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「判りやすい演出」とは [音楽業界]

これからマエストロ飯守へのインタビュー仕事があるので、あんまり中身には触れられないのですけど、ともかく、忘れないうちにひとことだけ、記しておきます。

昨日、初台新国立劇場で、故ゲッツ・フリードリッヒ演出(原演出?)の《ジークフリート》プレミアがありました。
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んで、このインタビュー仕事のために、珍しくも平土間プレス席をいただき、買っていた天井桟敷いちばん後ろの列のチケットは「これ、学生券とかのための無料提供券に出来ませんか」と新国の方に訊ねたのだが、驚くべき事に我らが国立劇場にはそういうシステムがないとのことで、捨てることになった。まさか、メンツ割れてるのに、警備員警察ゴッソリいる入口前で投げ売りするわけにいかんもんねぇ。

んで、音楽面についてはこれから某月刊誌今月売りグラビアページのためのお仕事があるので、それはそれ。問題は、恐らく、余り触れられないだろう、演出について。

この《リング》の演出、死んだ子の年を数えるようなことはしたくないので敢えてそれは触れないにしても、やっぱり、ちょっと不思議な舞台であります。今の初台の、誰がインテンダントだか判らないシステムでは、世界中の《リング》を見比べて、「おおおし、じゃあ、こいつにするか」と買ってくることだって出来るでしょう(現実的にはともかく、理屈としては可能でしょう、なんせわしらの税金50億円あるんだからさ)。そんな状況で、敢えてキース・ウォーナーの「トーキョー・リング」を捨てて、フィンランドから巨匠の最晩年の演出舞台を持ってきた。共同制作したからこうなっちゃった、とかじゃなくて、買って来た、というべきでしょうねぇ。

この舞台、特に昨日の舞台は、ご覧になった方は皆さんお判りのように、一言で言えば「もの凄く判りやすい」演出でした。

判りやすい、というのは、つまり、「ああ、あの小人は今、スゴく怒ってるんだな」とか、「あのさすらい人という奴はホントは全てを知った神様で、今、裏から成り行きを覗いているのだな」とか、「なるほど、2人の腹黒い小人族の兄弟が喧嘩してるのか」とか、「あの肥ったテノール、自分がホントの息子ではないと判って大喜びしているのだなぁ」とか、そういうこと。その瞬間に舞台で起きていることを、過剰なくらいに、歌手の方々が演技として見せてくれる。

そんな個々の役者がやってることの「判りやすさ」が延々と続きます(唯一、演技無しで棒立ちになっていたのが3幕冒頭のヴォータンなのだけど、あれも「大気荒れ狂うに中に孤独に立って沈思黙考している」という演技なんでしょうねぇ、きっと)。ですから、ホントに「あの肥った人、なにしてるの」という意味では、よーくわかる。

だけどね、それらの演技を通して、この舞台がトータルとして何を言おうとしているかになると…なんだか良く判らない。ってか、全然、判らない。

つまり、5時間以上に亘る舞台全体を眺めて、「あの演技をしていた人達は、どういう舞台の空気を作ろうとしていたのだろうか」というトータルな印象が、あんまり伝わらない。敢えて言えば、舞台監督はしっかりいて、役者もそれぞれに自分なりの役に対するイメージや方法論をしっかり持っていて、みんなきちんとやってるのだけど、全体を統括してるディレクターがいるように感じない、という舞台。

これ、ゲッツ・フリードリッヒが亡くなっている、というところから来る偏見ではないよなぁ、とずっと思いつつ眺めていたけど、やっぱり、最後までその印象はぬぐえなかったでありまする。

まあ、最近のドイツなどの50万人規模くらいの都市で次々に出ている《リング》サイクルは、演出家がどこまで舞台全体をコントロールしすれっからしの評論家共から褒められるかを競うオドカしあいになってる。昨年、前半ふたつだけ眺めさせて頂いたマンハイムのチクルス(DVDにもなってますので、ご関心のかたはどうぞ)なんぞ、まさにそれ。んで、この初台の舞台は、その正反対、「ちゃんとして、文句の言いようが無いけど…で、演出家さんはなにがいいたいのぉ」って舞台。

ネガティヴな表現に聞こえるかもしれませんが、「リングを出して、今の日本で起きている政治状況などを極力考えさせない、感じさせないようにする」という方針と割り切れば、これはこれで立派なもの。演出家が故人となっている定評ある舞台をきっちりした歌手と音楽で聴かせるのが日本の「国立劇場」の仕事、とこの劇場を運営しているお役人の皆様はお考えなのでありましょう。そのメッセージは、しっかりと伝わるです。

じゃ、びわ湖の「可能な限りかち割り通りの舞台」とどう違うかというと、これまた微妙にして違うので話がやたらとながくなるから、今はしません。ゴメン。

まだまだ1万円台以上のチケットはそれなりにあるそうなので、《ジークフリート》という作品がどういうものか知りたい方は、お金を出す価値はあります。この舞台を眺めて「へえ、こういうもんなんだ」と思ったり、「あたしゃ、やっぱりヴァーグナーはダメだ」と思ったりするには最適でありまする。

さて、初台に出かけねば。

[追記]

今、マエストロ飯守のインタビューを終え、新宿線で錦糸町方面に向かってます。いやぁ、上の作文、全部ちゃぶ台返しいしてくれるような、面白い話でした。あたくしめのアホさ加減丸出しでした、ホントに。どうやら事前にこの無責任電子k部新聞を眺めていたらしい新国立劇場スタッフの方はあ、横からニヤニヤなさってましたです。いやはや。

とにもかくにも、6月17日のO学のT誌発売を待たれい。まずは、テープ起こしじゃ。結構、あるぞおおお。

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香港でデュダメル三昧 [音楽業界]

まるっきりパソコンを開かない2日間という貴重な日を含む連休明けの朝、昨日から着手した「ベートーヴェン全曲演奏会」関連の原稿が脳内では出来ているのに手が動かずという典型的な「お休み明けアホ」状態でまるで進まず、朝からアブラムシにやられた葛飾オフィスの蜜柑の樹の死んだ葉っぱを処理するという単純作業を行い、さても再開するかと座ったもののやっぱりバカ。で、まずはウォーミングアップにアホで無内容な電子壁新聞をばちょろっと記すベーか。

ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏大国ニッポンちゃちゃちゃは、今更言うまでも無く、交響曲全曲サイクル天国でもあって、この連休にも某前田様の古都でおフランス輸入から自前に乗り換えた音楽祭でもやられていたみたい。毎年最低でも1度はなんのかんのベートーヴェンの交響曲サイクルがあるって、スゴいなぁ。

こんな状況はニッポン列島の特殊例であって、世界のどこでも、「ベートーヴェンの交響曲全曲演奏」なんてのはその街にとって何年かに一度、ことによると未曾有の大イベントとなるのが本来。…って、己のことを鑑みるに、この前「同一団体演奏家に拠るベートーヴェンの交響曲全曲チクルス」って見物したのは…そー、どーやら2011年光復節の軍事境界線横広場での野外演奏を最終日に開催されたソウルでのバレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン管だったよーな。もう、正に「歴史的なイベント」でんがな。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2011-08-09

さても、本来ならば「ベートーヴェン交響曲チクルス」ってのは、それくらいの扱いがあってしかるべきものなのでありましょー。んで、こんなサイクルがあります、というご案内。こちら。
https://www.hk.artsfestival.org/en/programmes/dudamel-and-sbsov-beethoven-cycle/

ご覧のように、来る11月頭から、香港でデュダメル指揮シモン・ボリバル管がベートーヴェンの交響曲全曲演奏を行います。毎年春節明けにでかい芸術祭を主催する香港アーツ・フェスティバルが主催で、まあねぇ、ホントは2月か3月にやって欲しかったんだろうけど、相手があることだからこういう特別演奏会になったんでしょうねぇ。

