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「日本青年館」というヴェニュ [音楽業界]

せっかく「隠居宣言」をしたというのに、いつもの夏はこんなだったろうかと不思議に思う程、何だか知らぬが「お盆休み前迄に」とか「今月末締め切り」という作文が積み上がっていて、もうこの歳では強引にパワーで押し切ることもままならず、そもそも「隠居宣言」後は来る仕事が面倒臭いものばかりになってしまっている今日この頃、とてもじゃないがこんな無責任電子壁新聞までやってる暇がない。てなわけで、今日も明後日までに2本の締め切り、ものを考えようとすると頭が痛くなり涙が出て来る状況なれど、命削ってお仕事しましょ…んだから、自分のメモの為の時事ネタひとつ。

いつの間にやら,日本青年館が三度目のオープンをしていたようでありまする。どうやら本日、クローズの再オープン記念演奏会があるみたい。ほれ。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1159397334204339&set=pcb.1159397397537666&type=3&theater

実際にコンサートに乗ってる演奏家さんからの生情報しかない、ってのはなんとも不思議極まりないわけだが、まあ、このヴェニュの生い立ちというか、在り方というかを考えれば、まあそういうもんなんかなぁ、と思わないでもないわけでありますな。だって、公式ホームページがこんなもんですからねぇ。
http://www.nippon-seinenkan.or.jp/seinenkan/
なんか、とても「貸会場」とか「ホテル」とかのページとは思えない、すごおおく「官報」っぽいテイストのページでんなぁ。

なんせ、日本の音楽史を紐解くに…とまで言わなくても、80年代バブルよりも前から東京の彼方此方で音楽を聴いていた年寄りの音楽ファンなら、日本青年館というヴェニュに多少なりの想い出はおありでありましょうぞ。まさかもう、「近衛文麿先生の鶴の一声で明治神宮の植林をやり、その勢いで日本青年館建設にも協力した」なんて青年はこの世にはいらっしゃらないでありましょうし、「この会場で近衛秀麿先生の指揮するオーケストラを何度も聴いた」なんて方ももう皆無でありましょう。

とはいえ、まだまだ爺としてはひよっこのやくぺん先生にしたところで、「ああ、そういえば最後からひとつまえの民音室内楽コンクール会場が日本青年館で、あのイグレッグQとレニングラードQの歴史に残る戦いが繰り広げられた古戦場であったっけ。その前のハレーQとブロドスキーQの輪をかけて壮絶な戦いもここが舞台であった」などと感慨に浸ったりするわけであーる。

つい最近も、大阪の大会でクァルテット部門審査員を務めるイネコさんに、「みんなもう覚えていないかもしれないけど、日本を拠点とする団体が日本で開催された国際レベルの室内楽コンクールで優勝を飾ったのは、あのイグレッグが最後で、それ以降、ひとつとしてないのですからねぇ」などと立ち話をして、ああああそーなんだぁ、だからあたしがここにいるのか、なんて苦笑されたりしてさ。

蛇足ながら、最終回となるその次の民音コンクールは、何故か芝の郵便貯金ホールが会場でした。二代目日本青年館は当然まだあった筈なのに、どうしてそうなったんでしょうかねぇ。日本青年館は信濃町から直ぐなのだから、実質上の民音会館として便利だった筈なのになぁ。

もとい、で、そんな昔話はともかく、日比谷公会堂が竣工するまで日本国帝都で唯一の音楽会場だった初代、なんのかんの案外と便利に使われていた二代目に続き、三代目日本青年館がオープンしたことは事実のようであります。場所からして、この数年は「東京オリンピック準備委員会&本部事務所」って性格がイヤでも表に出て来るでありましょうが、世界大運動会など一過性の騒動に過ぎないわけで、その先もヴェニュとしては機能せねばならぬ。どんなことになるのか、1300席の一昔前の市民会館型多目的ホールなんてものを今更ながらに新築したのですから、なんとか性格に合わせた使い方が出来ると良いのですけどねぇ。

っても、いつ眺めに行くことがあるか、このサイトじゃ見当もつけられんなぁ。うううん…

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誰かゲルギエフの《オランダ人》に行く方はおりませんか? [音楽業界]

いくらなんでももうちょっと話題になってええんでないかい、と思わざるを得ないウラジオストックの「マリンスキー国際音楽祭」、今更ながらに、こんなラインナップで現在開催中なわけですが…
http://www.55world.com/page/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E5%8A%87%E5%A0%B4%E3%80%802016%E3%80%80%EF%BC%88%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%EF%BC%89
来週水曜日のゲルギエフ指揮《オランダ人》なんぞ、俺の周辺には見物にいくという剛の者がおるぞぉ、という方がいらっしゃいましたら、お教え下さいませんでしょうか。勿論、「俺はシチェドリンを眺めてきたぞ」という方でも結構です。

自分で行けよ、と言われればそれまでなんだけど、なんせロシアは面倒だし、高いしねぇ。それに、なんかしらないが、今、ともかく作文山積みで…いやはや。

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「バーンスタイン100年」はなぜ動きが早いのか? [音楽業界]

日本の音楽ファンとすれば、去る週末に大阪で問題作《ミサ曲》全曲が舞台上演(なんせ、出版社の分類カタログでは「オペラ」扱いですから、上演、なんでしょうねぇ)され、「バーンスタイン100年」が盛りあがってる、というか、最大の目玉が終わってしまったような感すら漂っていて、ものすごい誤解をなさっているような方もいらっしゃるようなんだが…

レナード・バーンスタインのお誕生日は、1918年8月25日でありまするっ!来月のお誕生日が来ても、まだ「生誕99年」でありますっ!そこんとこ、誤解なきよーにっ!

