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300席規模のホールが21世紀のスタンダードなのか [音楽業界]

数日前に書きかけてほーり投げていたもんをアップしますです。ネタは、ええと、去る火曜日の話です。

ひところ葛飾厄偏舎で練習をしていた、やくぺん先生的には文字通りの「レジデント・クァルテット」のクァルテット・セレシアが、お久しぶりにそれなりに大きな会場で演奏会を行うということで、これは聞かぬわけにはいくまいと、手土産にそろそろ季節もオシマイの苺大福など抱えて参上いたしましたです。場所は、「台東区生涯学習センターミレニアムホール」なる場所。

正直、台東区にあること以外はよーわからず、とにもかくにも最寄り駅という地下鉄日比谷線入谷駅の上野寄りの出口を出て、言問通りを真っ正面に聳える天樹方向に延々と歩く。思えばこの道、根津に庵を結んでいた頃にNJPが文化会館からすみだトリフォニーへと本拠地を移転し、それまでは藝大の間を抜けて上野公園口まで歩くだけで済んだのに、都バスで根津駅前から延々と寛永寺裏と谷中霊園の間を抜けてJR跨いで、浅草かすめ、天樹なんてもんが聳えるなんて思ってもいなかった鄙びた押上で曲がって錦糸町まで向かっていた途中。ってか、この辺りをふらつくなんて、あの頃以来じゃあないかしら。途中で不安になって、和菓子屋さんに入って苺大福買って、「ミレニアムホールって、こっちで良いんですよね?」と訊ねると、2つ先の信号を右に曲がってバーミヤンがあるからそこ、ってお応え。へ、バーミヤン、ですかぁ…

ったら、この区立総合文化施設、確かに目印としては「バーミヤン」の看板がいちばん判りやすい。というのも、河童橋食器問屋街の最北他となる通りに面した施設の2階にしっかりと格安中華屋さんが入っていて、一見するととてつもなく巨大で立派なバーミヤンにすら見えるわけであります。あ、外観の写真を撮らなかったなぁ。ま、こちらの建築事務所さんが落成直後に撮影したらしい最もカッコイイ外観の写真をご覧あれ。
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で、このステキな写真左側2階のガラス部分が「バーミヤン」になっていて、今は前にしっかり看板が出ております。んで、その奥が、ミレニアムホールなる300席の公共ホールになっている。施設全体の案内はこちら。
http://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/gakushu/syougaigakusyuucente/

昨今の公共文化施設、図書館から集会場からホールからなにからなにまで一緒にした巨大コミセンみたいなもんをドカンと作る、という傾向というか流行がある。去年、キチの街ヤマトに誕生した「大和シリウス」もそんなもんでありましたっけ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
で、この台東区の会場、2002年に出来ていて、完成当時の永田音響さんのレポートはこちら。これで「音楽ホール」としてどんなところか、よーくお判りでしょ。
http://www.nagata.co.jp/news/news0201.htm

21世紀に入ってオープンした300席の音楽用ホールといえば、2003年のハクジュホールを誰でもが思い出すでしょうし、少し遅れて2006年に名古屋にオープンし現在も日本のクラシック音楽興行シーンの颱風の目のひとつとして君臨している300席ちょっとの宗次ホールがある。めんどーな議論は省略するけど、ぶっちゃけ、21世紀に入って規模が縮小の傾向が隠せない「クラシック音楽専用ホール」の成功例は、どうやら公共民間を問わずに300席ということになってるのかしら。先頃オープンして話題の新浦安も、この規模だしさ。札幌のふきのとうホールはもうちょっと小さいけど、街の規模からすればまあ、同じくらいということでしょ。

おっと、話が先に行ってしまった。要は、恥ずかしながらはじめて去る火曜日に足を踏み入れた台東ミレニアムホール、とっても良い空間なんですわ。300席の公共ホールとは思えない、所謂シューボックスで天上の高い、タップリした空間。昨今大流行の「コンサートスペース」というか、「マイクロホール」というか、個人が自分の敷地に建てちゃう100席以下のホールでは不可能な、空間の響きそのものをきっちり味わえる。同じ規模ながら、天上の低さが如何ともし難いサントリー・ブルーローズの関係者さんなど、「いやぁ、知らなかったけど、スゴく良いホールがありますねぇ」と感心なさってましたし、今や日本のクァルテットの聖地となった「良すぎる公共ホール」サルビアホールでシリーズを行うプロデューサー氏も、「ここ、良いじゃない」と仰ってました。