興味深いのは、なんせオケがオケだけに、単にアーツセンターで演奏します、ってんじゃなくて、コミュニティ・アウトリーチなんぞをしっかりやりますよ、と宣言していること。これが本来の在り方なんだろーなぁ、と思うのは、時代がそうなってきたということなんでしょーねぇ。

会場は、5番以降はスターフェリー横のアーツセンターだけど、4番までは赤い地下鉄の終点荃灣のタウンホール、去る1月に室内楽音楽祭が出張ったところでんな。へええ、って感じですねぇ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23
主催者がホールで、記念年などにやるケースが多々見られる日本の「〇〇全曲演奏会」では珍しいかもしれないけど、都市全体にサイクル会場を点在させるというのはありだなぁ。ソウルも、最終回だけ板門店で、他はアーツセンターだったし。金沢なんかもそうすれば良かったのに。市町村合併で市内に「音楽ホール」やら「多目的ホール」が3つも4つもあって困ってる自治体は日本全土にいっぱいあるんだから、このやり方、どっか真似してくれて良いと思うんだけどね。

てなわけで、流石に切符の動きが遅い香港とは言え(とはいえ、最近は売れるものはあっと言う間に売れちゃう気もするが)、まだサイクルでもあるようなので、ご関心の向きはどーぞ。あたくしめは…どーかなぁ、誰かオケ関係の本職の方がいくべきであろーなー、と思うですけど。

さて、お仕事お仕事。

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八王子も「大」音楽祭開催中 [音楽業界]

昨日は遙々、多摩川越えて多摩丘陵が相模の原へと下りていく外れの北の斜面に開けた新開地、上空の未だ占領下の空に米軍機戦闘機轟音たてて飛び交う南大沢まで行ってまいりました。嗚呼遠かった、と言うべきなんだろーけど、京王線の調布までは若き日に庵を結んでいた多摩県東部なのでさほど遠いとは感じず、正直、なんだか案外近いじゃんかぁ、と思ってしまった。首都圏近郊公共交通インフラ、畏るべし。

当電子壁新聞を立ち読みなさっていらっしゃる皆様の多くは、ことによると有楽町近辺で時間待ちをしながらお読みになってるやもしれぬ今日この頃、あたくしめは有楽町の移動音楽遊園地イベント、本日昼のプソフォスQのアダムス眺めて、マスオさんご家族旅行に参ります都合もあり、参加はそれだけ。来年以降はともかく、大いに盛りあがっているならそれはそれで結構なことでございます。

そもそも4、5月の連休は、日本列島各地でお祭りだらけになる時期でして、昨日出向いた南大沢からさらすてづくりさらさらの多摩川越えた向こう、いにしえの東蛮族統治の古都府中では昨今は観光度がヒートアップしているらしい祭りがあるし、手近なところではやくぺん先生の佃の縦長屋から見下ろす大川対岸の鉄砲洲稲荷さんも例大祭。
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所謂東銀座から大川までのこっちには、「銀座」って滅茶苦茶価値ありそーな半被羽織った睦の皆さんが「いなせ」という使えない形容詞を使うしかない格好して蜷局巻いてらっしゃったり。小生が有楽町の移動音楽遊園地を初年度のオープニングのところを内部から眺めただけで以降はどうにも関心を持てないでいるのは、どうもこの新興祭りが鉄砲洲稲荷さんにちゃんと礼儀を通してないみたいなのが理由であります。ルネマル、いちどくらい菓子折もって「新しい祭り隣で同時期にやりますんで、迷惑かけますが宜しく」と鉄砲洲稲荷に挨拶に来なさい、それがニホンの礼儀というもんじゃ!←これ、マジで言ってます。

もとい。で、昨日出向いた南大沢も、なんとまぁ、音楽祭の一部でありました。ほれ。
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あなた、「音楽祭」じゃなくて、「大音楽祭」ですぞっ!なんだかスゴいぞっ!へえ、公式ページがFacebookなんだなぁ。
https://www.facebook.com/八王子音楽祭-943648175704162/
なんせ南大沢が八王子市であると昨日まで知らなかったおバカで情けないやくぺん先生、この音楽祭についてどうこう論じることなど出来ないし、その気もないでありまするが、ともかく、行政さんが堂々と「大音楽祭」と謳う以上、大きいんでありましょう。記者会見的には予算規模ということだが、それは知らぬ判らぬ。ただ、明らかに期間と地域は大きいですね。南大沢文化会館のこの公演に行ったのだが
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脇に積み上げられた公式案内では会場マップだけで4ページ。公演スケジュールが堂々の6ページという膨大なもの。なんと公演数に至っては総計102!これはもう、「大」音楽祭でんがなぁ。なんせ、八王子市は東京都よりも歴史がある自治体
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今年は百年祭で、秋の横田基地オープンハウスには我が軍の広報飛行隊蒼き衝撃軍団による八王子上空祝賀飛行も予定されているそうでありまするし。なんなんねん。
http://www.mod.go.jp/asdf/pr_report/blueimpulse/schedule/

ってもさ、失礼ながら、当電子壁新聞を立ち読みなさっている善男善女の皆様の殆どが、「へぇえ?」とぽかんとした顔をなさってるでしょうねぇ。「ラ・フォル・ジュルネなら日本各地の情報を有し、金沢の音楽祭もチェック済。昨日の池袋のマンハッタンっぽい現代音楽際だってちゃんと主演者を確認している俺が、なんでこんなイベントを知らないのだぁ」と訝しく思ってらっしゃるんじゃないかしら。

まあ、ラインナップをご覧になればお判りのように、一種の「御堂筋クラシック」でしたっけ、あれみたいなもんで、会場はもうありとあらゆる場所。それになにより、所謂「クラシック」というジャンルは、音楽祭のクライマックスたる八王子駅隣の大ホールでの《アイーダ》公演という、もー絵に描いたような「音楽祭」出し物があるといえ、それがメインとは言えない。最大の謎は、あれほどお金と手間と時間をかけてやっていた「八王子カサド・コンクール」が「大音楽祭」の大事な要素とされていないことだけど…まあ、それは大人の事情があるのであろーとそっと胸に納めるしかないのかしら。

とにもかくにも、まだまだ続く日本列島の連休、恐らくは列島各地でこういう「音楽祭」はいっぱいあるのでしょう。ぐぁんばれ、音楽祭!ぐぁんばれ、スタッフの皆様っ!

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北京オペラ…っても京劇じゃなくて [音楽業界]

昨日、このたび御奉職なさっている大学のサバティカル・イヤーで台北に長期滞在することになった方とパソコン画面上で話をしていて、いろいろ話題になったこと。忘れないように記しておきます。

上海Qから、「北京のフェスティバルで弾くよ」という連絡があり、まあ東京同様にいつでもフェスティバルをやってる超巨大都市だからねぇ、と思っていろいろ案内を眺めたら、大気汚染の心配とか空港のめちゃ混み具合とかで暫く足を運んでいなかったこの街、相変わらずなんのかんのやってるようであります。当たり前だけどね。これが「北京五月祭」オープンガラのご案内。
http://en.chncpa.org/NEWS/wzxw/201704/t20170429_170063.shtml
ホンガン氏はこのあと直接大阪入りして弦楽四重奏コンクールの審査になるのかな。いつニュージャージーのお宅に帰れるんだろーか、お疲れ様です。

んで、ついでにあれこれ眺めたら、今時情報さえ出せば世界のどこにでもお出かけになるオペラ好きの皆様にご関心がありそうなネタがいくつかありましたので、以下、列挙しますです。あたしゃ、無論、どれも行きません、ってか、行けません。