なんでこんなことを言ってるかといえば、今やってる原稿でバーンスタイン作品の上演についていろいろ調べねばならぬことがあり、昨日来あれこれやってるんだけど、いろいろと不思議なことが起きてきている。例えば、《ミサ曲》フル編成版全曲演奏のこの先の上演日程、出版社公式ページの情報は、こうです。
http://www.boosey.com/pages/cr/calendar/perf_results
どれも来年になってから。

ま、そりゃそうでしょうねぇ。不思議なのは、いかにもやりそうなワシントンDCやニューヨーク、そして生誕地にして若き日の活動の中心だったボストンやタングルウッドのバークシャー音楽センターでの上演がないこと。それどころか、その辺りではバーンスタインの大規模舞台作品の上演は、大人気の《ウェストサイド物語》や《キャンディード》を含め、殆どみられない。

なんだかヘンだなぁ、と感じざるを得ないのでありまするよ。

なんてことをFacebookに記したら、流石に今は反応はWeblogよりもFacebookの方が圧倒的に早く、日本でバーンスタイン100年の旗振りをかって出てらっしゃる同業者某氏から「来年の7月にラヴィニアでシカゴ響初演があります」という情報をいただきました。ありがとうございますです。っても、おいおい、まさか出版社が把握していない筈はなかろーに、なんなんねん。

常識的に考えれば、いろんな事情で来年の1月後半以降に行われるオケやオペラ団体の2018-19年シーズンのラインナップ発表まで公表できない、ということもあるんだろーなー。そんな大人の事情で、出版社も情報コントロールに気を使ってるのかしら…なんて思っちゃう。なんせNYPなんて、この秋にバーンスタインの交響曲3曲を違う指揮者で1ヶ月くらいの間に全部やるので、もう読むのも億劫なデッカいリリースをドカンと送り付けてくる始末ですから、やる気満々、って感じなんだけどさぁ。

ま、要は、この「バーンスタイン100年」の仕掛けが、業界の常識から考えればちょっと早すぎる、ということなんだけど。音楽ファンの皆々様が「生誕●●年記念」という騒ぎを目にするのは、基本的には「切符を売るタイミング」でなんです。つまり、演奏団体や主催者の広報レベルでの話。だけど、今回はちょっと様子が違う。要は、仕掛けているのが出版社だ、ということ。この生誕100年騒ぎ、最大の仕掛け人は主催団体や音楽家ではなくて、ブーシー&ホークス社という出版社である、って特殊性の結果なんじゃないかしらね。

出版社の仕掛けは、演奏団体がシーズンプログラムを決定する前に始まるわけですから、当然、3年くらい早いところから始まっている。実際、やくぺん先生の手元にB&H社から「Lenard Bernstein at 100」というサンプルCD付きのスゴく立派な非売品冊子が送りつけられてきたのは、もう1年くらい前のような気がするぞ。これ。
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それくらいから動かないと、舞台作品などはとてもじゃないと決められませんからねぇ。

てなわけで、「バーンスタインはまだ生誕99年なんだぞ、聖路加の日野原先生より6歳も若いんだぞ」ってお話でした。

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上海フィルは上海響ではない~アジアオーケストラウィーク2017 [音楽業界]

「奇跡の復活」を遂げたデトロイト響のCEO やらトロンボーン奏者さんなんぞが喋るレクチャーを取材に行き、イベントを主催するオケ連さんのくばりもので、この秋の文化庁主催「アジア・オーケストラウィーク」の中身を今更ながら知ったです。こちら。
http://www.orchestra.or.jp/information/2017/-1051900-tokyo-operacity-concert-hall-shanghai-philharmonic-orchestra/
もう数週間前にアップされてるものですけど。

10年代に入って「外国2団体+日本の団体&東北での合同演奏会」という形が定着してきている。今回は、指揮者にデュメイが出て来て、関西フィルと合同演奏をするのは天下のマレーシアフィルというわけで、なんだか豪華版だなぁ、という感じがする。なんせ「日本国御上が実質上シーズンで唯一主催するオーケストラのコンサート・シリーズ」なんですから、これくらい豪華じゃないとねぇ。

で、この駄文で言いたいのはそこじゃない。もうひとつのゲストオケについて。

ええ、世界の人口数百万単位の都市の場合、都市名の付いたオーケストラが複数存在することが珍しくありません。王侯貴族がサポートするオーケストラの在り方が、市民社会になった150年くらい前に頭だけ「貴族→市民(を代表する「公共」)」にすげ替えたヨーロッパでは、貴族王侯プライヴェート団体だったオペラ団とその建物が街の中心にあって、そこにオーケストラ団員もちゃんといる。要は、オペラのオケ、でんな。その団員が好き勝手に集まってシンフォニーコンサートを始めたりする。ヴィーンフィルやドレスデン・シュターツカペレなんぞがその例ですね。

んで、オペラのオケがシンフォニーやってると、おおきなオペラとかがあるときにはシンフォニー活動が出来なくなるわけで、それじゃ困るということでシンフォニーに専従するオーケストラが出来ることもある。ヴィーン交響楽団、なんかがその例。そのスポンサーとして、地域によっては放送局がバックに付いたりするのが現実的という考えもあり、バイエルン放送響とか、一昔前ならベルリンRIAS放送響とかが出来ている。かくて、ひとつの街に複数のプロのオーケストラが活動するようになる。

…というのが常識としての一般論。ああ面倒だった。

さても、ここで上海フィルでありまする。

この団体、日本でも、ってか、世界でも有名なもうひとつ上海のオーケストラ、上海交響楽団とは別団体です。朝比奈隆氏が敗戦前から客演していたりする、御本人ら曰く「アジアで一番古いオーケストラ」(←諸説有り)については、日本語でもきっちり著作がありますから、お暇な方は夏のつれづれにどうぞ。まだちゃんと買えるみたいだし。
http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-93508-8/

もとい。上海フィルについて。この団体、ぶっちゃけ、一言で言えば、「戦後に上海の放送局が作ったもうひとつのオケ」です。長く別の名前で運営されていたのだけど、今世紀に入って「上海フィル」と名称を変更。現在は10年くらい前だっけ、にオープンした浦東側のオリエンタル・アーツセンターを本拠地とし、上海のメディアグループが運営する純粋民間オケ(ホントにそんなものが中国にあるのか、という議論はさておき…)として運営されている。要は、旧フランス租界の音楽院裏に永田音響さんが中をやった立派なホールを建てて本拠地としている伝統の上海響とは別の、上海の新興オーケストラでありまする。

だから、10月のオペラシティに行って、ステージに出て来たオケを眺めて、「あれ、トップに上海Qが居ないじゃないか、日本公演はBオケを連れてきたのかぁ」などと怒り出さないように。あっちは「上海響」でありまするっ!