確かに、この空間、クァルテット・セレシアとすれば普段活動のベースとなってるサロンやコンサートスペースとは違って、タップリした容量の「ホール」での弾き方が要求されるという難しさがあったことは否めません。だけど、やっぱり最低限でもこの規模の空間でやってくれないと、正直、団体としてのキャラは判りにくいところがある。その意味で、とても有り難い経験をさせていただきましたであります。ほれ、綺麗なステージでしょ。
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なんでこのホールが使われないのか、自分が存在を知らなかったのか、関係者の皆さんが口を揃えて不思議がっておりましたが、ひとつの理由は、使用料金がもの凄く安くて会場稼働率が極めて高いことにあろそうな。公共ホールであることの良し悪し、というわけにもいかないけど、やっぱりそれなりの事情はあるわけでんな。

もうひとつ、ホールとして敢えて苦言を申せば、ロビーにも裏にも、やたらと殺風景な張り紙が出ていること。この調子。
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とか、こんなとか
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どうも、管理する方々が絵に描いたようなお役所仕事をなさっているようで、サービス業というよりも「公共施設の管理」に徹していらっしゃるのがありあり。実際、使い勝手など、極めて融通が利かない部分があるとの声も。ま、安いんだから仕方ない、といえばそれまでなんだけどねぇ。

是非とも聴いてみたいという方は、都響の副首席クラスを並べた弦楽四重奏団の演奏会がありますので、そちらをどうぞ。
https://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3094&year=2017&month=5

「時代は小型化、コンパクト化、ミニチュア化」…なーんて広告代理店風の言い方をする気はないけどさぁ。

豊洲大橋が稼働している [ご当地五輪への道]

まさかもう使うことはあるまいと思っていた「ご当地五輪への道」カテゴリー、風雪に耐え数年ぶりに復活パート2でありますっ!この話のまる4ヶ月後の続き。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2016-12-30

連休前に締め切りがある原稿を午前中に全部入れ、とはいえなんせ予定している校正がまだ来ない宙ぶらりん状態。気分は完全に「終わったおわったぁ」なんで、久しぶりにチャリンチャリンと大川端北の隅っこから遙か南の外れ、湾岸のど真ん中(?)、帝都トウキョウでもっと暇で閑散とした観光地であり、風が弱く天気の良い午後なら最高のノマド場として知る人ぞ知る(あまり知られても困るんだけど)晴海客船ターミナルまで詣でるのであった。

んで、清澄通り沿い月島駅上のHotto Mottoで弁当買って、運河渡ってちゃりんちゃりんと晴海島に入り、トリトン横を延々と埠頭まで下って行く。この辺り、今やすっかり湾岸の高層マンション街になりつつあり、まともな文化振興財団のない中央区という立地を逆に利用した民間NPOトリトンさんの地域文化活動展開も、今や不可欠なものとなりつつある。あれだけ文句を言っていた東京都が、オリンピックに向けてトリトン・アーツ・ネットワークに「地元で頑張ってて偉いで賞」みたいなもんを下さるなんて、ホントに時代はかわるものよなぁ、なーんて思いながら真っ直ぐ行くと、おおお、暫く来ぬうちに、国際展示場が撤去され更地になって四半世紀、銀座東京駅から最も近い僻地だった晴海埠頭脇にニョキニョキとクレーンが建ち上がっているではないかぁ。
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それどころか、まだ未開通の筈の豊洲大橋を渡って盛んにトラックが出入りしており
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ホテル・マリナーズコート側の歩道にはお歩道が設置されておらず、埠頭にアクセス出来なくなっている。おいおい、なんてこった。

しょーがないから反対のピカピカのガラス建築湾岸署側に渡り、豊海側のマッカーサー橋へと向かうこっちはまだ使われていない橋の前を抜けて埠頭へと向かう。四半世紀も放置された挙げ句、両側がすっかり工事現場になってしまった中を右へ左へ。防災訓練会場だった辺りはこんなん。
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ちなみに、この地域「オリンピック」なるもんに向けての開発のデベロッパーさんはこちら。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2016/07/20q7s300.htm
日本国の大手ゼネコンさん総ざらえでんがなぁ。これがオリンピック!

