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春恒例韓国地方都市オーケストラ祭りの全容! [音楽業界]

これ、去る4月23日朝に金浦空港のラウンジで書き始め、途中まで記して、都市名の日本語表記変換なんぞが余りにもめんどーなんで放り出っぱなしにしてたお話。連休の谷間、作文作業が半端な凪状態になってしまったので、せっせと最後までデータ記入します。

これまでも当電子壁新聞では「すみだトリフォニーの地方都市オーケストラ・フェスティバルはいつの間にか無くなってしまったが、お隣ソウルではアーツセンター主催で遙かに規模のデカイ、恐らくはオーケストラ音楽祭としては世界最大規模の韓国地方都市オーケストラ・フェスティバルをやってます」という情報はほぼ毎年垂れ流していたけど、案外と4月にソウルにいくことがなく、やくぺん先生がアーツセンターのでっかいコンサートホール客席に座って体験したことはありませんでした。

今年は、大阪から東京湾岸に戻ってくる途中にチョロッとソウルに立ち寄り、今話題のインな演出家さんの舞台を眺めたついでに、せっかくこの時期ならばということで宿願の「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」をちょっとだけでも見物して参ったでありまする。これが韓国名物、ロビーにでっかく出されてその前で記念撮影をするための大看板。
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関空から金浦に着いた日は目的の《ボリス》で、その週末23日日曜日が4月1日からほぼ連日行われた公演の最終日なので、そのひとつまえの公演を切符があれば覗いてやるか、という程度に考えていた。そしたら、《ボリス》があんまりにも面白いもので、午後3時から6時過ぎまでかかる別キャストの土曜日公演をオペラハウスで見物し、隣のコンサートホールに走り込んで、午後5時から始まる韓国ローカルオケの演奏会の後半だけを眺めてやろうではないか、ということになった。

なんせ、土曜日の昼前にアーツセンター正面右手のカウンターでチケット買おうとしたら、幸か不幸かオケフェス公演は最安値1000₩のチケットの3階最後列隅っこと、滑り込むには最適な席も確保出来たもんで。これがチケット買った直後、土曜日午後のアーツセンター中庭。日本では「朝鮮半島一触即発」って煽り情報がメディアに流れるけど、ソウルはいつものノンビリした週末。なんせ、日本と同じ頃に連休もあるんだしさ。右手がオペラハウスで、オーケストラ祭の垂れ幕が下がる広場を抜けて左手がコンサートホール。ここを夕方に、いい歳こいてダッシュで走ったわけであります…ふうう……
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結果として、《ボリス》からショスタコ5番という、ファンの方ならば人生で一度はやってみたい極めて意義深いハシゴとなったわけでありまして、これはこれでひじょーに面白かったです。なんせ、あの世に名高い偽書「ショスタコーヴィチの証言」で、ショスタコさんが「ショスタコの5番はムラヴィンスキーはなーんにも判っていなかった、あの終楽章は《ボリス》の冒頭2場での強制的な皇帝讃歌と同じなのだ」という、それまでの《革命》なる副題を反故にしてしまうような発言をし、それが事実であろーがなかろーが、その後のショスタコ5番解釈をすっかり変えてしまったのは、皆様よーくご存知の通り。確かにこうしてライブで続けて聴くというありそうでない体験をすると、なるほどねぇ、と思わざるを得ません。「ショスタコが《ボリス》校訂をやってたのって、第5交響曲の次の仕事だかくらいだっけ、それとも一緒くらいだっけ…」なーんてずーっと客席で思っていたりしてさ。

やくぺん先生が後半だけ聴けたのは、公州市忠南フィルハーモニックなる団体。今年のラインナップの中でも、とりわけローカルっぽいオケでんな。大田の西、ソウルから150キロくらい、ハイウェイで2時間弱くらいかな。大ソウル圏のギリギリというか、出て直ぐというか、東京圏なら大田が宇都宮とかの感じだろうから、「栃木県栃木フィルハーモニック」ってくらいの感じの団体でしょうかねぇ。まあ、ソウルから釜山までハイウェイぶっとばして4時間という規模のお国なんだけどさ。