以上、判ってる方にはなーんの意味もないお話でした。とはいえねぇ、一昨年でしたっけ、エッセンで都響がレーピン独奏で演奏会をやった翌日、ケルンのフィルハーモニーでポッペン御大指揮の室内管を眺めていたら、隣に座ってる老夫妻が昨晩のエッセンの演奏会についていろいろ喋っているのがイヤでも聞こえてきて、思わず耳をダンボにしていたら…おじーちゃん、「トウキョーシンフォニー…」と繰り返しているんですわ。ま、そーゆーもんだろーなー、と突っ込む元気もありませんでした。

そんな間違い、しちゃダメよ、皆々様。

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「判りやすい演出」とは [音楽業界]

これからマエストロ飯守へのインタビュー仕事があるので、あんまり中身には触れられないのですけど、ともかく、忘れないうちにひとことだけ、記しておきます。

昨日、初台新国立劇場で、故ゲッツ・フリードリッヒ演出(原演出?)の《ジークフリート》プレミアがありました。
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んで、このインタビュー仕事のために、珍しくも平土間プレス席をいただき、買っていた天井桟敷いちばん後ろの列のチケットは「これ、学生券とかのための無料提供券に出来ませんか」と新国の方に訊ねたのだが、驚くべき事に我らが国立劇場にはそういうシステムがないとのことで、捨てることになった。まさか、メンツ割れてるのに、警備員警察ゴッソリいる入口前で投げ売りするわけにいかんもんねぇ。

んで、音楽面についてはこれから某月刊誌今月売りグラビアページのためのお仕事があるので、それはそれ。問題は、恐らく、余り触れられないだろう、演出について。

この《リング》の演出、死んだ子の年を数えるようなことはしたくないので敢えてそれは触れないにしても、やっぱり、ちょっと不思議な舞台であります。今の初台の、誰がインテンダントだか判らないシステムでは、世界中の《リング》を見比べて、「おおおし、じゃあ、こいつにするか」と買ってくることだって出来るでしょう(現実的にはともかく、理屈としては可能でしょう、なんせわしらの税金50億円あるんだからさ)。そんな状況で、敢えてキース・ウォーナーの「トーキョー・リング」を捨てて、フィンランドから巨匠の最晩年の演出舞台を持ってきた。共同制作したからこうなっちゃった、とかじゃなくて、買って来た、というべきでしょうねぇ。

この舞台、特に昨日の舞台は、ご覧になった方は皆さんお判りのように、一言で言えば「もの凄く判りやすい」演出でした。

判りやすい、というのは、つまり、「ああ、あの小人は今、スゴく怒ってるんだな」とか、「あのさすらい人という奴はホントは全てを知った神様で、今、裏から成り行きを覗いているのだな」とか、「なるほど、2人の腹黒い小人族の兄弟が喧嘩してるのか」とか、「あの肥ったテノール、自分がホントの息子ではないと判って大喜びしているのだなぁ」とか、そういうこと。その瞬間に舞台で起きていることを、過剰なくらいに、歌手の方々が演技として見せてくれる。

そんな個々の役者がやってることの「判りやすさ」が延々と続きます(唯一、演技無しで棒立ちになっていたのが3幕冒頭のヴォータンなのだけど、あれも「大気荒れ狂うに中に孤独に立って沈思黙考している」という演技なんでしょうねぇ、きっと)。ですから、ホントに「あの肥った人、なにしてるの」という意味では、よーくわかる。

だけどね、それらの演技を通して、この舞台がトータルとして何を言おうとしているかになると…なんだか良く判らない。ってか、全然、判らない。

つまり、5時間以上に亘る舞台全体を眺めて、「あの演技をしていた人達は、どういう舞台の空気を作ろうとしていたのだろうか」というトータルな印象が、あんまり伝わらない。敢えて言えば、舞台監督はしっかりいて、役者もそれぞれに自分なりの役に対するイメージや方法論をしっかり持っていて、みんなきちんとやってるのだけど、全体を統括してるディレクターがいるように感じない、という舞台。

これ、ゲッツ・フリードリッヒが亡くなっている、というところから来る偏見ではないよなぁ、とずっと思いつつ眺めていたけど、やっぱり、最後までその印象はぬぐえなかったでありまする。

まあ、最近のドイツなどの50万人規模くらいの都市で次々に出ている《リング》サイクルは、演出家がどこまで舞台全体をコントロールしすれっからしの評論家共から褒められるかを競うオドカしあいになってる。昨年、前半ふたつだけ眺めさせて頂いたマンハイムのチクルス(DVDにもなってますので、ご関心のかたはどうぞ)なんぞ、まさにそれ。んで、この初台の舞台は、その正反対、「ちゃんとして、文句の言いようが無いけど…で、演出家さんはなにがいいたいのぉ」って舞台。

ネガティヴな表現に聞こえるかもしれませんが、「リングを出して、今の日本で起きている政治状況などを極力考えさせない、感じさせないようにする」という方針と割り切れば、これはこれで立派なもの。演出家が故人となっている定評ある舞台をきっちりした歌手と音楽で聴かせるのが日本の「国立劇場」の仕事、とこの劇場を運営しているお役人の皆様はお考えなのでありましょう。そのメッセージは、しっかりと伝わるです。

じゃ、びわ湖の「可能な限りかち割り通りの舞台」とどう違うかというと、これまた微妙にして違うので話がやたらとながくなるから、今はしません。ゴメン。

まだまだ1万円台以上のチケットはそれなりにあるそうなので、《ジークフリート》という作品がどういうものか知りたい方は、お金を出す価値はあります。この舞台を眺めて「へえ、こういうもんなんだ」と思ったり、「あたしゃ、やっぱりヴァーグナーはダメだ」と思ったりするには最適でありまする。

さて、初台に出かけねば。

[追記]

今、マエストロ飯守のインタビューを終え、新宿線で錦糸町方面に向かってます。いやぁ、上の作文、全部ちゃぶ台返しいしてくれるような、面白い話でした。あたくしめのアホさ加減丸出しでした、ホントに。どうやら事前にこの無責任電子k部新聞を眺めていたらしい新国立劇場スタッフの方はあ、横からニヤニヤなさってましたです。いやはや。