埠頭には海保も練習船も一切おらず、珍しくも、なのか、毎度お馴染みなのか、スッカラカン。ターミナルも、こちらは毎度お馴染みのスッカラカン。嗚呼、男がひとり、トランペットを対岸の寂しく佇む豊洲に向けて吹き鳴らすばかりなりぃ。
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都心部方向を眺めれば、すっかりしっかり「高層ビル建築現場」でんがな。
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180度振り向けば、そろそろみんな忘れてる豊洲なんだかしらない場。
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間を結ぶ豊洲大橋は、盛んにトラックやらミキサー車やらが往来する。
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これが21世紀17年目のトーキョー・チャチャチャ、オリンピック・チャチャチャ!

これといったオチはありません。無論、特に感想もありませんっ。キッパリ。

キアーラのCD出ます [演奏家]

もの凄く個人的な話題です。お知らせ。

ええ、カルミナQのマティアスとウェンディのお嬢さんキアーラ・エンデルレは、東京湾岸の方ならちょっとだけ知ってるかもしれないチェリストでありまする。って、トリトンのアウトリーチで中央区の小学校でカルミナQと一緒に弾いたりしてるのであります。ことによると、日本でのキアーラの演奏って、これだけかな。

なんだか「好々爺が友人の娘の成長を書いてるブログ」みたいな一連のキアーラ・シリーズはこちら。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2008-12-16
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2009-06-06
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-06-27
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2013-03-14
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-06-19

んでもって、そのキアーラがとうとう、というか、やっと、というか、CDを出します。こちら。
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https://www.musiques-suisses.ch/en/Ernest-Bloch/Kammermusikwerke-fuer-Violoncello/id/765
ブロッホの作品集で、スイスって、こういう自国の作曲家の録音や演奏に助成金が出るんですよねぇ。現代音楽は楽譜仕様やらJASRACやらにお金がかかるからたいへんになる日本とは真逆な状況でんなぁ。

ご覧のようにこのディスク、パパのマティアスとの共演も入っております。アンコールみたいにちょこっとだけですけど、ピアノ三重奏とかガッツリした曲はなかったのかなぁ。

蛇足ながら…キアーラの先生であるシュテファンの昨年夏の急病以来、カルミナQは実質的に必要最小限の活動を別のチェリストで行う以外は殆ど活動をしていないとのこと。キアーラも代打で弾いた、という話も伝わってきます。シュテファンの恢復を心から祈りつつ、キアーラの音楽を聴かせていただきましょう。

ジョン・アダムス弦楽四重奏第2番についてなど [弦楽四重奏]

本日、今や関東地区に於ける弦楽四重奏の聖地となった横浜の東端、鶴見のサルビアホールにて、満員の聴衆を集め、ジョン・アダムスの弦楽四重奏曲第2番の日本初演が行われました。
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これが書かれたときのご報告。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-12-24
演奏したのは、言うまでも無く、アダムスとは関係の深いアタッカQでありまする。

数年前に発表されて、「ちょっと長いけど、それなりに良い曲じゃないか」と評価されている第1番に続くアダムス2曲目(といっても、弦楽四重奏のための舞曲集がありますが)の弦楽四重奏曲、その間に世界的なヒット作品となっていて、この先、常設弦楽四重奏団をオケの定期に招く際には定番になりそうな「弦楽四重奏と管弦楽のための《アブソリュート・ジェスト》」を挟んでの創作ということで
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-08-20
中身としてはどんなことになってるやら、楽しみであったわけでありまするが、ま、結果から言えば、直接は関係はない。とはいえ、内容的にはやっぱりがっつりとベートーヴェン繋がりでありました。アタッカQセカンドの徳永さんに拠れば「今、アダムス氏はベートーヴェン中毒なんです」とのこと。

2つの楽章から成る20分程の作品で、両楽章共にベートーヴェンのピアノ・ソナタ作品110のふたつのモチーフから始まり、変容していく、という音楽。第2楽章の終わりには《ディアベリ変奏曲》からの引用も聴こえるし、アタッカQの皆さんに拠れば、第九のモチーフじゃないかなぁ、なんて思える部分もある。
とはいえ、古典派、ロマン派的な意味での「変奏曲」ではありませんし、使われる引用箇所も誰でもそれと判るテーマそのものなどではありません。ですから、いくら待っても「♪てらら・とんとんとん・てららららぁ」なんてメロディは出て来ませんから、期待しないよーに。それっぽい音型が、ミニマムと言われても言い返しようのない繰り返しの中で、弦楽四重奏の響きにぐにゃぐにゃに歪んでいく、って音楽です。

