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大阪で《フランケンシュタイン!!》を演奏する必要があるのか? [現代音楽]

昨日、大阪いずみホールで、いずみシンフォニエッタがいろんなタイプの作曲家の「協奏曲」を4つ並べる、という意欲的な演奏会がありましたです。暑い夏の午後、ましてや裏番組にはフェスティバルホールのバーンスタイン《ミサ曲》とか、兵庫での《フィガロの結婚》とか、はたまたシンフォニーホールではレーピン独奏のN響とか、演奏会てんこ盛りの中、それなりの数の聴衆が席を埋めていたのはスゴいことであります。ホント、関係者の皆様の努力に頭が下がるであります。

大阪湾岸のプリンス古部様が独奏を勤めたジョン・ウィリアムスの、まるでイギリス20世紀前半作品かと思っちゃうようなオーボエ協奏曲とか、イサン・ユンのこんな小さな編成なのにとっても濃厚な響きのクラリネット協奏曲とか、いろいろと面白かったんですが、やっぱり最後に演奏されたハインツ・カール・グルーバーの知る人ぞ知る、ってか、20世紀後半のハチャメチャ系を代表する超有名曲《フランケンシュタイン!!》の室内オケ版、というのが興味深かったでありまする。興味深い、というか、面白い、というか、面白くない、というか…まあ、ともかく、なんじゃろねぇ、と今更ながらに考え込みそうになった。

というのも、その前の晩にフェスティバルホールでかのバーンスタィンの《ミサ曲》を見物しているわけでして、バーンスタインがこの曲創作の最中にグルーバーにアドヴァイスしたという逸話はそれなりに有名で、こうやってほぼ同じ頃に書かれたタイプこそ違えどハチャメチャという意味で音楽史上に名を遺す作品を続けて聞かされると、「なるほどねぇ…」としか言いようがない部分もあるわけでして…

この《フランケンシュタイン!!》という作品、要は、今世紀半ば以降くらいのオーケストレーション技法を次々と繰り出し、そこに面白系の玩具楽器なんぞもじゃんじゃん突っ込み、マイクを用いた声楽家が通常のオペラ発声法とは異なる歌唱法でいろんな声を出して歌う(というか、朗読するというか)歌曲集、であります。テキストは、アメリカンコミックやらを中心に当時のガジェット文化のパロディネタばかりです。オリジナルはドイツ語なのかな、それとも英語なのか、よく知らんです、スイマセン。調べれば直ぐに判るでしょ,今時は。映像はいくらでもあります。これ、とか。って、この映像、何語なの?
https://www.youtube.com/watch?v=iPTJ9mRI4w0

日本では数年前に下野氏が読響でやったのが初演だったというのは驚きだけど、今回も下野氏で、室内オケ版の日本初演だったのでしょうねぇ、恐らく。(追記:これ、間違いでした。事実関係の指摘を川島さんからいただきました。下のコメント欄ご参照あれ。)

この作品のような「いろんな楽器が出て来て楽しく面白可笑しくオーケストラを鳴らしたり、奏者が半分芝居をしたりする」という作品は、ポストモダンのゲンダイオンガクの中ではひとつのジャンルを確立していると言ってもいいくらいで、こういうのが得意な現代作曲家さんもいらっしゃいます。去年の香港の《松風》初演のとき、地元若手作曲家さんにセミナーするために暫く細川氏が香港に滞在しレクチャーやセミナーを行い、その結果発表会みたいな演奏会を見物したんだけど、そこでもこのようなタイプの日本の作曲家さんの作品が紹介され、細川氏とは際立って作風が違い、質疑応答でそこにいた指揮者のイップさんが手を挙げて「どうしてこの作品を選んだんですか」みたいな質問をして、細川さんが「選んだのは僕じゃなくて、国際なんとかかんとかという組織なんですけど…」と苦笑しながらいろいろ解説をなさってました。その場で、細川氏がお使いになっていた「マンガ系作曲家」という言い方が印象深かった。そう、このグローバー作品こそ、正に「マンガ系」の開祖のひとつでんがなぁ。

で、昨日の演奏、このようなマンガ系の常として、何が起きるかワクワク眺めているうちに30分くらいはあっと言う間に過ぎちゃう、という「何をやってるか訳が判らぬゲンダイオンガク」とは真逆の世界が展開し、聴衆もそれなりに楽しんだり笑ったりしてたわけなんだけど…正直、ううううん、と思わざるを得ないこともあった。