とにもかくにも、6月17日のO学のT誌発売を待たれい。まずは、テープ起こしじゃ。結構、あるぞおおお。

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香港でデュダメル三昧 [音楽業界]

まるっきりパソコンを開かない2日間という貴重な日を含む連休明けの朝、昨日から着手した「ベートーヴェン全曲演奏会」関連の原稿が脳内では出来ているのに手が動かずという典型的な「お休み明けアホ」状態でまるで進まず、朝からアブラムシにやられた葛飾オフィスの蜜柑の樹の死んだ葉っぱを処理するという単純作業を行い、さても再開するかと座ったもののやっぱりバカ。で、まずはウォーミングアップにアホで無内容な電子壁新聞をばちょろっと記すベーか。

ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏大国ニッポンちゃちゃちゃは、今更言うまでも無く、交響曲全曲サイクル天国でもあって、この連休にも某前田様の古都でおフランス輸入から自前に乗り換えた音楽祭でもやられていたみたい。毎年最低でも1度はなんのかんのベートーヴェンの交響曲サイクルがあるって、スゴいなぁ。

こんな状況はニッポン列島の特殊例であって、世界のどこでも、「ベートーヴェンの交響曲全曲演奏」なんてのはその街にとって何年かに一度、ことによると未曾有の大イベントとなるのが本来。…って、己のことを鑑みるに、この前「同一団体演奏家に拠るベートーヴェンの交響曲全曲チクルス」って見物したのは…そー、どーやら2011年光復節の軍事境界線横広場での野外演奏を最終日に開催されたソウルでのバレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン管だったよーな。もう、正に「歴史的なイベント」でんがな。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-08-09

さても、本来ならば「ベートーヴェン交響曲チクルス」ってのは、それくらいの扱いがあってしかるべきものなのでありましょー。んで、こんなサイクルがあります、というご案内。こちら。
https://www.hk.artsfestival.org/en/programmes/dudamel-and-sbsov-beethoven-cycle/

ご覧のように、来る11月頭から、香港でデュダメル指揮シモン・ボリバル管がベートーヴェンの交響曲全曲演奏を行います。毎年春節明けにでかい芸術祭を主催する香港アーツ・フェスティバルが主催で、まあねぇ、ホントは2月か3月にやって欲しかったんだろうけど、相手があることだからこういう特別演奏会になったんでしょうねぇ。

興味深いのは、なんせオケがオケだけに、単にアーツセンターで演奏します、ってんじゃなくて、コミュニティ・アウトリーチなんぞをしっかりやりますよ、と宣言していること。これが本来の在り方なんだろーなぁ、と思うのは、時代がそうなってきたということなんでしょーねぇ。

会場は、5番以降はスターフェリー横のアーツセンターだけど、4番までは赤い地下鉄の終点荃灣のタウンホール、去る1月に室内楽音楽祭が出張ったところでんな。へええ、って感じですねぇ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23
主催者がホールで、記念年などにやるケースが多々見られる日本の「〇〇全曲演奏会」では珍しいかもしれないけど、都市全体にサイクル会場を点在させるというのはありだなぁ。ソウルも、最終回だけ板門店で、他はアーツセンターだったし。金沢なんかもそうすれば良かったのに。市町村合併で市内に「音楽ホール」やら「多目的ホール」が3つも4つもあって困ってる自治体は日本全土にいっぱいあるんだから、このやり方、どっか真似してくれて良いと思うんだけどね。

てなわけで、流石に切符の動きが遅い香港とは言え(とはいえ、最近は売れるものはあっと言う間に売れちゃう気もするが)、まだサイクルでもあるようなので、ご関心の向きはどーぞ。あたくしめは…どーかなぁ、誰かオケ関係の本職の方がいくべきであろーなー、と思うですけど。

さて、お仕事お仕事。

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八王子も「大」音楽祭開催中 [音楽業界]

昨日は遙々、多摩川越えて多摩丘陵が相模の原へと下りていく外れの北の斜面に開けた新開地、上空の未だ占領下の空に米軍機戦闘機轟音たてて飛び交う南大沢まで行ってまいりました。嗚呼遠かった、と言うべきなんだろーけど、京王線の調布までは若き日に庵を結んでいた多摩県東部なのでさほど遠いとは感じず、正直、なんだか案外近いじゃんかぁ、と思ってしまった。首都圏近郊公共交通インフラ、畏るべし。

当電子壁新聞を立ち読みなさっていらっしゃる皆様の多くは、ことによると有楽町近辺で時間待ちをしながらお読みになってるやもしれぬ今日この頃、あたくしめは有楽町の移動音楽遊園地イベント、本日昼のプソフォスQのアダムス眺めて、マスオさんご家族旅行に参ります都合もあり、参加はそれだけ。来年以降はともかく、大いに盛りあがっているならそれはそれで結構なことでございます。

そもそも4、5月の連休は、日本列島各地でお祭りだらけになる時期でして、昨日出向いた南大沢からさらすてづくりさらさらの多摩川越えた向こう、いにしえの東蛮族統治の古都府中では昨今は観光度がヒートアップしているらしい祭りがあるし、手近なところではやくぺん先生の佃の縦長屋から見下ろす大川対岸の鉄砲洲稲荷さんも例大祭。
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所謂東銀座から大川までのこっちには、「銀座」って滅茶苦茶価値ありそーな半被羽織った睦の皆さんが「いなせ」という使えない形容詞を使うしかない格好して蜷局巻いてらっしゃったり。小生が有楽町の移動音楽遊園地を初年度のオープニングのところを内部から眺めただけで以降はどうにも関心を持てないでいるのは、どうもこの新興祭りが鉄砲洲稲荷さんにちゃんと礼儀を通してないみたいなのが理由であります。ルネマル、いちどくらい菓子折もって「新しい祭り隣で同時期にやりますんで、迷惑かけますが宜しく」と鉄砲洲稲荷に挨拶に来なさい、それがニホンの礼儀というもんじゃ!←これ、マジで言ってます。