なんせ楽譜が手元にあるわけでもない状態で練習を眺め、本番を聴いただけなので、果たして作品から来る印象なのか、アタッカの演奏がそういうものなのかなんとも判然としないところはあるのだけど、とても興味深かったのは「fやpで表記される音量の変化というより、強度の変化としか言いようが無い響きの変容」が極めて重要な要素になっていたこと。しばしば古典派のマスタークラスなどで、偉い先生が「ダイナミックスの質の違い」ということを盛んに仰ることがありますけど、ま、もの凄くモダンな意味だけど、同じような「音色感と一体となったダイナミックス」の多彩な変化がかなり本質的な部分になっているなあ、と思ったでありまする。

なお、昨年の初演以降、アタッカと並ぶアダムス作品の特別な解釈者と作曲者が認定しているセント・ローレンスQが演奏圏を独占していたそうですが、それが切れ、早速アタッカQも演奏を始め、今回は2回目だかの演奏だそうな。無論、アダムスからのレッスンというか、共同作業は行ったそうで、練習の時も、「この部分はもっともっと、って言ってたよねぇ」などという声がステージから漏れておりました。ちなみに、まだ楽譜は出版されておらず、セント・ローレンスQの初演からアタッカQの演奏の間でも随分と弄られた部分があrそうで、本日の日本初演はことによると将来的に出て来るであろう出版譜とはちょっと違う、改定途中の版だった可能性も高いです。その意味では、本日聴けた方は、貴重な経験をなさったかも。

この先、様々な団体が演奏するかどうか、ともかくリズムの把握がきちんとしていないとグズグズになるし、なんせ一度落ちると直すところが全くなさそうなむずかしー曲みたいなので、果たしてポピュラーになるやら。過激派アタッカじゃない演奏だとどんな風に聴こえるか、ちょっと想像がつかないなぁ。

[追記]

立ち話でのアダムスに関するネタをふたつ。

◆今、アダムス関連で最も話題の、秋にSFオペラで初演が予定されている新作《大西部の娘》ですが、既に無事に作曲は終わっているそうです。

◆アダムス現在鋭意作曲中なのは、なんと、いよいよピアノ協奏曲だそうな。「誰が初演するんだろーねぇ」というのが専らの話題でありました。

ロシアは煙のなかに… [音楽業界]

ソウル・アーツセンターのオペラハウスで、韓国国立オペラの新演出《ボリス・ゴドゥノフ》を見物して参りました。
http://www.nationalopera.org/ENG/Pages/Perf/Detail/Detail.aspx?idPerf=500390&genreid=88&year=2016
どっかでやった舞台をまるごと買って来て「新演出」で御座い、と仰る初台のなんちゃって新演出とは違って、演出家がちゃんと最初から全部作る、ホントに、ってか、まともな「新演出」でありまする。一説に拠れば、東アジア地域での引っ越し公演ではないこの作品の「新演出」は、なんとまあ岡村&小澤&二期会の日本語での上演以来とか。へええええ、まあ、東京ではゲルギエフ様が自分の手兵連れていくつものヴァージョンでやってるので、なんかいつもやってるみたいな気がしていたけどなぁ。

考えてみれば、民衆のパワーで就任の経緯がアヤシいと噂される皇帝を追いやってしまう、という次の大統領選挙真っ最中のソウルで上演するには余りにもぴったりな作品なんだけど、今回の上演はクリュイタンスやカラヤンでお馴染みのリムスキー=コルサコフ版がベースだったようで、改定初演版の革命シーンで終わってこの先の政治混乱を予見させる、というもんではありませんでした。無論、こんな政治状況になる遙か昔から決まってた上演ですから、たまたま、ってことですけど、こういうたまたまがとっても意味ありげに見えるんですよねぇ。