だから、当然、ソウルで土曜日5時開演ということになれば、オケは地元の練習場に朝に集まって、バスでやってきて、終演後はそのまま戻るんでしょう。昼前、ロビーでウロウロしていたら、オケマンさんが到着し、なんとロビーからオーディトリアムに入っていきましたです。
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ケルンのフィルハーモニーでブーレーズ指揮コンセルトヘボウ管を聴いたときに、終演後、団員の知り合いに挨拶しよう、場合によっては飯でも、と楽屋で待ってたら、なんとマーラーの7番が終わるやみんな直ぐにゾロゾロ出て来てそのままバスでアムステルダムまで帰ってしまった。このフェスティバル、チェジュ島のオケ以外は、みんなあんな感じのやり方が出来る。宿泊費がかからないのはデカイですね、主催者としては。

で、前半のブラームスのドッペルなんかは捨てた公州のオケですけど、とにもかくにも哀れボリスがお亡くなりになってそれっとばかりに駆け込んだら、直ぐに後半のショスタコが始まった。オケマンがステージに戻ってくるともう大拍手が巻き起こり、ブラボーまで飛んでます。なんだこりゃ、って不思議なノリ。

どうやら、郷土愛熱烈なお国らしく、満席とは言えぬも広い客席を埋めたそれなりのお客さんのかなりが、ソウルの音楽好きというよりも公州市の出身者か、ことによると土曜の朝からソウルまでやって来ておらがオーケストラを応援しようという地元の方みたい。無論、アーツセンター主催なんで、学生券は半額とかいろいろ優遇があるので、やくぺん先生が座った日本円で1000円のNHKホール3階いちばん後ろ辺りみたいな貧乏人席には、明らかにお金のない学生さんの音楽ファンらしき連中もそれなりにいて、一緒になって指揮しそうになってる微笑ましい姿とかも。

まあ、確かに、3週間でオケ20団体聴けて毎日500円でも総計1万円也なら、オケ好き貧乏学生なら毎日通っちゃうでしょ。すごおおおく勉強になるだろーなー。なんで日本のオケやってる評論家さんがこの時期にソウルに泊まり込まないか、毎年のことながら、不思議この上ないです。もう爺だし、オケはメインのご商売じゃないからやらんものの、俺が若かったら毎年来るぞ、と思うけどねぇ。

秋にオケ連さんが実質やってる日本国文化庁主催の唯一のオーケストラ・コンサート「アジア・オーケストラ・ウィーク」でもまだ登場していない公州市のオケ、コンマスとチェロのひとり以外は弦楽器みんな若い女性という一昔の日本みたいというか
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なんせ男は若い頃に兵役で徴用されちゃうお国柄、今の韓国の典型的な姿をがっつり舞台上で繰り広げるその実力は…うううん、地方オケです。日本の一昔前の「地方オケ」でんな。今世紀になって圧倒的に地力を付けてきて、今や「地方オケ」という言葉の意味は20世紀末までとはまるで違うものになってしまったニッポン国とはちょっと違う。この「地方オケ」感が、ある意味できっちりした「首都と地方のヒェーラルキー」になってるのならば、それはそれであり。その辺り、20団体全部聴けば一発で判るんだろうけどねぇ。
ま、技術的にはともかく会場は大盛り上がりで、なんだかしらないピアノがパラパラと弾く韓流ドラマのテーマソングみたいなアンコール曲は、ショスタコ以上の盛り上がりでありましたとさ。

せっかくだから、以下、「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」参加団体のデータを記しておきましょう。恐らくは日本語で紹介されるのははじめてじゃないかな。残念ながらこれだけSNS上にオケ好きがいても、流石にこのフェスティバル全部フォローしている物好きはいらっしゃらないようで、纏まって紹介してるの記事は過去に遡っても見当たらない。不思議だなぁ、参加数ではザルツブルク音楽祭も超える世界最大のオーケストラ音楽祭なのにねぇ。

※※※※

会場は全てソウル・アーツセンター・コンサートホール。正式名称は「2017ソウル・アーツセンター・クラシック・フェスティバル」だそーな。ちなみに指揮者やソリストさんの読み方は判らないので、アルファベット表記をまんま記します。日本でも知られた名前がチラホラありますな。オケの名称は、基本直訳で、日本での慣例表記がある団体はそれに従います。コリア・シンフォニーって、「韓国響」って書かないよねぇ…どーなんだろーか。ソウル三大オケのひとつでこの調子だからなぁ。それにしても一昔前はチャイコフスキーだらけだったけど、随分と趣味も変わってきましたねぇ。スラブもの大好きなのは相変わらずだけど。生誕百年のイサン・ユンはソウル・フィルだけというのも、この作曲家の微妙な立ち位置の反映なのかしら。それにしてもマラ七やる演奏会、滅茶苦茶長くないかぃ。