もとい。で、昨日出向いた南大沢も、なんとまぁ、音楽祭の一部でありました。ほれ。
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あなた、「音楽祭」じゃなくて、「大音楽祭」ですぞっ!なんだかスゴいぞっ!へえ、公式ページがFacebookなんだなぁ。
https://www.facebook.com/八王子音楽祭-943648175704162/
なんせ南大沢が八王子市であると昨日まで知らなかったおバカで情けないやくぺん先生、この音楽祭についてどうこう論じることなど出来ないし、その気もないでありまするが、ともかく、行政さんが堂々と「大音楽祭」と謳う以上、大きいんでありましょう。記者会見的には予算規模ということだが、それは知らぬ判らぬ。ただ、明らかに期間と地域は大きいですね。南大沢文化会館のこの公演に行ったのだが
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脇に積み上げられた公式案内では会場マップだけで4ページ。公演スケジュールが堂々の6ページという膨大なもの。なんと公演数に至っては総計102!これはもう、「大」音楽祭でんがなぁ。なんせ、八王子市は東京都よりも歴史がある自治体
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今年は百年祭で、秋の横田基地オープンハウスには我が軍の広報飛行隊蒼き衝撃軍団による八王子上空祝賀飛行も予定されているそうでありまするし。なんなんねん。
http://www.mod.go.jp/asdf/pr_report/blueimpulse/schedule/

ってもさ、失礼ながら、当電子壁新聞を立ち読みなさっている善男善女の皆様の殆どが、「へぇえ?」とぽかんとした顔をなさってるでしょうねぇ。「ラ・フォル・ジュルネなら日本各地の情報を有し、金沢の音楽祭もチェック済。昨日の池袋のマンハッタンっぽい現代音楽際だってちゃんと主演者を確認している俺が、なんでこんなイベントを知らないのだぁ」と訝しく思ってらっしゃるんじゃないかしら。

まあ、ラインナップをご覧になればお判りのように、一種の「御堂筋クラシック」でしたっけ、あれみたいなもんで、会場はもうありとあらゆる場所。それになにより、所謂「クラシック」というジャンルは、音楽祭のクライマックスたる八王子駅隣の大ホールでの《アイーダ》公演という、もー絵に描いたような「音楽祭」出し物があるといえ、それがメインとは言えない。最大の謎は、あれほどお金と手間と時間をかけてやっていた「八王子カサド・コンクール」が「大音楽祭」の大事な要素とされていないことだけど…まあ、それは大人の事情があるのであろーとそっと胸に納めるしかないのかしら。

とにもかくにも、まだまだ続く日本列島の連休、恐らくは列島各地でこういう「音楽祭」はいっぱいあるのでしょう。ぐぁんばれ、音楽祭!ぐぁんばれ、スタッフの皆様っ!

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北京オペラ…っても京劇じゃなくて [音楽業界]

昨日、このたび御奉職なさっている大学のサバティカル・イヤーで台北に長期滞在することになった方とパソコン画面上で話をしていて、いろいろ話題になったこと。忘れないように記しておきます。

上海Qから、「北京のフェスティバルで弾くよ」という連絡があり、まあ東京同様にいつでもフェスティバルをやってる超巨大都市だからねぇ、と思っていろいろ案内を眺めたら、大気汚染の心配とか空港のめちゃ混み具合とかで暫く足を運んでいなかったこの街、相変わらずなんのかんのやってるようであります。当たり前だけどね。これが「北京五月祭」オープンガラのご案内。
http://en.chncpa.org/NEWS/wzxw/201704/t20170429_170063.shtml
ホンガン氏はこのあと直接大阪入りして弦楽四重奏コンクールの審査になるのかな。いつニュージャージーのお宅に帰れるんだろーか、お疲れ様です。

んで、ついでにあれこれ眺めたら、今時情報さえ出せば世界のどこにでもお出かけになるオペラ好きの皆様にご関心がありそうなネタがいくつかありましたので、以下、列挙しますです。あたしゃ、無論、どれも行きません、ってか、行けません。

あの天安門前広場横、中国の国会議事堂の隣に「インデペンデンス・デイ」のUFOが降りてきたのかと思ってしまうような万里の長城に匹敵するアホな巨大建築物たる北京国家大劇院は、単なるヴェニュじゃなくて、ちゃんと主催者やプロダクション機能も備えた組織でもあります。中国で唯一の、外国人メンバーも入れた実質上の座付きオケたるNCPAオケを新設し、主催オペラバレエ公演のピットに入っているくらいだから、初台よりも余程本気の「オペラハウス」でもあるわけですよ。

で、そこが年間にそれなりの数のプロダクションを出している。「国家大劇院オペラ・フェスティバル」なんてもんが初夏に向けてあるようで、主要演目はこちら。
http://en.chncpa.org/search/?sw=NCPA%20Opera%20Festival%202017
ゲルギエフ御大のところとの共同制作という《ルチア》は終わっちゃったけど、やっぱり、《仮面舞踏会》と《薔薇の騎士》がメインですわなぁ。ご関心の向きは勝手にサイトを開けていただければキャストスタッフなど判るから、ご覧あれ。初台でお馴染みの演出家さんも出ているわけで、その意味では、安心のプロダクションとも言えるでありましょうぞ。ドイツのローカル・ハウスみたいな「読み替え」はやらなさそうだから、先頃の韓国国立オペラよりも余程初台に近いテイストのものが出て来るでしょうし。

なお、北京ではもうひとつ、日本のオペラ好きが関心がありそうな出し物として、こんなんもあります。
http://theatrebeijing.com/whats_on/drama/2017/the_magic_flute.html
これ、ベルリン・コミーシュ・オパーの所謂引っ越し公演なのか、それともプロダクションを持ってきて北京で制作するのか、なんだかこの案内だけでは良く判らないけど、ベルリンはちょっと遠いけど北京なら、という方はいらっしゃるんじゃないかしら。ただ、7月下旬の北京って、アホみたいに暑いです。オリンピックやった頃でしょ。東京の8月くらいの感じですから、そこは覚悟するよーに。

てなわけで、いろんな「北京オペラ」のお話でした。ただ、一昔二昔前みたいに、「北京のオペラは滅茶苦茶安いぞ」ってのはまるでないんだわなぁ。富裕層も日本の10倍いるということなのかしら。

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春恒例韓国地方都市オーケストラ祭りの全容! [音楽業界]

これ、去る4月23日朝に金浦空港のラウンジで書き始め、途中まで記して、都市名の日本語表記変換なんぞが余りにもめんどーなんで放り出っぱなしにしてたお話。連休の谷間、作文作業が半端な凪状態になってしまったので、せっせと最後までデータ記入します。