ま、それはそれ。で、今回、日本政府や一部マスメディア、ネット上のアベちゃん勝手連サポーターさんなどがまるで明日にも戦争だ、という空気醸し出し毎度ながらの失政隠し、滅茶苦茶法案審議目眩ましをする真っ最中に関空からソウルまで1時間ちょっと飛んで来た最大の理由は、演出でありまする。無論、アジア最強の韓国オペラ合唱パワー、世界を席巻する男声歌手人の層の厚さ、ゲルギエフやふたりのペトレンコに続くロシアが生んだ新しいスターオペラ指揮者コチャノフスキー、などなど、いろいろな理由はあるわけだが、やっぱり演出のステファノ・ポーダをきっちり眺める最高のチャンスだということ。カーテンコールで、指揮者とボリスの間にいる長髪のにーちゃんです。
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このイタリア人の演出家さん、所謂、ドイツの小さな劇場で「オペルンヴェルト」のすれっからしというか、ちょっと斜に構えすぎたというか、余りにもマニアックというか、まあとてもじゃないが日本のオペラ批評では考えられないような厚いバックグラウンドと豊富な知識と溢れる教養を前提とした方々がなんのかんの喜んだり貶したりするところで育ってきてる演出家とはちょっと違う。なにせ、今回のプロダクションでも、「演出、装置、衣装、照明、振り付け」となってる。つまり、舞台上で起きることをほぼ全てひとりで仕切っていて、指揮したり歌ったり踊ったりしてないだけ、って方。今時、こういう総合的な仕事を出来る若手演出家って、どれくらいいるのかしら。基本的に「舞台の美しさ」から始まる美術から出て来たラテン系というと、ポネルみたいな在り方のモダン版と思ってもそう間違いないかも。ともかく、頭でっかちで自意識過剰(だけど、議論する側からすればもう猛烈に議論しやすくネタ満載で楽しい)、というのではありません。

今回の《ボリス》、なによりも印象的なのは、黒を基調としたスタイリッシュな衣装(よく眺めると、それぞれの政治的な立ち位置を反映した舞台装置と関連した衣装になってます)で重苦しく暗い装置のロシアと、白を基調とし奇妙なほど明るいポーランドとの対比。とりわけ、ロシアが舞台となる間はずーっと漂っている煙が、装置の一部となっている。このオペラ劇場の上下左右に動く巨大な舞台をしっかり利用し、いくつもの巨大な箱が上がったり降りたり、上手下手に水平移動したりする中でステージが展開するのだけど、ロシアのシーンは常にうっすらと、あるいははっきりと煙ってます。その煙にいろいろな照明が当てられることで、登場人物のモノローグやら対話の動きの中で舞台全体が赤くなったり青くなったり、或いは白くなったりする。

そんな意図が極めてはっきりしているのは、修道院の青年が偽ドミトリーになる決意をする場面。歴史書記家さんが秘密を語るのを聞く間、若い修道士は上から煙を吹き出しながら降りてきたデッカい球体を引っ張って前後に動かし、部屋を煙で満ちあふれさせていく。ロシアの混迷がどんどん深まっていくのを象徴するような動き。なるほどねぇ、と思わされるだけではなく、視覚的にもとっても綺麗なんですわ。ともかく、煙に光を当てるのがとっても巧みな舞台です。

たた、ひとつ問題があって、この演出、煙ったいんです。比喩ではなく、文字通り、煙ったい。舞台の奥の方や袖、それどころか客席でも、咳をする人が絶えずいる、ってことになる。なんせ、幕間に明るくなった客席を眺めると、なんとなく煙ってるんだもんさ。ほれ。
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ま、そんなこんな、ポロネーズのシーンを含めた舞踏の振り付け(太極拳みたいなモダン舞踏の動き)ともかも含め、演出家の意図が隅々まできっちり透徹した舞台で、「演出家がしっかり仕事をするとはどういうことか」を眺めたい方は必見です。どこかとの共同制作でもないようだし、映像も収録していた感じはないので、これだけのプロダクションがあと週末2回でお釈迦になってしまうなんて、ホントに勿体ない。演出家がその場にいないと維持再現は難しそうな舞台だし。

さて、明日明後日、午後3時からソウル・アーツセンターで上演がありますので、お暇な方もそうで無い方も、是非ともソウルまでいらっしゃいな。失礼ながら、某ドイツの著名劇場日本公演に500ユーロ払うより、遙かに意味あります。これホント。