あの天安門前広場横、中国の国会議事堂の隣に「インデペンデンス・デイ」のUFOが降りてきたのかと思ってしまうような万里の長城に匹敵するアホな巨大建築物たる北京国家大劇院は、単なるヴェニュじゃなくて、ちゃんと主催者やプロダクション機能も備えた組織でもあります。中国で唯一の、外国人メンバーも入れた実質上の座付きオケたるNCPAオケを新設し、主催オペラバレエ公演のピットに入っているくらいだから、初台よりも余程本気の「オペラハウス」でもあるわけですよ。

で、そこが年間にそれなりの数のプロダクションを出している。「国家大劇院オペラ・フェスティバル」なんてもんが初夏に向けてあるようで、主要演目はこちら。
http://en.chncpa.org/search/?sw=NCPA%20Opera%20Festival%202017
ゲルギエフ御大のところとの共同制作という《ルチア》は終わっちゃったけど、やっぱり、《仮面舞踏会》と《薔薇の騎士》がメインですわなぁ。ご関心の向きは勝手にサイトを開けていただければキャストスタッフなど判るから、ご覧あれ。初台でお馴染みの演出家さんも出ているわけで、その意味では、安心のプロダクションとも言えるでありましょうぞ。ドイツのローカル・ハウスみたいな「読み替え」はやらなさそうだから、先頃の韓国国立オペラよりも余程初台に近いテイストのものが出て来るでしょうし。

なお、北京ではもうひとつ、日本のオペラ好きが関心がありそうな出し物として、こんなんもあります。
http://theatrebeijing.com/whats_on/drama/2017/the_magic_flute.html
これ、ベルリン・コミーシュ・オパーの所謂引っ越し公演なのか、それともプロダクションを持ってきて北京で制作するのか、なんだかこの案内だけでは良く判らないけど、ベルリンはちょっと遠いけど北京なら、という方はいらっしゃるんじゃないかしら。ただ、7月下旬の北京って、アホみたいに暑いです。オリンピックやった頃でしょ。東京の8月くらいの感じですから、そこは覚悟するよーに。

てなわけで、いろんな「北京オペラ」のお話でした。ただ、一昔二昔前みたいに、「北京のオペラは滅茶苦茶安いぞ」ってのはまるでないんだわなぁ。富裕層も日本の10倍いるということなのかしら。

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春恒例韓国地方都市オーケストラ祭りの全容! [音楽業界]

これ、去る4月23日朝に金浦空港のラウンジで書き始め、途中まで記して、都市名の日本語表記変換なんぞが余りにもめんどーなんで放り出っぱなしにしてたお話。連休の谷間、作文作業が半端な凪状態になってしまったので、せっせと最後までデータ記入します。

これまでも当電子壁新聞では「すみだトリフォニーの地方都市オーケストラ・フェスティバルはいつの間にか無くなってしまったが、お隣ソウルではアーツセンター主催で遙かに規模のデカイ、恐らくはオーケストラ音楽祭としては世界最大規模の韓国地方都市オーケストラ・フェスティバルをやってます」という情報はほぼ毎年垂れ流していたけど、案外と4月にソウルにいくことがなく、やくぺん先生がアーツセンターのでっかいコンサートホール客席に座って体験したことはありませんでした。

今年は、大阪から東京湾岸に戻ってくる途中にチョロッとソウルに立ち寄り、今話題のインな演出家さんの舞台を眺めたついでに、せっかくこの時期ならばということで宿願の「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」をちょっとだけでも見物して参ったでありまする。これが韓国名物、ロビーにでっかく出されてその前で記念撮影をするための大看板。
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関空から金浦に着いた日は目的の《ボリス》で、その週末23日日曜日が4月1日からほぼ連日行われた公演の最終日なので、そのひとつまえの公演を切符があれば覗いてやるか、という程度に考えていた。そしたら、《ボリス》があんまりにも面白いもので、午後3時から6時過ぎまでかかる別キャストの土曜日公演をオペラハウスで見物し、隣のコンサートホールに走り込んで、午後5時から始まる韓国ローカルオケの演奏会の後半だけを眺めてやろうではないか、ということになった。

なんせ、土曜日の昼前にアーツセンター正面右手のカウンターでチケット買おうとしたら、幸か不幸かオケフェス公演は最安値1000₩のチケットの3階最後列隅っこと、滑り込むには最適な席も確保出来たもんで。これがチケット買った直後、土曜日午後のアーツセンター中庭。日本では「朝鮮半島一触即発」って煽り情報がメディアに流れるけど、ソウルはいつものノンビリした週末。なんせ、日本と同じ頃に連休もあるんだしさ。右手がオペラハウスで、オーケストラ祭の垂れ幕が下がる広場を抜けて左手がコンサートホール。ここを夕方に、いい歳こいてダッシュで走ったわけであります…ふうう……
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結果として、《ボリス》からショスタコ5番という、ファンの方ならば人生で一度はやってみたい極めて意義深いハシゴとなったわけでありまして、これはこれでひじょーに面白かったです。なんせ、あの世に名高い偽書「ショスタコーヴィチの証言」で、ショスタコさんが「ショスタコの5番はムラヴィンスキーはなーんにも判っていなかった、あの終楽章は《ボリス》の冒頭2場での強制的な皇帝讃歌と同じなのだ」という、それまでの《革命》なる副題を反故にしてしまうような発言をし、それが事実であろーがなかろーが、その後のショスタコ5番解釈をすっかり変えてしまったのは、皆様よーくご存知の通り。確かにこうしてライブで続けて聴くというありそうでない体験をすると、なるほどねぇ、と思わざるを得ません。「ショスタコが《ボリス》校訂をやってたのって、第5交響曲の次の仕事だかくらいだっけ、それとも一緒くらいだっけ…」なーんてずーっと客席で思っていたりしてさ。

やくぺん先生が後半だけ聴けたのは、公州市忠南フィルハーモニックなる団体。今年のラインナップの中でも、とりわけローカルっぽいオケでんな。大田の西、ソウルから150キロくらい、ハイウェイで2時間弱くらいかな。大ソウル圏のギリギリというか、出て直ぐというか、東京圏なら大田が宇都宮とかの感じだろうから、「栃木県栃木フィルハーモニック」ってくらいの感じの団体でしょうかねぇ。まあ、ソウルから釜山までハイウェイぶっとばして4時間という規模のお国なんだけどさ。

だから、当然、ソウルで土曜日5時開演ということになれば、オケは地元の練習場に朝に集まって、バスでやってきて、終演後はそのまま戻るんでしょう。昼前、ロビーでウロウロしていたら、オケマンさんが到着し、なんとロビーからオーディトリアムに入っていきましたです。
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ケルンのフィルハーモニーでブーレーズ指揮コンセルトヘボウ管を聴いたときに、終演後、団員の知り合いに挨拶しよう、場合によっては飯でも、と楽屋で待ってたら、なんとマーラーの7番が終わるやみんな直ぐにゾロゾロ出て来てそのままバスでアムステルダムまで帰ってしまった。このフェスティバル、チェジュ島のオケ以外は、みんなあんな感じのやり方が出来る。宿泊費がかからないのはデカイですね、主催者としては。

で、前半のブラームスのドッペルなんかは捨てた公州のオケですけど、とにもかくにも哀れボリスがお亡くなりになってそれっとばかりに駆け込んだら、直ぐに後半のショスタコが始まった。オケマンがステージに戻ってくるともう大拍手が巻き起こり、ブラボーまで飛んでます。なんだこりゃ、って不思議なノリ。