これまでも当電子壁新聞では「すみだトリフォニーの地方都市オーケストラ・フェスティバルはいつの間にか無くなってしまったが、お隣ソウルではアーツセンター主催で遙かに規模のデカイ、恐らくはオーケストラ音楽祭としては世界最大規模の韓国地方都市オーケストラ・フェスティバルをやってます」という情報はほぼ毎年垂れ流していたけど、案外と4月にソウルにいくことがなく、やくぺん先生がアーツセンターのでっかいコンサートホール客席に座って体験したことはありませんでした。

今年は、大阪から東京湾岸に戻ってくる途中にチョロッとソウルに立ち寄り、今話題のインな演出家さんの舞台を眺めたついでに、せっかくこの時期ならばということで宿願の「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」をちょっとだけでも見物して参ったでありまする。これが韓国名物、ロビーにでっかく出されてその前で記念撮影をするための大看板。
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関空から金浦に着いた日は目的の《ボリス》で、その週末23日日曜日が4月1日からほぼ連日行われた公演の最終日なので、そのひとつまえの公演を切符があれば覗いてやるか、という程度に考えていた。そしたら、《ボリス》があんまりにも面白いもので、午後3時から6時過ぎまでかかる別キャストの土曜日公演をオペラハウスで見物し、隣のコンサートホールに走り込んで、午後5時から始まる韓国ローカルオケの演奏会の後半だけを眺めてやろうではないか、ということになった。

なんせ、土曜日の昼前にアーツセンター正面右手のカウンターでチケット買おうとしたら、幸か不幸かオケフェス公演は最安値1000₩のチケットの3階最後列隅っこと、滑り込むには最適な席も確保出来たもんで。これがチケット買った直後、土曜日午後のアーツセンター中庭。日本では「朝鮮半島一触即発」って煽り情報がメディアに流れるけど、ソウルはいつものノンビリした週末。なんせ、日本と同じ頃に連休もあるんだしさ。右手がオペラハウスで、オーケストラ祭の垂れ幕が下がる広場を抜けて左手がコンサートホール。ここを夕方に、いい歳こいてダッシュで走ったわけであります…ふうう……
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結果として、《ボリス》からショスタコ5番という、ファンの方ならば人生で一度はやってみたい極めて意義深いハシゴとなったわけでありまして、これはこれでひじょーに面白かったです。なんせ、あの世に名高い偽書「ショスタコーヴィチの証言」で、ショスタコさんが「ショスタコの5番はムラヴィンスキーはなーんにも判っていなかった、あの終楽章は《ボリス》の冒頭2場での強制的な皇帝讃歌と同じなのだ」という、それまでの《革命》なる副題を反故にしてしまうような発言をし、それが事実であろーがなかろーが、その後のショスタコ5番解釈をすっかり変えてしまったのは、皆様よーくご存知の通り。確かにこうしてライブで続けて聴くというありそうでない体験をすると、なるほどねぇ、と思わざるを得ません。「ショスタコが《ボリス》校訂をやってたのって、第5交響曲の次の仕事だかくらいだっけ、それとも一緒くらいだっけ…」なーんてずーっと客席で思っていたりしてさ。

やくぺん先生が後半だけ聴けたのは、公州市忠南フィルハーモニックなる団体。今年のラインナップの中でも、とりわけローカルっぽいオケでんな。大田の西、ソウルから150キロくらい、ハイウェイで2時間弱くらいかな。大ソウル圏のギリギリというか、出て直ぐというか、東京圏なら大田が宇都宮とかの感じだろうから、「栃木県栃木フィルハーモニック」ってくらいの感じの団体でしょうかねぇ。まあ、ソウルから釜山までハイウェイぶっとばして4時間という規模のお国なんだけどさ。

だから、当然、ソウルで土曜日5時開演ということになれば、オケは地元の練習場に朝に集まって、バスでやってきて、終演後はそのまま戻るんでしょう。昼前、ロビーでウロウロしていたら、オケマンさんが到着し、なんとロビーからオーディトリアムに入っていきましたです。
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ケルンのフィルハーモニーでブーレーズ指揮コンセルトヘボウ管を聴いたときに、終演後、団員の知り合いに挨拶しよう、場合によっては飯でも、と楽屋で待ってたら、なんとマーラーの7番が終わるやみんな直ぐにゾロゾロ出て来てそのままバスでアムステルダムまで帰ってしまった。このフェスティバル、チェジュ島のオケ以外は、みんなあんな感じのやり方が出来る。宿泊費がかからないのはデカイですね、主催者としては。

で、前半のブラームスのドッペルなんかは捨てた公州のオケですけど、とにもかくにも哀れボリスがお亡くなりになってそれっとばかりに駆け込んだら、直ぐに後半のショスタコが始まった。オケマンがステージに戻ってくるともう大拍手が巻き起こり、ブラボーまで飛んでます。なんだこりゃ、って不思議なノリ。

どうやら、郷土愛熱烈なお国らしく、満席とは言えぬも広い客席を埋めたそれなりのお客さんのかなりが、ソウルの音楽好きというよりも公州市の出身者か、ことによると土曜の朝からソウルまでやって来ておらがオーケストラを応援しようという地元の方みたい。無論、アーツセンター主催なんで、学生券は半額とかいろいろ優遇があるので、やくぺん先生が座った日本円で1000円のNHKホール3階いちばん後ろ辺りみたいな貧乏人席には、明らかにお金のない学生さんの音楽ファンらしき連中もそれなりにいて、一緒になって指揮しそうになってる微笑ましい姿とかも。

まあ、確かに、3週間でオケ20団体聴けて毎日500円でも総計1万円也なら、オケ好き貧乏学生なら毎日通っちゃうでしょ。すごおおおく勉強になるだろーなー。なんで日本のオケやってる評論家さんがこの時期にソウルに泊まり込まないか、毎年のことながら、不思議この上ないです。もう爺だし、オケはメインのご商売じゃないからやらんものの、俺が若かったら毎年来るぞ、と思うけどねぇ。