音楽祭復活への道(1):かつてのボランティアさんへの連絡事項 [ゆふいん音楽祭]

シリーズになるのか、「音楽祭復活への道」を始めましょうぞ。第1回は、2009年まで7月の最後の週末になるとゆふいん盆地にやってきてなんのかんの騒いだりお手伝いをして下さっていた日本全国津々浦々の元ボランティア・スタッフさんたちへの重要な連絡事項でありまする。ですから、ホントは「読者限定」なんだけど、ま、私設電子壁新聞だから勝手にいろんな方々が立ち読みするのはしょーがないわなぁ。そういう方々は、呆れて眺めて通り過ぎるよーに。

ええ、復活音楽祭、主催は「湯布院観光協会」と「音楽祭実行委員会」であります。で、前者の責任者はS.T氏で、後者はこところやのF.K氏であります。前実行委員長の加藤さんではありませんので、「どーなってるんですかぁ」などと加藤さんのところに電話してもダメですっ!ぶっちゃけ、状況を最も簡単に把握する方法は、ことことやに行ってF氏をつかまえることであります。なお、隣の美術館は閉館になり、今はこんなことになってます。おおお…
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F氏、普段はジャム作ったり仕込みで出歩いたりでお忙しい方なので、タダでダラダラ長居せず、ちゃんと珈琲飲んで待ってるよーに。←なんだか完全に町会レベルの連絡だなぁ

で、ホントに重要な連絡は以下。今回、庄屋が使えません。というか、昨年の震災で庄屋が倒壊しました。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
その後、復旧工事は完了し、住居機能は回復しているそうです。が、その際に、かつての旅籠というか、集会所というか、湯治場長逗留宿としての機能を廃止したそうであります。まあ、考えてみれば天下の高級観光地ゆふいんにあんな場所が残っていたことそのものが不思議だったわけで、それはもう時代の流れとして仕方の無いことでありましょう。

てなわけで、ゆふいんにともかく行ってしまえば寝泊まりするところはある、という状況がなくなってしまったのでありますよ。

今回の復活音楽祭、まずは新体制でやってみるべーか、という実験でもあり、規模も恐らくは「音楽祭」と名打った夏のイベントとしては最も小さい。ですから、宿ひとつ提供して貰ってそこに演奏家がみんないて深夜まで酒席、という状況も難しそうです。「それじゃゆふいんじゃないじゃないかぁあああ」という声が挙がりそうなのは百も承知でありますが、やれることからやってみようということでありますので、お許しあれ。

結論。現時点では、今年は、実質、ボランティアの皆さんに集まっていただいていろいろやる、ということは出来そうもありませんです。無論、ゆふいんですから、直前になって「みんなきてくれぇ」となる可能性はあるとはいえ、今年はそういう感じにはならないとお考え下さいませ。だから、皆様、今年の音楽祭、関わりたい方はもう今から慌てて宿なんぞを適当に自分で押さえて下さい。寝るところはない、と思って下さいです。毎度ながら、動きの判る方が当日の会場に来てしまえば、看板立てだのチラシ撒きだの、やることはあるでしょう。それはそれでよろしくぅ。

今まではボランティア裏方で走りまわっていた皆様とすれば、ゆったりと夏の湯布院を過ごす良いチャンスだと思いましょうぞ。新実行委員長と話して言うわけではないんだけど、個人的に今のゆふいんで最も必要なボランティア人材は、韓国語と中国語の対応が出来る人だと思うんだけどなぁ。

アタッカQのアウトリーチ始まりました [弦楽四重奏]

昨日、大雨の中、アタッカQの関西アウトリーチ、始まりました。公式なレポートは日本室内楽振興財団機関誌「奏」の、来月のコンクール後に出て来る「コンクール纏め号」に掲載する予定で、随分と先のことになるし、ある意味での公式な報告書みたいなものになるので、ともかく今日明日にお伝え出来るようなことは、この無責任電子壁新聞に記してしまいます。後から「聴きたかったのにぃ」と恨まれるのもイヤだもんっ。