◆4月1日:コリア・シンフォニー(ソウル) Hun-Joung Lim指揮 ヴァーグナー《トリスタンとイゾルデ》「前奏曲と愛の死」、リスト《死の舞踏》(Dasol Kim独奏)、R.シュトラウス《ツァラトゥストラは斯く語りき》

◆4月2日:春川フィル Jong Jin Lee指揮 ベートーヴェン《レオノーレ》第3番、モーツァルト オーボエ協奏曲(Yun-Jung Lee独奏)、リムスキー=コルサコフ《シェーラザード》

◆4月4日:釜山フィル マニュエル・ロペス=ゴメス指揮 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(Choon-Soo Chung独奏)、チャイコフスキー《マンフレッド》交響曲

◆4月5日:水原フィル Daejin Kim指揮 グリーグ《過ぎた春》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Chi Ho Han独奏)、マーラー交響曲第7番《夜の歌》

◆4月6日:大田フィル ジェイムス・ジャッド指揮 Sung-hwan Choi《アリラン幻想曲》、ショパン ピアノ協奏曲第1番(Won Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月7日:光州響 Hong-Je Kim指揮 サン=サーンス《サムソンとデリラ》より「バッカナール」、チェロ協奏曲第1番(Yeon Sun Joo独奏)、ベルリオーズ《幻想交響曲》

◆4月8日:KBS響(ソウル) ヨエル・レヴィ指揮 ブラームス ヴァイオリン協奏曲(ボンソリ・キム独奏)、交響曲第4番

◆4月9日:仁川フィル Chi-Yong Chung指揮 グリエール ホルン協奏曲(Hongpark Kim独奏)、ブルックナー交響曲第7番

◆4月11日:軍浦プライム・フィル Yun-Sung Jang指揮 リスト《前奏曲》、ドニゼッティ《ルチア》より、ヴァーグナー《タンホイザー》より「夕星の歌」、ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》より「私は町のなんでも屋」(Gihoon Kimバリトン)、カセッラ交響曲第2番(韓国初演)

◆4月12日:江南響(ソウル) Sung Kisun指揮 R.シュトラウス《ドン・ファン》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番(Julius-Jeongwon Kim独奏)、ルトスワフスキ 管弦楽のための協奏曲

◆4月13日:大邱響 ジュリアン・コヴァトチェフ指揮 R.シュトラウス《死と変容》、4つの最後の歌(Myung Joo Leeソプラノ)、シューマン交響曲第4番

◆4月14日:原州フィル Kwang-Hyun Kim指揮 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Yekwon Sunwoo独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月15日:京畿フィル Shiyeon Sung指揮 ドヴォルザーク チェロ協奏曲(ソン・ミン・カン独奏)、ブラームス交響曲第4番

◆4月16日:特別ゲスト参加公演 香港フィル 18日大阪シンフォニー・ホール公演と同一プロ

◆4月18日:全州響 Hee-Chuho Choi指揮 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(Kyu-Yeon Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月19日:昌原フィル Tae Young Park指揮 R.シュトラウス《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》、ロンバーグ フルート協奏曲(Soyoung Lee独奏)、ストラヴィンスキー《春の祭典》

◆4月20日:ソウル・フィル ティエリ-・フィッシャー指揮 イサン・ユン《大管弦楽の為の序曲》、ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲(クリステル・リー独奏)、チャイコフスキー交響曲第5番

◆4月21日:済州フィル In-Hyeok Jeong指揮 Choi Jeong-hun大管弦楽のための《Darangshi》(世界初演)、クーセヴィツキー コントラバス協奏曲(Sung Minje独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月22日:公州市忠南フィル Seung-up Yoon指揮 ラヴェル《ラ・ヴァルス》、ブラームス二重協奏曲(Hyuna Kim、Woo Jin Kim独奏)、ショスタコーヴィチ交響曲第5番

◆4月23日:富川フィル Young Min Park指揮 ヴァーグナー《ヴァルキューレ》より「ヴァルキューレの騎行」、プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番(Minson Sohn独奏)、R.シュトラウス《死と変容》、《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》

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