どうやら、郷土愛熱烈なお国らしく、満席とは言えぬも広い客席を埋めたそれなりのお客さんのかなりが、ソウルの音楽好きというよりも公州市の出身者か、ことによると土曜の朝からソウルまでやって来ておらがオーケストラを応援しようという地元の方みたい。無論、アーツセンター主催なんで、学生券は半額とかいろいろ優遇があるので、やくぺん先生が座った日本円で1000円のNHKホール3階いちばん後ろ辺りみたいな貧乏人席には、明らかにお金のない学生さんの音楽ファンらしき連中もそれなりにいて、一緒になって指揮しそうになってる微笑ましい姿とかも。

まあ、確かに、3週間でオケ20団体聴けて毎日500円でも総計1万円也なら、オケ好き貧乏学生なら毎日通っちゃうでしょ。すごおおおく勉強になるだろーなー。なんで日本のオケやってる評論家さんがこの時期にソウルに泊まり込まないか、毎年のことながら、不思議この上ないです。もう爺だし、オケはメインのご商売じゃないからやらんものの、俺が若かったら毎年来るぞ、と思うけどねぇ。

秋にオケ連さんが実質やってる日本国文化庁主催の唯一のオーケストラ・コンサート「アジア・オーケストラ・ウィーク」でもまだ登場していない公州市のオケ、コンマスとチェロのひとり以外は弦楽器みんな若い女性という一昔の日本みたいというか
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なんせ男は若い頃に兵役で徴用されちゃうお国柄、今の韓国の典型的な姿をがっつり舞台上で繰り広げるその実力は…うううん、地方オケです。日本の一昔前の「地方オケ」でんな。今世紀になって圧倒的に地力を付けてきて、今や「地方オケ」という言葉の意味は20世紀末までとはまるで違うものになってしまったニッポン国とはちょっと違う。この「地方オケ」感が、ある意味できっちりした「首都と地方のヒェーラルキー」になってるのならば、それはそれであり。その辺り、20団体全部聴けば一発で判るんだろうけどねぇ。
ま、技術的にはともかく会場は大盛り上がりで、なんだかしらないピアノがパラパラと弾く韓流ドラマのテーマソングみたいなアンコール曲は、ショスタコ以上の盛り上がりでありましたとさ。

せっかくだから、以下、「韓国地方都市オーケストラ・フェスティバル」参加団体のデータを記しておきましょう。恐らくは日本語で紹介されるのははじめてじゃないかな。残念ながらこれだけSNS上にオケ好きがいても、流石にこのフェスティバル全部フォローしている物好きはいらっしゃらないようで、纏まって紹介してるの記事は過去に遡っても見当たらない。不思議だなぁ、参加数ではザルツブルク音楽祭も超える世界最大のオーケストラ音楽祭なのにねぇ。

※※※※

会場は全てソウル・アーツセンター・コンサートホール。正式名称は「2017ソウル・アーツセンター・クラシック・フェスティバル」だそーな。ちなみに指揮者やソリストさんの読み方は判らないので、アルファベット表記をまんま記します。日本でも知られた名前がチラホラありますな。オケの名称は、基本直訳で、日本での慣例表記がある団体はそれに従います。コリア・シンフォニーって、「韓国響」って書かないよねぇ…どーなんだろーか。ソウル三大オケのひとつでこの調子だからなぁ。それにしても一昔前はチャイコフスキーだらけだったけど、随分と趣味も変わってきましたねぇ。スラブもの大好きなのは相変わらずだけど。生誕百年のイサン・ユンはソウル・フィルだけというのも、この作曲家の微妙な立ち位置の反映なのかしら。それにしてもマラ七やる演奏会、滅茶苦茶長くないかぃ。

◆4月1日:コリア・シンフォニー(ソウル) Hun-Joung Lim指揮 ヴァーグナー《トリスタンとイゾルデ》「前奏曲と愛の死」、リスト《死の舞踏》(Dasol Kim独奏)、R.シュトラウス《ツァラトゥストラは斯く語りき》

◆4月2日:春川フィル Jong Jin Lee指揮 ベートーヴェン《レオノーレ》第3番、モーツァルト オーボエ協奏曲(Yun-Jung Lee独奏)、リムスキー=コルサコフ《シェーラザード》

◆4月4日:釜山フィル マニュエル・ロペス=ゴメス指揮 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(Choon-Soo Chung独奏)、チャイコフスキー《マンフレッド》交響曲

◆4月5日:水原フィル Daejin Kim指揮 グリーグ《過ぎた春》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Chi Ho Han独奏)、マーラー交響曲第7番《夜の歌》

◆4月6日:大田フィル ジェイムス・ジャッド指揮 Sung-hwan Choi《アリラン幻想曲》、ショパン ピアノ協奏曲第1番(Won Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月7日:光州響 Hong-Je Kim指揮 サン=サーンス《サムソンとデリラ》より「バッカナール」、チェロ協奏曲第1番(Yeon Sun Joo独奏)、ベルリオーズ《幻想交響曲》

◆4月8日:KBS響(ソウル) ヨエル・レヴィ指揮 ブラームス ヴァイオリン協奏曲(ボンソリ・キム独奏)、交響曲第4番

◆4月9日:仁川フィル Chi-Yong Chung指揮 グリエール ホルン協奏曲(Hongpark Kim独奏)、ブルックナー交響曲第7番

◆4月11日:軍浦プライム・フィル Yun-Sung Jang指揮 リスト《前奏曲》、ドニゼッティ《ルチア》より、ヴァーグナー《タンホイザー》より「夕星の歌」、ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》より「私は町のなんでも屋」(Gihoon Kimバリトン)、カセッラ交響曲第2番(韓国初演)

◆4月12日:江南響(ソウル) Sung Kisun指揮 R.シュトラウス《ドン・ファン》、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番(Julius-Jeongwon Kim独奏)、ルトスワフスキ 管弦楽のための協奏曲

◆4月13日:大邱響 ジュリアン・コヴァトチェフ指揮 R.シュトラウス《死と変容》、4つの最後の歌(Myung Joo Leeソプラノ)、シューマン交響曲第4番

◆4月14日:原州フィル Kwang-Hyun Kim指揮 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番(Yekwon Sunwoo独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月15日:京畿フィル Shiyeon Sung指揮 ドヴォルザーク チェロ協奏曲(ソン・ミン・カン独奏)、ブラームス交響曲第4番

◆4月16日:特別ゲスト参加公演 香港フィル 18日大阪シンフォニー・ホール公演と同一プロ

◆4月18日:全州響 Hee-Chuho Choi指揮 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(Kyu-Yeon Kim独奏)、ラフマニノフ交響曲第2番

◆4月19日:昌原フィル Tae Young Park指揮 R.シュトラウス《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》、ロンバーグ フルート協奏曲(Soyoung Lee独奏)、ストラヴィンスキー《春の祭典》

◆4月20日:ソウル・フィル ティエリ-・フィッシャー指揮 イサン・ユン《大管弦楽の為の序曲》、ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲(クリステル・リー独奏)、チャイコフスキー交響曲第5番

◆4月21日:済州フィル In-Hyeok Jeong指揮 Choi Jeong-hun大管弦楽のための《Darangshi》(世界初演)、クーセヴィツキー コントラバス協奏曲(Sung Minje独奏)、マーラー交響曲第1番

◆4月22日:公州市忠南フィル Seung-up Yoon指揮 ラヴェル《ラ・ヴァルス》、ブラームス二重協奏曲(Hyuna Kim、Woo Jin Kim独奏)、ショスタコーヴィチ交響曲第5番

◆4月23日:富川フィル Young Min Park指揮 ヴァーグナー《ヴァルキューレ》より「ヴァルキューレの騎行」、プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番(Minson Sohn独奏)、R.シュトラウス《死と変容》、《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》