昨日は、大阪府内の某府立高校、音楽部も持つというちょっと特殊な学校に参上しました。
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なんせ、学内に250席くらいはありそうな立派なホールが備えられ、学内オケやらブラスバンドの練習をやるだけでなく、ちょっとした演奏会は出来るようになっている。流石にホールの写真はダメでしょうから、警備室横のポスターでお許しを。
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放課後の「校特別公開講座」ということで、少ないながらも親御さんだか生徒さんのおじーちゃんだか、明らかに一般の聴衆の方もいらしてました。どうやって入ったのか、良く判らないです。スイマセン。

なんせアタッカQ、今やニューヨークばかりかテキサスでも盛んにアウトリーチも行っているだけのことはあって、きっちり1時間という時間に古典からロマン派、20世紀初期、そしてアンコールにはかの某フランチャイズの手前大声では言えないアタッカの影のレパートリー、みんな大喜びのあの曲まで披露。あ、まだYouTubeにあるじゃないかぁ。こちら。
https://www.youtube.com/watch?v=9Rp4rLXbrDw
この編曲、やっぱり「♪てーこーくわぁ、とーてもーつーよぃい」のところ、第2ヴァイオリンとチェロが旋律を担当し、ファーストとヴィオラが兵隊共の歩みを強烈に刻む、ってとこがいちばんのミソかな。なんにせよ、これがライブで聴けるのは、おそらく今日だけなんじゃないかな(勿論、やらないかもしれませんし…)。こういうボランティア・イベントじゃない普通の演奏会では、いろんな問題があって、やれませんからね。

21世紀の弦楽四重奏超激戦区ニューヨークでバリバリでやってる若手連中がどういうスタンダードなのか、どういう関心なのか、そしてどういうアピールをするのか、とっても良く判るショーケースでありました。

本日の北野病院のアウトリーチ、相手が音楽の学生さんじゃなくて一般病棟の患者さんや関係者さんということで少しは手加減するかというと、どうもまるでそんなことはないみたい。音楽ファンの皆さん、特に「アメリカのクァルテットはなぁ…」と思ってらっしゃる方にこそ、是非とも聴いていただき、その手数の多さに呆れていただきたいでありますなぁ。なんせ、ラッヘンマンやるわけじゃないのに、いきなり弓2本もって登場しますから。これが今の、アメリカン・スタンダード。

本日午後3時から、大阪は北の北野病院です。どなたでもお聴きになれますので、どうぞいらっしゃいな。
http://www.kitano-hp.or.jp/access

[追記]

開演前の北野病院5階ホールにいます。なんと、あの曲、やるってしっかり書いてありますぅうう!
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♪てーこーくわぁ、とーてもぉ、つぅおいぃいいい!

アタッカQ大阪アウトリーチ [弦楽四重奏]

宣伝ですぅ。2011年、311&312大混乱後の日本列島で最初に行われた国際的音楽イベントとなった第7回大阪国際室内楽コンクール&フェスタの第1部門に参加、熱戦を勝ち抜きグランプリを獲得したアタッカQが、懐かしい大阪の地で来る5月に開催される第9回大会を盛りあげるために本日来阪いたします。

明日からは基本的にアウトリーチのみで、アウトリーチというイベントはその性格上世間に一般公表するものではない。ですから、まさかここに詳しく日程を記すわけにもいきません。ただ、木曜日までの大阪滞在中に一度、実質的に昼間に公開での演奏会と言えるステージも用意されております。多数の聴衆が押し掛けられても困る場所なので、もしも状況がオープンにしても構わないと判断された場合には、月曜夜には当電子壁新聞でも場所と時間をお伝えします。(後述:下の[追記]参照)

ま、それよりも、是非とも聴きたいという方は、名古屋東京での演奏会の後にまた大阪に戻り、25日火曜日に大阪倶楽部での演奏会がありますので、そちらにどうぞ。
http://www.kojimacm.com/digest/170425/170425.html
会場も興味深いところですし。それぞれのメンバーがそれなりに生活も出来てきて、若手から中堅に向けての入口に立って、この秋からは大学レジデンシィも始まるアタッカQ。どんな音になってるか、大阪の皆さん、ご期待下さいませ。

なお、ジョン・アダムスの第2弦楽四重奏曲日本初演となる鶴見での演奏会は完売とのことです。東京のファンの皆様、スイマセン。この曲も録音はあるけど、今回は演奏はなしなのがちょっと残念。映像でお楽しみあれ。

以上、なんかちょっと情報が半端だけど、アタッカQ大阪訪問のご案内でありました。

[追記]