秋にオケ連さんが実質やってる日本国文化庁主催の唯一のオーケストラ・コンサート「アジア・オーケストラ・ウィーク」でもまだ登場していない公州市のオケ、コンマスとチェロのひとり以外は弦楽器みんな若い女性という一昔の日本みたいというか
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なんせ男は若い頃に兵役で徴用されちゃうお国柄、今の韓国の典型的な姿をがっつり舞台上で繰り広げるその実力は…うううん、地方オケです。日本の一昔前の「地方オケ」でんな。今世紀になって圧倒的に地力を付けてきて、今や「地方オケ」という言葉の意味は20世紀末までとはまるで違うものになってしまったニッポン国とはちょっと違う。この「地方オケ」感が、ある意味できっちりした「首都と地方のヒェーラルキー」になってるのならば、それはそれであり。その辺り、20団体全部聴けば一発で判るんだろうけどねぇ。
ま、技術的にはともかく会場は大盛り上がりで、なんだかしらないピアノがパラパラと弾く韓流ドラマのテーマソングみたいなアンコール曲は、ショスタコ以上の盛り上がりでありましたとさ。

せっかくだから、以下、「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」参加団体のデータを記しておきましょう。恐らくは日本語で紹介されるのははじめてじゃないかな。残念ながらこれだけSNS上にオケ好きがいても、流石にこのフェスティバル全部フォローしている物好きはいらっしゃらないようで、纏まって紹介してるの記事は過去に遡っても見当たらない。不思議だなぁ、参加数ではザルツブルク音楽祭も超える世界最大のオーケストラ音楽祭なのにねぇ。

※※※※

会場は全てソウル・アーツセンター・コンサートホール。正式名称は「2017ソウル・アーツセンター・クラシック・フェスティバル」だそーな。ちなみに指揮者やソリストさんの読み方は判らないので、アルファベット表記をまんま記します。日本でも知られた名前がチラホラありますな。オケの名称は、基本直訳で、日本での慣例表記がある団体はそれに従います。コリア・シンフォニーって、「韓国響」って書かないよねぇ…どーなんだろーか。ソウル三大オケのひとつでこの調子だからなぁ。それにしても一昔前はチャイコフスキーだらけだったけど、随分と趣味も変わってきましたねぇ。スラブもの大好きなのは相変わらずだけど。生誕百年のイサン・ユンはソウル・フィルだけというのも、この作曲家の微妙な立ち位置の反映なのかしら。それにしてもマラ七やる演奏会、滅茶苦茶長くないかぃ。

◆4月1日:コリア・シンフォニー(ソウル) Hun-Joung Lim指揮 ヴァーグナー《トリスタンとイゾルデ》「前奏曲と愛の死」、リスト《死の舞踏》(Dasol Kim独奏)、R.シュトラウス《ツァラトゥストラは斯く語りき》

◆4月2日:春川フィル Jong Jin Lee指揮 ベートーヴェン《レオノーレ》第3番、モーツァルト オーボエ協奏曲(Yun-Jung Lee独奏)、リムスキー=コルサコフ《シェーラザード》

◆4月4日:釜山フィル マニュエル・ロペス=ゴメス指揮 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(Choon-Soo Chung独奏)、チャイコフスキー《マンフレッド》交響曲

◆4月5日:水原フィル Daejin Kim指揮 グリーグ《過ぎた春》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Chi Ho Han独奏)、マーラー交響曲第7番《夜の歌》

◆4月6日:大田フィル ジェイムス・ジャッド指揮 Sung-hwan Choi《アリラン幻想曲》、ショパン ピアノ協奏曲第1番(Won Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月7日:光州響 Hong-Je Kim指揮 サン=サーンス《サムソンとデリラ》より「バッカナール」、チェロ協奏曲第1番(Yeon Sun Joo独奏)、ベルリオーズ《幻想交響曲》

◆4月8日:KBS響(ソウル) ヨエル・レヴィ指揮 ブラームス ヴァイオリン協奏曲(ボンソリ・キム独奏)、交響曲第4番

◆4月9日:仁川フィル Chi-Yong Chung指揮 グリエール ホルン協奏曲(Hongpark Kim独奏)、ブルックナー交響曲第7番

◆4月11日:軍浦プライム・フィル Yun-Sung Jang指揮 リスト《前奏曲》、ドニゼッティ《ルチア》より、ヴァーグナー《タンホイザー》より「夕星の歌」、ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》より「私は町のなんでも屋」(Gihoon Kimバリトン)、カセッラ交響曲第2番(韓国初演)

◆4月12日:江南響(ソウル) Sung Kisun指揮 R.シュトラウス《ドン・ファン》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番(Julius-Jeongwon Kim独奏)、ルトスワフスキ 管弦楽のための協奏曲

◆4月13日:大邱響 ジュリアン・コヴァトチェフ指揮 R.シュトラウス《死と変容》、4つの最後の歌(Myung Joo Leeソプラノ)、シューマン交響曲第4番

◆4月14日:原州フィル Kwang-Hyun Kim指揮 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Yekwon Sunwoo独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月15日:京畿フィル Shiyeon Sung指揮 ドヴォルザーク チェロ協奏曲(ソン・ミン・カン独奏)、ブラームス交響曲第4番

◆4月16日:特別ゲスト参加公演 香港フィル 18日大阪シンフォニー・ホール公演と同一プロ

◆4月18日:全州響 Hee-Chuho Choi指揮 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(Kyu-Yeon Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月19日:昌原フィル Tae Young Park指揮 R.シュトラウス《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》、ロンバーグ フルート協奏曲(Soyoung Lee独奏)、ストラヴィンスキー《春の祭典》

◆4月20日:ソウル・フィル ティエリ-・フィッシャー指揮 イサン・ユン《大管弦楽の為の序曲》、ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲(クリステル・リー独奏)、チャイコフスキー交響曲第5番

◆4月21日:済州フィル In-Hyeok Jeong指揮 Choi Jeong-hun大管弦楽のための《Darangshi》(世界初演)、クーセヴィツキー コントラバス協奏曲(Sung Minje独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月22日:公州市忠南フィル Seung-up Yoon指揮 ラヴェル《ラ・ヴァルス》、ブラームス二重協奏曲(Hyuna Kim、Woo Jin Kim独奏)、ショスタコーヴィチ交響曲第5番