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300席規模のホールが21世紀のスタンダードなのか [音楽業界]

数日前に書きかけてほーり投げていたもんをアップしますです。ネタは、ええと、去る火曜日の話です。

ひところ葛飾厄偏舎で練習をしていた、やくぺん先生的には文字通りの「レジデント・クァルテット」のクァルテット・セレシアが、お久しぶりにそれなりに大きな会場で演奏会を行うということで、これは聞かぬわけにはいくまいと、手土産にそろそろ季節もオシマイの苺大福など抱えて参上いたしましたです。場所は、「台東区生涯学習センターミレニアムホール」なる場所。

正直、台東区にあること以外はよーわからず、とにもかくにも最寄り駅という地下鉄日比谷線入谷駅の上野寄りの出口を出て、言問通りを真っ正面に聳える天樹方向に延々と歩く。思えばこの道、根津に庵を結んでいた頃にNJPが文化会館からすみだトリフォニーへと本拠地を移転し、それまでは藝大の間を抜けて上野公園口まで歩くだけで済んだのに、都バスで根津駅前から延々と寛永寺裏と谷中霊園の間を抜けてJR跨いで、浅草かすめ、天樹なんてもんが聳えるなんて思ってもいなかった鄙びた押上で曲がって錦糸町まで向かっていた途中。ってか、この辺りをふらつくなんて、あの頃以来じゃあないかしら。途中で不安になって、和菓子屋さんに入って苺大福買って、「ミレニアムホールって、こっちで良いんですよね?」と訊ねると、2つ先の信号を右に曲がってバーミヤンがあるからそこ、ってお応え。へ、バーミヤン、ですかぁ…

ったら、この区立総合文化施設、確かに目印としては「バーミヤン」の看板がいちばん判りやすい。というのも、河童橋食器問屋街の最北他となる通りに面した施設の2階にしっかりと格安中華屋さんが入っていて、一見するととてつもなく巨大で立派なバーミヤンにすら見えるわけであります。あ、外観の写真を撮らなかったなぁ。ま、こちらの建築事務所さんが落成直後に撮影したらしい最もカッコイイ外観の写真をご覧あれ。
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で、このステキな写真左側2階のガラス部分が「バーミヤン」になっていて、今は前にしっかり看板が出ております。んで、その奥が、ミレニアムホールなる300席の公共ホールになっている。施設全体の案内はこちら。
http://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/gakushu/syougaigakusyuucente/

昨今の公共文化施設、図書館から集会場からホールからなにからなにまで一緒にした巨大コミセンみたいなもんをドカンと作る、という傾向というか流行がある。去年、キチの街ヤマトに誕生した「大和シリウス」もそんなもんでありましたっけ。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
で、この台東区の会場、2002年に出来ていて、完成当時の永田音響さんのレポートはこちら。これで「音楽ホール」としてどんなところか、よーくお判りでしょ。
http://www.nagata.co.jp/news/news0201.htm

21世紀に入ってオープンした300席の音楽用ホールといえば、2003年のハクジュホールを誰でもが思い出すでしょうし、少し遅れて2006年に名古屋にオープンし現在も日本のクラシック音楽興行シーンの颱風の目のひとつとして君臨している300席ちょっとの宗次ホールがある。めんどーな議論は省略するけど、ぶっちゃけ、21世紀に入って規模が縮小の傾向が隠せない「クラシック音楽専用ホール」の成功例は、どうやら公共民間を問わずに300席ということになってるのかしら。先頃オープンして話題の新浦安も、この規模だしさ。札幌のふきのとうホールはもうちょっと小さいけど、街の規模からすればまあ、同じくらいということでしょ。

おっと、話が先に行ってしまった。要は、恥ずかしながらはじめて去る火曜日に足を踏み入れた台東ミレニアムホール、とっても良い空間なんですわ。300席の公共ホールとは思えない、所謂シューボックスで天上の高い、タップリした空間。昨今大流行の「コンサートスペース」というか、「マイクロホール」というか、個人が自分の敷地に建てちゃう100席以下のホールでは不可能な、空間の響きそのものをきっちり味わえる。同じ規模ながら、天上の低さが如何ともし難いサントリー・ブルーローズの関係者さんなど、「いやぁ、知らなかったけど、スゴく良いホールがありますねぇ」と感心なさってましたし、今や日本のクァルテットの聖地となった「良すぎる公共ホール」サルビアホールでシリーズを行うプロデューサー氏も、「ここ、良いじゃない」と仰ってました。

確かに、この空間、クァルテット・セレシアとすれば普段活動のベースとなってるサロンやコンサートスペースとは違って、タップリした容量の「ホール」での弾き方が要求されるという難しさがあったことは否めません。だけど、やっぱり最低限でもこの規模の空間でやってくれないと、正直、団体としてのキャラは判りにくいところがある。その意味で、とても有り難い経験をさせていただきましたであります。ほれ、綺麗なステージでしょ。
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なんでこのホールが使われないのか、自分が存在を知らなかったのか、関係者の皆さんが口を揃えて不思議がっておりましたが、ひとつの理由は、使用料金がもの凄く安くて会場稼働率が極めて高いことにあろそうな。公共ホールであることの良し悪し、というわけにもいかないけど、やっぱりそれなりの事情はあるわけでんな。

もうひとつ、ホールとして敢えて苦言を申せば、ロビーにも裏にも、やたらと殺風景な張り紙が出ていること。この調子。
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とか、こんなとか
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どうも、管理する方々が絵に描いたようなお役所仕事をなさっているようで、サービス業というよりも「公共施設の管理」に徹していらっしゃるのがありあり。実際、使い勝手など、極めて融通が利かない部分があるとの声も。ま、安いんだから仕方ない、といえばそれまでなんだけどねぇ。

是非とも聴いてみたいという方は、都響の副首席クラスを並べた弦楽四重奏団の演奏会がありますので、そちらをどうぞ。
https://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3094&year=2017&month=5

「時代は小型化、コンパクト化、ミニチュア化」…なーんて広告代理店風の言い方をする気はないけどさぁ。

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ロシアは煙のなかに… [音楽業界]

ソウル・アーツセンターのオペラハウスで、韓国国立オペラの新演出《ボリス・ゴドゥノフ》を見物して参りました。
http://www.nationalopera.org/ENG/Pages/Perf/Detail/Detail.aspx?idPerf=500390&genreid=88&year=2016
どっかでやった舞台をまるごと買って来て「新演出」で御座い、と仰る初台のなんちゃって新演出とは違って、演出家がちゃんと最初から全部作る、ホントに、ってか、まともな「新演出」でありまする。一説に拠れば、東アジア地域での引っ越し公演ではないこの作品の「新演出」は、なんとまあ岡村&小澤&二期会の日本語での上演以来とか。へええええ、まあ、東京ではゲルギエフ様が自分の手兵連れていくつものヴァージョンでやってるので、なんかいつもやってるみたいな気がしていたけどなぁ。

考えてみれば、民衆のパワーで就任の経緯がアヤシいと噂される皇帝を追いやってしまう、という次の大統領選挙真っ最中のソウルで上演するには余りにもぴったりな作品なんだけど、今回の上演はクリュイタンスやカラヤンでお馴染みのリムスキー=コルサコフ版がベースだったようで、改定初演版の革命シーンで終わってこの先の政治混乱を予見させる、というもんではありませんでした。無論、こんな政治状況になる遙か昔から決まってた上演ですから、たまたま、ってことですけど、こういうたまたまがとっても意味ありげに見えるんですよねぇ。