どうやらアウトリーチ先がホームページでイベントを一般にオープンにしているようなので、記します。以下のPDFファイル参照。火曜日、大阪北野病院です。場所柄、あくまでも「患者さんが優先」という状況を配慮の上で、ご来場お願いします。一般公開はここだけですけど、敢えて「皆さん、いらっしゃいませ」とは言いません。悪しからず。とはいえ、関西でアウトリーチの勉強などをなさってる方は、アタッカのアウトリーチ・プログラムは勉強になりますからねぇ。
149079132820170418_concert.pdf

香港フィル演奏の新作について [現代音楽]

どういう訳か知りませんが、久しぶりの日本公演を大阪はザ・シンフォニーホールでのみ開催する香港フィル、いよいよ公演は来週火曜日と迫って参りましたです。
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http://www.symphonyhall.jp/?post_type=schedule&p=7338

NYPの次のシェフに決まり、今や飛ぶ鳥落とす勢いのヤープがポディウムに立つとなれば、先物買いのマニアさんなら「なんで東京でやらんのじゃ」と怒り出す勢いでありましょうねぇ。

さてもこの公演、殆どの方には関心がないだろーけど、もうひとつ、大きなウリがありまする。それ即ち、最初に演奏される若き香港ベースでどうやら半分はイギリスに居るらしい作曲家、ファン・ラムの管弦楽曲であります。

この曲、ヤープと香港フィルのこの数年の世界ツアーでは盛んに演奏されているようで、この類いの「海外ツアー向けに書かれた香港を紹介する楽しい序曲」かなんかだと思っちゃいそうなんだけど、ところがどっこい、かなりガリガリの「現代曲」でありまする。諸般の事情でこの公演の広報関係のお手伝いをすることになり、録音を聴いたりすることもあったわけですが、へえ、というくらい面白い曲です。強いて言えば、「五」という数に拘った音楽で、五音音階の今風な展開を大真面目で考えている。5つの強奏の間に繊細な弱音部分が挟まれる、って感じかな、聴いた印象は。

所謂「何をやってるかまるで判らないゲンダイオンガク」ではありませんし、かといって中国っぽいメロディいーひゃらぴー、ってお手軽なもんでもありません。なかなか良いバランスだな、って曲でありまする。

お暇な方は、是非とも来週火曜日にシンフォニーホールにいらっしゃいな。以下、これはオープンになっているソースなんで、作曲家自身の解説と、音が聴けるサイトを貼り付けておきます。お聴きあれ。
https://soundcloud.com/lamfung/fung-lam-quintessence

The Chinese title of the work has two layers of meaning. It literally means ‘contain’, which refers to something of positive potential. The deeper meaning relates to the concept of the Five Aggregates in Buddhism, namely form, sensation, perception, mental formations and consciousness, which are the core aspects shared by sentient beings of all shapes and forms.

The English title corresponds to a similar concept in ancient Greek philosophy. Quintessence is the fifth and the highest essence after the four elements of earth, air, fire and water, and thought to be the magical substance of gods and latent in all living things.

This concept, with its lively and positive character, served perfectly as the starting point of this work, written in celebration of HK Phil’s 40th anniversary. The composition consists of a series of short and contrasting sections which share the same handful of distinctive core musical elements, the most significant of which being the zigzag shaped melodic line, signifying the journey towards one’s goals.

[速報]ゆふいん音楽祭2017夏開催決定! [ゆふいん音楽祭]

速報です。「ゆふいん音楽祭2017夏」の開催が決定しました。以下、現時点で発表出来る事実関係のみを記します。

会場:大分県由布市内
参加者:玉井菜採(ヴァイオリン)、佐々木亮(ヴィオラ)、河野文昭(チェロ)、津田裕也(ピアノ)
主催:湯布院観光協会、ゆふいん音楽祭実行委員会

日程
7月29日(土):昼のコンサート
7月29日(土):夜のコンサート(ピアノ四重奏メインを予定)
7月30日(日):ガラコンサート風な長めの午後のコンサート

以上です。会場、チケット発売予定などの詳細は、決定次第随時当電子壁新聞、Facebookなどでアップします。公式情報は、湯布院観光協会のホームページにアップされていく予定ですので、ご覧あれ。現時点ではまだ情報はありません。
http://www.yufuin.gr.jp/