◆4月23日:富川フィル Young Min Park指揮 ヴァーグナー《ヴァルキューレ》より「ヴァルキューレの騎行」、プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番(Minson Sohn独奏)、R.シュトラウス《死と変容》、《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》

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300席規模のホールが21世紀のスタンダードなのか [音楽業界]

数日前に書きかけてほーり投げていたもんをアップしますです。ネタは、ええと、去る火曜日の話です。

ひところ葛飾厄偏舎で練習をしていた、やくぺん先生的には文字通りの「レジデント・クァルテット」のクァルテット・セレシアが、お久しぶりにそれなりに大きな会場で演奏会を行うということで、これは聞かぬわけにはいくまいと、手土産にそろそろ季節もオシマイの苺大福など抱えて参上いたしましたです。場所は、「台東区生涯学習センターミレニアムホール」なる場所。

正直、台東区にあること以外はよーわからず、とにもかくにも最寄り駅という地下鉄日比谷線入谷駅の上野寄りの出口を出て、言問通りを真っ正面に聳える天樹方向に延々と歩く。思えばこの道、根津に庵を結んでいた頃にNJPが文化会館からすみだトリフォニーへと本拠地を移転し、それまでは藝大の間を抜けて上野公園口まで歩くだけで済んだのに、都バスで根津駅前から延々と寛永寺裏と谷中霊園の間を抜けてJR跨いで、浅草かすめ、天樹なんてもんが聳えるなんて思ってもいなかった鄙びた押上で曲がって錦糸町まで向かっていた途中。ってか、この辺りをふらつくなんて、あの頃以来じゃあないかしら。途中で不安になって、和菓子屋さんに入って苺大福買って、「ミレニアムホールって、こっちで良いんですよね?」と訊ねると、2つ先の信号を右に曲がってバーミヤンがあるからそこ、ってお応え。へ、バーミヤン、ですかぁ…

ったら、この区立総合文化施設、確かに目印としては「バーミヤン」の看板がいちばん判りやすい。というのも、河童橋食器問屋街の最北他となる通りに面した施設の2階にしっかりと格安中華屋さんが入っていて、一見するととてつもなく巨大で立派なバーミヤンにすら見えるわけであります。あ、外観の写真を撮らなかったなぁ。ま、こちらの建築事務所さんが落成直後に撮影したらしい最もカッコイイ外観の写真をご覧あれ。
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で、このステキな写真左側2階のガラス部分が「バーミヤン」になっていて、今は前にしっかり看板が出ております。んで、その奥が、ミレニアムホールなる300席の公共ホールになっている。施設全体の案内はこちら。
http://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/gakushu/syougaigakusyuucente/

昨今の公共文化施設、図書館から集会場からホールからなにからなにまで一緒にした巨大コミセンみたいなもんをドカンと作る、という傾向というか流行がある。去年、キチの街ヤマトに誕生した「大和シリウス」もそんなもんでありましたっけ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
で、この台東区の会場、2002年に出来ていて、完成当時の永田音響さんのレポートはこちら。これで「音楽ホール」としてどんなところか、よーくお判りでしょ。
http://www.nagata.co.jp/news/news0201.htm

21世紀に入ってオープンした300席の音楽用ホールといえば、2003年のハクジュホールを誰でもが思い出すでしょうし、少し遅れて2006年に名古屋にオープンし現在も日本のクラシック音楽興行シーンの颱風の目のひとつとして君臨している300席ちょっとの宗次ホールがある。めんどーな議論は省略するけど、ぶっちゃけ、21世紀に入って規模が縮小の傾向が隠せない「クラシック音楽専用ホール」の成功例は、どうやら公共民間を問わずに300席ということになってるのかしら。先頃オープンして話題の新浦安も、この規模だしさ。札幌のふきのとうホールはもうちょっと小さいけど、街の規模からすればまあ、同じくらいということでしょ。

おっと、話が先に行ってしまった。要は、恥ずかしながらはじめて去る火曜日に足を踏み入れた台東ミレニアムホール、とっても良い空間なんですわ。300席の公共ホールとは思えない、所謂シューボックスで天上の高い、タップリした空間。昨今大流行の「コンサートスペース」というか、「マイクロホール」というか、個人が自分の敷地に建てちゃう100席以下のホールでは不可能な、空間の響きそのものをきっちり味わえる。同じ規模ながら、天上の低さが如何ともし難いサントリー・ブルーローズの関係者さんなど、「いやぁ、知らなかったけど、スゴく良いホールがありますねぇ」と感心なさってましたし、今や日本のクァルテットの聖地となった「良すぎる公共ホール」サルビアホールでシリーズを行うプロデューサー氏も、「ここ、良いじゃない」と仰ってました。

確かに、この空間、クァルテット・セレシアとすれば普段活動のベースとなってるサロンやコンサートスペースとは違って、タップリした容量の「ホール」での弾き方が要求されるという難しさがあったことは否めません。だけど、やっぱり最低限でもこの規模の空間でやってくれないと、正直、団体としてのキャラは判りにくいところがある。その意味で、とても有り難い経験をさせていただきましたであります。ほれ、綺麗なステージでしょ。
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なんでこのホールが使われないのか、自分が存在を知らなかったのか、関係者の皆さんが口を揃えて不思議がっておりましたが、ひとつの理由は、使用料金がもの凄く安くて会場稼働率が極めて高いことにあろそうな。公共ホールであることの良し悪し、というわけにもいかないけど、やっぱりそれなりの事情はあるわけでんな。

もうひとつ、ホールとして敢えて苦言を申せば、ロビーにも裏にも、やたらと殺風景な張り紙が出ていること。この調子。
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とか、こんなとか
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どうも、管理する方々が絵に描いたようなお役所仕事をなさっているようで、サービス業というよりも「公共施設の管理」に徹していらっしゃるのがありあり。実際、使い勝手など、極めて融通が利かない部分があるとの声も。ま、安いんだから仕方ない、といえばそれまでなんだけどねぇ。

是非とも聴いてみたいという方は、都響の副首席クラスを並べた弦楽四重奏団の演奏会がありますので、そちらをどうぞ。
https://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3094&year=2017&month=5

「時代は小型化、コンパクト化、ミニチュア化」…なーんて広告代理店風の言い方をする気はないけどさぁ。

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