ま、それはそれ。で、今回、日本政府や一部マスメディア、ネット上のアベちゃん勝手連サポーターさんなどがまるで明日にも戦争だ、という空気醸し出し毎度ながらの失政隠し、滅茶苦茶法案審議目眩ましをする真っ最中に関空からソウルまで1時間ちょっと飛んで来た最大の理由は、演出でありまする。無論、アジア最強の韓国オペラ合唱パワー、世界を席巻する男声歌手人の層の厚さ、ゲルギエフやふたりのペトレンコに続くロシアが生んだ新しいスターオペラ指揮者コチャノフスキー、などなど、いろいろな理由はあるわけだが、やっぱり演出のステファノ・ポーダをきっちり眺める最高のチャンスだということ。カーテンコールで、指揮者とボリスの間にいる長髪のにーちゃんです。
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このイタリア人の演出家さん、所謂、ドイツの小さな劇場で「オペルンヴェルト」のすれっからしというか、ちょっと斜に構えすぎたというか、余りにもマニアックというか、まあとてもじゃないが日本のオペラ批評では考えられないような厚いバックグラウンドと豊富な知識と溢れる教養を前提とした方々がなんのかんの喜んだり貶したりするところで育ってきてる演出家とはちょっと違う。なにせ、今回のプロダクションでも、「演出、装置、衣装、照明、振り付け」となってる。つまり、舞台上で起きることをほぼ全てひとりで仕切っていて、指揮したり歌ったり踊ったりしてないだけ、って方。今時、こういう総合的な仕事を出来る若手演出家って、どれくらいいるのかしら。基本的に「舞台の美しさ」から始まる美術から出て来たラテン系というと、ポネルみたいな在り方のモダン版と思ってもそう間違いないかも。ともかく、頭でっかちで自意識過剰(だけど、議論する側からすればもう猛烈に議論しやすくネタ満載で楽しい)、というのではありません。

今回の《ボリス》、なによりも印象的なのは、黒を基調としたスタイリッシュな衣装(よく眺めると、それぞれの政治的な立ち位置を反映した舞台装置と関連した衣装になってます)で重苦しく暗い装置のロシアと、白を基調とし奇妙なほど明るいポーランドとの対比。とりわけ、ロシアが舞台となる間はずーっと漂っている煙が、装置の一部となっている。このオペラ劇場の上下左右に動く巨大な舞台をしっかり利用し、いくつもの巨大な箱が上がったり降りたり、上手下手に水平移動したりする中でステージが展開するのだけど、ロシアのシーンは常にうっすらと、あるいははっきりと煙ってます。その煙にいろいろな照明が当てられることで、登場人物のモノローグやら対話の動きの中で舞台全体が赤くなったり青くなったり、或いは白くなったりする。

そんな意図が極めてはっきりしているのは、修道院の青年が偽ドミトリーになる決意をする場面。歴史書記家さんが秘密を語るのを聞く間、若い修道士は上から煙を吹き出しながら降りてきたデッカい球体を引っ張って前後に動かし、部屋を煙で満ちあふれさせていく。ロシアの混迷がどんどん深まっていくのを象徴するような動き。なるほどねぇ、と思わされるだけではなく、視覚的にもとっても綺麗なんですわ。ともかく、煙に光を当てるのがとっても巧みな舞台です。

たた、ひとつ問題があって、この演出、煙ったいんです。比喩ではなく、文字通り、煙ったい。舞台の奥の方や袖、それどころか客席でも、咳をする人が絶えずいる、ってことになる。なんせ、幕間に明るくなった客席を眺めると、なんとなく煙ってるんだもんさ。ほれ。
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ま、そんなこんな、ポロネーズのシーンを含めた舞踏の振り付け(太極拳みたいなモダン舞踏の動き)ともかも含め、演出家の意図が隅々まできっちり透徹した舞台で、「演出家がしっかり仕事をするとはどういうことか」を眺めたい方は必見です。どこかとの共同制作でもないようだし、映像も収録していた感じはないので、これだけのプロダクションがあと週末2回でお釈迦になってしまうなんて、ホントに勿体ない。演出家がその場にいないと維持再現は難しそうな舞台だし。

さて、明日明後日、午後3時からソウル・アーツセンターで上演がありますので、お暇な方もそうで無い方も、是非ともソウルまでいらっしゃいな。失礼ながら、某ドイツの著名劇場日本公演に500ユーロ払うより、遙かに意味あります。これホント。

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「キチ」のあるホール [音楽業界]

先週末と今日と、「キチのあるホール」に座っておりました。

去る土曜日は、沖縄県浦添市のてだこホール。この地図をご覧あれ。
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浦添市といえば、本土でもいくらなんでも話題になってる、アメリカ海兵隊が海外に分遣隊として出している唯一のオスプレイの本拠地たる普天間基地のある宜野湾市に隣接してます。てだこホールがある浦添市のスポーツ芸術総合文化施設は、地図から判るように沖縄南部の丘陵地の上に開かれた普天間基地の隣、谷を越えてもうひとつ南の丘に広がってる。基地滑走路滑走路南西端の真下4キロ弱くらいで、ホールがあって、運動施設があって、その向こうの丘の頂上の浦添大公園というところは普天間基地を一望出来るスポットとして、普天間でなにか動きがあるとマスメディアが詰めかける場所となってる。
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この写真は、文化スポーツ施設複合公園の横を通って、那覇から普天間方面に向かう幹線国道の跨線橋の上から、普天間方面を眺めたもの。丘の上の四阿のようなところが、普天間基地覗きスポットのようであります。なんせ、沖縄戦では大激戦地となった辺りですから。

浦添市には西の海岸沿い、那覇から嘉手納を通って名護に向かう幹線道路がもうひとつ通っていて、その海側には海兵隊のキャッンプキンザーが広がっていて、実質上普天間基地の海上からの補給基地となっているわけで、ここもやっぱり基地の街。当然ながら、日本国政府は我らが税金をたっぷりと浦添市には落としていることでありましょう。その辺り、地元の方はよーくご存知でありましょうが、めんどーなんでここではいろいろ記しません。ともかく、どんな理由であれ、独立棟の大ホールと小ホール、管理施設を併設した冷房完備の市民集会室、広大な中庭に面したダンス演劇練習室、などがいくつも併設された、浦添カルチャーパークというもの凄く立派な公共施設が存在している。
http://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2014110102566/
小ホールに向けて駐車場から降りていくところは、シーサーたちが守ってます。
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世間は北朝鮮がどうだなんだ、シリアへのミサイル攻撃だと大騒ぎだったけど、先月から日本海で韓国軍との合同演習を行っていた海兵隊部隊を乗せた強襲揚陸艦(所謂「ヘリ空母」でんな)「善人ディック」丸は前日にミサゴ君含む全ての部隊をキャンプキンザーと普天間に下ろし、普天間は訓練が終わって完全にお休み状態で全く静かなもの。上空には、8キロくらい北にある嘉手納のP-3やら空軍特殊部隊のMC-130がノンビリと舞っているくらい。
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下の写真、C-130が写ってるのも判らないでしょ。この数日後、アフガニスタンで米軍が世界最大の通常爆弾をMC-130から投下したとの報道がありましたが、なんだか嘉手納のこの部隊が使われたような気がするなぁ。
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通常の平日なら、普天間のシースターリオンやら最新型コブラ、はたまたミサゴ君が散々に頭の上を通過しているだろうけど、この日は練習室でミュージカルのリハーサルで大声立ててる若い役者さんたちの方が遥かに騒々しかったです。

この状況を眺めて、「へえ、基地のアプローチ真下とはいえ、案外、静かなもんだなぁ」と思っていいものやら、なんとも判らぬ。だけど、こんなスゴい施設がここにあるということそのものが、どういうことなんだろーなーと思わざるを得ないのは致し方ないところでありましたです。


