、猛烈に準備して演奏してます。もの凄く下に引っ張ったダイナミックス、なによりもバランスは完璧で、一昔前の言い方をすれば「まるでレコードみたい」な演奏です。技術的に立派とかいうレベルではなく、所謂「解釈」という奴を隅々までしっかりやっていて、どこをとってもハーゲンQ、になってる。彼らがDGを出て、自分らのレーベルで最初に作ったモーツァルトにはホントにまあビックリさせられましたけど、あれをライブで、シューベルトとショスタコで眺めているようなもんであります。あの録音、ってか演奏、ある意味、子供はこういうことをしてはいけません、の18禁みたいなもんで、直後に某音楽雑誌のためにインタビューしたら、御本人らも「あれを真似てもダメですよ」と言明してましたから。

ま、普通の意味で良く言えば、「巨匠にのみ許される芸」でんな。おいおいおい、そこそうするかいな、って。

やくぺん先生が拝聴させて頂いた初日では(昨日は台風接近で葛飾オフィスの柿の木になにかあったら近所迷惑なので、大曲まで出かけられませんでした)、なによりもアンコールで演奏されたシューベルト第10番の第3楽章がとんでもなさの極みでした。
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猛烈に綺麗な和声の響きの海の上を、旋律が和音が落っこちないように辛うじて繋いでいく。おおおお、これこそ2000年代終わりから10年代初めのシュミット教室で研鑽を積んだ若い連中がやりたがっては、少なくとも現時点ではみなほぼ爆死のようにそこまで至らずに終わっている音楽の理想なんじゃなぁ、と膝を叩いたでありまする。力足らずでこれをやると、音楽のパルス感がなくなってしまい、停まってしまう。ただただ響きの海がじっとりと広がるだけになってしまう。先々週だっけ、ケルンのフィルハーモニーで聴いたアルミダQは、なんとかそれを横に動かす努力を彼ら彼女らなりにやっていて、この団体が何をしたいのか、ミュンヘンARD優勝に全く納得いっていなかったやくぺん先生としては、「そうか,君たちはそうなんだ、ゴメン、判らなかったあたしがバカだった」と過去の非礼暴言を詫びたい気持ちでいっぱいだったのですが、一昨日はその先にある理想の姿をいきなり見させてもらっちゃった、という感じでありましたです。はい。

で、なんでこんなことになってるか、トッパンホールの方に訊ねると、話は簡単。今回のチクルス、ハーゲンQのレーベルの為にライブ録音しているそうな。普段の来日公演では、本番の数時間前にやってきて会場で音チェックして本番なんだけど、今回はもう朝からホールに来て、びっちり練習している。一緒に来ているチーフ技術者さんと日本国内の録音スタッフは、そんな練習も別テイクとして録音している。で、夜の本番に臨んでいる。

考えてみれば、今や年間にそれほどの回数の演奏会をこなしているわけではないハーゲンQ(なんせ、ファーストのルーカス氏は、先月の頭はレッジョ・エミリアで審査員ずーっとしてたわけですし)、少ないレパートリーに「巨匠となったハーゲンQの解釈」を細部まで詰め込み、ザルツブルクとか、シュヴァルツェンベルクとか、パリとか、あまり多くはないステージで披露している。そんな中で、きっちりライブ録音をやろうと考えると、規模といい遮蔽性といい、聴衆のノイズの少なさといい、最も理想的な空間がトッパンホールと考えるのは極めて筋の通った話でありましょう。

無論、ぶっちゃけ、聴衆が相手ではないとまで割り切っているとは言わないけど、トッパンとはいえホール全体に音を埋める、という音楽ではありません。だから、客席の彼方此方からは、「音がちっちゃい」という初期ハーゲンQの演奏会で盛んにきかれた声もあがっていました(バンフでハーゲンQが優勝出来なかったのは、あの音響最悪の会場で音が聞こえなかったからだ、という嘘かホントか判らぬ話はさかんにされましたっけ)。でも、この会場なら、それでも聴衆がきちんと耳を澄ませてくれれば大丈夫、問題ない、ってことなんでしょうねぇ。

こうして考えてみると、カザルスホールに始まった世界に、少なくともヨーロッパには、類例のない「室内楽専用ホール」(とうとうブーレーズ・ザ-ルという形でベルリンに逆輸出されるに至った)というのは、意味があるんだなぁ、と思わされたです。

ハーゲンQのショスタコ&シューベルト、そう遠くない将来、ディスクとなって出て来るでしょう。請うご期待。楽譜、用意しておいた方がいいですよ。「あれっ」てとこだらけだから。

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