というのも、お客さんがいちばん素直に笑っていたのが、唯一日本語で、それも関西弁で語られた部分だった、という事実をどう考えるべきか…ということ。

前の晩のバーンスタインもそうなんだけど、こういうハチャメチャ系作品というのは、時代や文化の背景、コンテクストにもの凄く大きく寄りかかっています。ってか、ベッタリ張り付いている、と言っても過言ではない。1971年のアメリカ合衆国社会という背景を引き離したところで《ミサ曲》受容が成り立つのか、という議論と同じように、1970年代頃のアメリカン・コミックやガジェット文化の背景をなくしては《フランケンシュタイン!!》という作品は笑いたくても笑えない。無論、スーパーマンやらフランケンシュタインやらバットマンやら、ハリウッド映画の大事なドル箱で何度もリメイクされてますから、2017年の大阪文化圏に生きている人々はそれなりに知ってはいるでしょうけど(なんせ大阪はUSJの本拠地ですしねぇ)、英語の歌詞でそれをやられて、どこまで反応出来るものか。かといって、こういう作品は先にプレトークやら曲解やらでネタバレをしちゃうと、「さっき言ってたことはどこで起こるのかな」という関心が先に立ってしまって、ホントに面白い部分から関心がズレてしまったりもする。うううん、難しいなぁ。

てなわけで、いずみホールから伊丹空港まで吹っ飛んで行く忙しない道中、隣の席に座ってたうちのお嫁ちゃんとあれやこれや話した不届き極まりない結論は…

「今日の演奏で《フランケンシュタイン!!》は判った。これはこれでご苦労様、楽しかったです、と感謝するわけだが、次にいずみホール&いずみシンフォニエッタがやるべきは、この趣旨の、若しくはこの趣旨を越えるベッタリ大阪版の作品を委嘱し、会場を爆笑の渦に巻き込むことではあるまいか。流石に西村先生というわけにはいかないだろうけど、例えば川島さんに頼んで、独唱・独奏を吉本新喜劇のトロンボーン吹く女優さんかなんかに頼んで、ベタベタ浪花なギャグ満載の30分くらいのマンガ系室内オケ曲を作り、呆れられるほど繰り返し演奏し、世間に広めて欲しいものであーる!」

以上、いずみホールの方に言ったら呆れられそうな話でありましたとさ。ちゃんちゃん。

さてと、今まで、ミューザ川崎の下の喫茶店に陣取ってたのですけど、そろそろ細川氏の近作を聴きに参ります。正反対の、ちょーシリアス系ゲンダイオンガクじゃのう。世界は広いわい、ばーさんや。

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Yakupen

Facebookに川島さんご自身からのコメントがあり、事実関係の訂正がありました。ありがたいことです。まんま貼り付けておきます。

※※※※※※※※

川島 素晴 ご推薦(?)ありがとうございます。
「セロ弾きのゴーシュ」大阪版なるものを以前やりましたが、台本も自分で担当したあれは大阪でやるのにかなり勇気がいりましたが、それなりにウケたと記憶しております。

あと、真面目な情報をお知らせしますと、紀尾井、しらかわ、いずみが3ホール合同委嘱なるき企画を行っていたとき、しらかわホールで、私、佐藤聰明、が委嘱された回の別プロに、フランケンシュタイン!!の今回の版はありましたので、遅くともそれが日本初演です。(実際はもっと前ではないかと。)
下記リンクは当該公演のどなたかのレポート。この手のコンサートの初心者の方のようで、かえって様子がよくわかります。
http://www.otsubo.info/contents/book/shira00.html
by Yakupen (2017-07-17 08:15) 

Yakupen

追記、というか、注釈です。今、葛飾の仕事場で昨年秋の香港のプログラムを引っ張り出したのですけど、細川さんがコメントしていた作曲家さんは小出稚子さんで、作品は2016年Asian Composers' Showase Goeth-Awardを授賞した《Hotei》という作品でありました。ご参考までに。

ちなみにYouTubeで眺めてみたら、関連映像の中にグルーバーが出て来てましたね。いかにも、でんな。


by Yakupen (2017-07-17 12:34) 

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