んでもて、沖縄から戻って数日の本日、やくぺん先生が沖縄・韓国取材のテープ起こしをやりながら座っているのは、こんなところ。
大和シリウス.pdf
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大和駅周辺商店街の向こうを降下しているC-130は、311復興特別予算使って我らが海自が中古品で買い込んだ奴じゃなくて、何故か習志野空挺部隊で葛飾でもお馴染みの空自の奴です。アリオスの東を南から進入し、相模原補給所の上辺りでグルッと回って降りてきました。なんの用事で海軍基地に来たのやら。

ここがどこかといえば、沖縄に継ぐ日本で2番目に米軍基地に溢れる神奈川県は大和市に昨年秋にオープンした総合文化施設、大和シリウスの6階市民交流広場野外スペースでありまする。小田急と相鉄が交差する大和駅から、横浜方面に向け相鉄が地下を貫いている道の真上。アメリカ本土以外に展開するアメリカ海軍唯一の航空基地たる厚木基地の滑走路北端、東名大和トンネルとして知られる辺りまで1キロちょっとの辺り。こちらはアプローチ真下ではなく真横なんで、頭の上を直接かすめるのはヘリくらいなのが救いですが。

やくぺん先生的には、佃の縦長屋の横やら上やらを高度300メートルくらいでいつでも我が物顔で飛び回っている空母ロンやらヘリ空母善人ディックの艦載ヘリ海鷹くんの巣(上の地図の厚木基地滑走路右側のエプロンが、海鷹くんの巣です)まで1キロ程の場所、って認識でありまするな。今日はもう明日からのイースター休暇ということで、海鷹くんは横須賀に人を運ぶお仕事をしていたくらいで、訓練で大和シリウス上空をグルングルンまわることはなかったけど、まるで佃縦長屋の勉強部屋で海鷹くんが六本木から銀座、八丁堀を抜けて大川遡り天樹遊覧飛行に向かうのを眺めてるのと同じ気分になってきたぞ。ま、飛んでるのはもっと物騒な、空母ロンの超蜂くんたちなのが違うけどさ。
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いやぁ、「世界でいちばん騒々しい飛行機」と言われるだけのことはある、いかにも艦載機らしく、決して編隊着陸はせず、滑走路上空を通過しブレイクして一機づつ着陸していくのだけど、そんな着陸よりも離陸の騒々しさったらありゃしない。南風で新幹線真上を抜け湘南方面に離陸していくときったら、北に開けたシリウス6階屋上からは姿はまるで見えないのに、街全体がガード下になったみたいな猛烈な爆音っぷり。これじゃあ騒音訴訟も起きるだろーに。

本日、こんな場所にどうしていたかといえば、オープン前に見物させていただいたときには空母ロンが出航中で、超蜂くんたちの爆音がホールにどの程度響くのかが経験できなかったから。朝鮮半島で戦争が起ころうが、巨大地震が来ようが、5月までは原子炉内部掃除も含めた定例大修理中の無敵巨大空母ロン、まるで動く気配もなく、艦載機は厚木の塒に降りて、練習してるわけでありまする。とはいえ、残念ながらホールに座っているときにこの騒音を味わうことは出来ませんでした。可能性があるのは、この日。
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わお、我らがヤマト弦楽四重奏団の人気者が昼間に演奏会をやって下さいます。とはいえ、イースター休暇の真っ最中だから、超蜂くんたちは飛ばないだろーけどなぁ。

大和シリウスったら、なんでこんな立派な、と思うほどのピカピカの図書館、ホール、集会所、練習所など集めた複合文化施設。
http://yamato-bunka.jp/
やくぺん先生が座ってたのは、上のホームページの写真右手のテラスでありまする。地上1階にはこんなものも入り
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盛況でありましたとさ。

「キチ」のあるホール、どこも立派なもんだ、うん。まるで六ヶ所村の巨大文化施設みたいじゃわい。

基地外で 基地は吉だと 叫ぶ阿房

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NJP昼定期はディープな若隠居音楽ファンのためにあるのじゃ! [音楽業界]

本日、新日本フィルハーモニー交響楽団の来シーズン内容発表記者会見が行われましたです。内容は、こちらをご覧あれ。PDFファイルをピラっと開いて下さいませな。
https://www.njp.or.jp/archives/4567

ええ、ご覧になってお判りのように、まあぶっちゃけ、「人口30万から50万人くらいの、自前のオペラ劇場をもっているくらいのドイツ地方都市のオーケストラ定期公演」って感じの演目ですね。基本、小規模ながらもトンデモな演出が次々出るような劇場がちゃんとあるから、演奏会形式オペラとかのイロモノはやりません、あくまでもシンフォニー・コンサートに徹してますよ、うちは、って感じ。

音楽監督の上岡氏が何を喋っているかなんぞは、あちこちのFacebookなどで出席なさっていた同業者さんがいろいろ書いてますから、そっちをご覧あれ。
https://www.facebook.com/yamadaharuo1964?fref=nf&pnref=story
https://www.facebook.com/kyosuke.hasegawa?fref=pb&hc_location=friends_tab&pnref=friends.all
あれ、Facebookって、記事そのものにリンク出来ないのか。ま、スクロールしてみてくださいな。

って、めんどーなことは他人に任せて、敢えて引き籠もり老人やくぺん先生が勝手なことを言えば、来シーズンのNJP定期、とうとうやってくれたなぁ、感が漂いますね。

ええ、昨今、こういう音楽団体のシーズン記者会見などでは、必ず新聞系なんぞの記者さんから「若い聴衆の開拓はどうなっているのですか?」という質問が出ます。そりゃね、ある意味で「この団体の財政状況はどうなってますか?」と並ぶ、どんな新人記者でもやれる定番質問ネタだし、そこでなんか出て来れば良い記事と褒められるようなものが書けるから、ま、それはそれで結構でありましょう。

だけど、ホントは、この裏には、誰も敢えて訊ねない大きな質問がある。「高齢化した聴衆はどうするですか?」ってのがそれ。

今、コンサートに客が来なくなっている、客が高齢化しているからだ、という議論は、全く正しい。で、若い聴衆を集めなければ、という危機感になるわけです。だけど、高齢化して定期演奏会に来られなくなった人達は家で寝てろというのか。それはないでしょ。

てなわけで、21世紀になって、どの主催者も音楽団体も、「私たちは他に先駆けて平日昼のコンサートをやって、沢山の聴衆を集めています」などと誇らしげに仰るようになった。実際、昼間の演奏会は呆れる程増えているし、最近では週末の昼は演奏会が目白押しで重なりまくってたいへん、でも平日夜はこの東京首都圏でもオケやオペラの演奏会がない、なんてことは珍しくなくなっている。

どうしてそうなっているかといえば、話は簡単で、この東京首都圏という世界でも珍妙な、敢えて似たところを探せばソウル首都圏くらいしか似たものがない人々の生き方にある。「都心」と言われる場所が20キロ圏内くらいに分散して存在し(上野、北千住、錦糸町、門前仲町、浅草、銀座…どれも世界の普通の国ならばそれぞれが独自の空港を持つくらいのひとつのシティです)、東京そのものがひとつの都市ではない。そのそれぞれに50キロ圏くらいの居住地域が広がっていて、更にその外に鉄道会社が建設開発した郊外都市が広がっている。

結果として、都心と呼ばれる場所のコンサートホールで夜に演奏会が終わると、かなり多くの人が帰宅が深夜前になったりする可能性がある。これじゃあ、若い頃はともかく、ご隠居になったらとてもじゃないけど出ていくわけにいかない。てなわけで、聴衆高齢化と共に昼間の演奏会がガンガンに増えているわけです。ま、猿にだって判る理由。

