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表参道で5時間半 [弦楽四重奏]

実質夏休みは終わって、月末にシカゴに向かうまでの間に処理せねばならぬ作文がそれなりにあり、バタバタしていて当電子壁新聞もやっつけ仕事になってます。なんか、この夏、仕事の流れがちょっと妙だなぁ。

とはいうものの、これだけは記しておかないと後で忘れちゃうので記しておきましょうぞ。去る火曜日の午後から夜にかけて、東京は表参道のルイヴィトン上層階に設置されたギャラリーで行われたフラックスQによるモートン・フェルドマン弦楽四重奏第2番全曲演奏について。恐らくは、全曲演奏としては日本では2回目になるのかしら。セゾン美術館なんかでやってるかもしれないなぁ。

とにもかくにも、ホントに6時間近くも座ってられるかなぁ…と己の根性を疑いつつ、炎天下の午後2時半頃に地下鉄駅からルイヴィトンに向かいます(ギリギリまで銀座のシャネルだと思い込んでいて、危ないところだった…)。上層階のギャラリーに向かうエレベーターでチェロのフェリックス君と遭って、立ち話。曰く…今回はこれだけのために来てるよ、今日の終演は8時半くらいかなぁ、え、練習は勿論全部一気にやることはなくて(笑)10ページくらいづつやる、ソウルのキャンセルの話は覚えてないなぁ、等々…
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2015-12-07
もう2年も前のことだったんだっけ、このソウル東大門の会場まで行ったらFlux Qはキャンセルでした、ってギャグにもならん話は。いやはや…

じゃあともかくぐぁんばってください、ってわけで、フェリックス君は楽屋に向かい、やくぺん先生は狭い廊下にズラリと並んだ列の後ろに向かいます。この段階で20人くらいかしら。スタッフに「席はあるんですか?」と訊ねると、少しだけ、とのお応え。なるほど、これは基本的には立ち席イベントだな。

開場すると、そこはビル上層階の敷地全部をスポンと空いた空間にしたギャラリーで、真っ白な2つの壁面には蛍光灯のオブジェが貼り付けられてる。フェルドマンと同じくらいの時代に活動したDan Flavinというアーティストさんの作品らしいです。で、真ん中に譜面台と椅子。それに、足下にボトルの水。
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原則写真撮影は禁止な会場なので、わざとぼけぼけの写真で状況をご想像あれ。この写真の撮影している側がガラス壁で、眼下には表参道が眺められます。席は20くらいが弦楽四重奏の正面に置かれているけど、半分が招待席。もうあたくしめには席がありません。これはまいったな、と思ったら、ガラス壁の前にまあるい座布団が10ほども並べられてら。なるほど、あそこに座っても宜しい、ってことでんな。

ぶっちゃけ、この演奏会を「イベント」として考えると、演奏する側やら仕込む側にもいろいろと大変なことはあろうが、聴衆とすれば「6時間にすら及ぶ可能性がある長丁場をどうやって大過なく過ごすか」が最大の課題。まず、事前に水物は控えましょう。トイレに行って戻れるような状況なのかは判らないですから。理想はごろんと寝転んでしまうことだろうが、流石にそういうわけにはいかぬだろうから、6時間を前提に座り方を考えねばならぬ。ニューヨークからパリまでの大西洋線東向き横断、東京からだとシンガポールやらヤンゴンまで行けるくらいの時間を、基本的にはずーっと同じ姿勢を保っていなければならないのであーる。

その意味では、「気を紛らしたかったら首を傾けて、表参道の人の流れや、はたまた青山方面のビルや空を眺められる」という場所は理想的です。それに、丸い座布団みたいなものに座って足を自由に投げ出したり出来るのは、椅子に座っているより余程寝ている状況に近い。これならなんとか乗り切れるかもしれないぞ。

目の前にはCanonの一眼レフ8台くらいがズラリ、デッカい予備バッテリーも付けられ、6時間に迫る長丁場の映像収録をしようと取り囲んでます。かくて開演となる午後3時が至り、100名弱の聴衆&スタッフ関係者の前に、フラックスQの面々が登場。おおお、第1ヴァイオリンのトムが丸刈りになって、まるでタイのお坊さんみたいだぁ!ルックス的には、この曲にドンピシャかも。

あとは延々と、フェリックス君が仰るとおり午後8時26分までかかったフェルドマン第2番の演奏が続くだけ。なんせ、「提示部第2主題●●小節目のピアニッシモは…」とか言える類いの「作品」ではないので、語れるのは「5時間半を体験しての感想」でしかないのだけど…まあ、ひとことで言えば、この作品、ここまで長いと普通の意味での「時間芸術としての作品」ではなくなってくる。時間と空間が溶け合っちゃう、というか、この音が鳴っている空間そのものがひとつのアートであり、オブジェになる。今回のようなオープンで外の光や風景も含み込んだ会場の場合、意図したかどうかはともかく、時間の流れが光の変化としてイヤでも感じられ、そこに光のオブジェが展示されているものだから、光の変化は確実にひとつの方向性を有した微妙な動きとして感じられる。要は、フェルドマンが鳴っている空間全体がひとつのインスタレーション作品です、ってこと。

音楽そのものは…そうですねぇ、まあ、これはもう、一種、「ART」を鑑賞するのではなく、「Nature」を眺めるに近いなぁ、と思ったです。人間の意志が音の法則性に対してどうこうしているのではない。もう自然にある音を、座ってじーっと耳を澄ませているようなもの。湖の上の波紋をずーっと眺めている、風で波が立ち、そこに葉っぱが落ちてきて揺れ、あっちからカイツブリが走ってきて波紋を広げ…ってのをひたすらみているようなものです。

そう、それはそれで、あり。一応、「繋ぎの部分」と「意志的な動きの部分」がはっきり分けて作られているとか、2度の動きが演奏者の疲労度や時間経過によって微妙に異なってくるとか、いろんな仕掛けはあるんでしょうけど、まあいいよそんなこと、って気分になってくる。

4時間20分くらいから4時間40分くらいに最後の大きなクライマックス(といっても、別に凄く違ったことが起きるわけじゃないですけど)を迎え、一息付いて淡々と繰り返される時間が戻って来た辺りで、明治神宮の杜から華火が上がり、破裂音も聞こえてくる。まるでこれも、この空間に仕込まれたみたい。

フェルドマンの弦楽四重奏第2番、もしもチャンスがあったら、人生で一度は経験しても良い…かなぁ。ま、皆さんにお勧めします、とは言いません。今回も、最終的に最初から最後まで付き合った聴衆は、うううん、どうなんだろうなぁ、30人くらいいたかな、という感じ。殆どの方は数十分、長くても2時間くらいが殆どでした。実際、やくぺん先生の隣は3人入れ替わり、反対も途中で入れ替わりましたし。

なんであれ、フラックスQの皆様、お疲れ様でした。

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