ところが、興味深いことに、「昼間のコンサート」になった途端に、主催者の皆さんが「昼間なんだから名曲コンサート」とほぼ自動的に思ってしまう傾向にあるんですな。

夜の演奏会はブルックナーの6番をやるけど昼間の演奏会は同じオケが同じ指揮者でメンデルスゾーンの《スコットランド》をやる、とか、夜の演奏会はリゲティの協奏曲だけど同じソリストが昼間の演奏会ではパガニーニを弾く、とか。ま、なんとなくそんなもんだろう、だって昼間だもん、って思ってしまう。

だけどさぁ、ちっとも「だって昼間だもん」じゃないんねん。平日夜のコンサートに来ていた聴衆は、歳を取ったからといってブルックナーはもう聴きたくないと思ってるわけじゃない。「ああこの指揮者、夜はブルックナーやるのかぁ、昼間はブラームスなのは残念だなぁ」と思ってる、かつて朝比奈一般参賀に率先して加わっていたような爺様だって、いっぱいいるわけですよ。

NJPさんは、この「ルビー」なるどういう意味かよー判らぬ題名を付けた「金曜午後2時&土曜午後2時」というシリーズを、定期3本柱のひとつに立てた。で、その演目たるや、尾高さんがウォルトンの交響曲第1番、上岡監督がレーガーの《ベックリンの音詩》、ジェイムス・ジャッドがロッシーニの《スタバート・マーテル》、カムがしべ2の前にサリネンの序曲、んでもてファレッタねーさんがバーバーの交響曲やってカーニスやって、最後はヤングおばさまがブルックナーの4番で締める。ハイドンやメンデルスゾーン《宗教改革》なんて普通の演目があると思えば、なんと指揮者は鈴木雅明!これって、もう堂々たる「夜の勝負定期」の演目&出演者でんがな。

こららの演目を眺めれば、多摩市の奥地に引っ込んでしまった元ヘビー・コンサートゴーアーさんであれ、水上で畑弄りながら次々と出て来るアーベントロートの新譜をAmazonで購入してるご隠居さんであれ、「金曜の昼なら、錦糸町まで行ってみるか」と思うでしょ。つまりこのラインナップ、関東圏全域のオールドファンに、月に1度、金曜日に東京に出てみましょうよ、と誘ってるわけであります。流石にオケ自身はそうは言っていないものの、実体は誰がみてもそう。

さああ、この実験、どう出るか?オケがホールを本拠地にしている団体じゃないとやれないかもしれないけど、どんなことになるか、他の団体も結果を横目で眺めてるんじゃないかしらね。

さても、この週末には今シーズンのルビー定期がありまして、なんとメイン演目は、ヒナステラのバレエ曲全曲であります!
https://www.njp.or.jp/archives/1041
もちろん、爺初心者のあたくしめも参上させていただきまする。

関東各地に散らばるかつて毎晩上野に通っていた爺様どもよ、月に1度、錦糸町に結集せよっ!

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上野の杜のフェスティバルはホントに桜の頃が良いのか? [音楽業界]

以下、恐らく、非難囂々、現実が見えていない、お前はアホか、と叱られること必至のことを記しますです。

ええ、今、上野は東京文化会館を眺める上野駅公園口と入谷口の上に被さる巨大横断橋というか、駅上広場というか、の隅っこに座り込んでます。
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上野の杜の方がどんなことになってるか、言うまでもないでありましょう。さっきから上空にNNN報道ヘリがグルングルン舞ってます。周囲から漏れ聞こえる言語も、一体、どれだけの数あるやら。

「東京・春・音楽祭」という奴が始まって、最初の頃は神保町の向こうに事務所があって、ホーレンダーやら動かしていたようだけど途中から誰がディレクターか誰なのやら判らぬ状況になり、世界中の売り込みたい弦楽四重奏団やらピアノ三重奏団から「あの音楽祭、誰がディレクターなんだ、教えてくれ」というメールが年柄年中舞い込む有様。そんなこんな、いつの間にか某インターネット系技術会社の会長さんが顔になってるみたいな今日この頃。なんだか「忖度」や「斟酌」をしたくてもなにがなんだかわからん、とっても春の上野の山らしいアモフルっぷりであるなぁ、と思わないでもない。うん。←この発言だけで充分に叱られそうだわぃ…

とにもかくにも、過去に何度も試みられた「東京音楽祭」みたいなやり方、ある程度以上「ああ、ヴェスティバルやってるんだな」ととりわけこのジャンルに関心があるわけでもない人に感じ出せるまでに育ち、1ヶ月という長い時間になんのかんのやってそれなりに格好が付くようになったのは、喜ぶべきことであると言えましょうぞ。

この音楽祭、中身はまた別の話として、最大の売りは「春の桜の時期に上野公園を中心に様々な場所で開催される」ということにあるのでしょう。多くの人々が勝手にそれぞれのことをやってる大都市で開催される「音楽祭」とすれば、これだけのトポロジカルな広がりをどうにか纏めているイベントは、他にない。夏の松本とか札幌とか、都市型音楽祭の成功例は日本でもなくはないが、やっぱりこの上野ほど「特定の場所でやってる」感が際立っている例はないんじゃないかしら。

そこまで全部判って言うのだけど、やっぱり、桜の頃は勘弁して欲しいなぁ…

なんてそんなアホなことを言うか、この音楽祭の存続する根っこを否定するような暴言を吐くかといえば、もう話は簡単。

今日、開演前に、普通に飯食って、普通に座ってるところが、ない!

3時から5時間を越える演奏会形式オペラに座るため、こちとらとすればそれなりに体調を整え、精神も整えておきたい。だけど、いつものように上野西郷さん下の妙にモダンなビルになったとこの地下に入った銀座ライオンにフラフラ向かい、いつものようにランチとランチビール頼み、食い終わってもビール追加したり、ソーセージやら甘いもの頼んだりしてダラダラ2時間くらい時間を過ごし、気分良く出来上がった感じになって、さあああノルン共、束になってやってこい、お前らがグダグダ半時間もなんか叫んでよーが俺はへーきだぞ、って坂を登っていこうにも…そんなこと出来んねん。

なんせ、銀座ライオンさん、今日、ランチやってません。ホリデーメニューになってます。で、向こうにはおじいちゃんおばーちゃんが疲れた顔で順番を待っていて、もう飽きてしまったおこちゃま達が騒いでいらっしゃる。やくぺん先生の如き小心者は、そんな人々のお姿を視野に入れつつノンビリとビール煽ってるなんてことできんわいっ。

んで、こんなところに座り、桜はどっちだと訊ねてくる世界の国からこんにちはの皆様のお尋ねに応え、残してしまった連絡仕事などしているわけであります。ふううう…

一年でもこの上野の杜がいちばん賑わう、ってか「賑わう」という言葉を遙かに超える状況になるときに、敢えてフェスティバルを開催する。そりゃ、人はいっぱいいるでしょ。でも、桜を愛でに来る人々と、ヴァーグナー聴きに来る人は、ホントは全然別の客。ちょっとついでにヴァーグナー聴いてくか、ってもんじゃないし。御山の奥の某大学は入学オリエンテーションの真っ最中で、大学を巻き込んだイベントは出来ない。野外イベントをやろうにも、場所を確保するだけでたいへんだろう。

そう考えると、このフェスティバル、ホントに今の時期にやる必要があるんかいね、と思わざるをえないのでありますよ。

ま、いつものようにビールかっくらってヴァーグナーに備えようと思ったらそうはいかなかった、というだけのことなんだけどさ。

さても、そろそろ動くとしましょうか。本日は終演後に千葉の山の中に移動。明日から新しいフェスティバル。お前、言ってることが滅茶苦茶矛盾してるぞ、と言われること必至也。いぇい!

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