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なんでこの時期に弦楽四重奏だらけなのか?:これが答えだっ! [音楽業界]

カザルスQのベートーヴェン全曲演奏会、残すところあとコンサートひとつとなり、開演までの時間をアークヒルズというかアメ大の隣に出来た新しいビルのカフェに座ってます。お嫁ちゃんも後半まで頑張るつもりだったのですが、なんか喰いながらあたくしめが請求書作ったり始めたら急に調子が悪くなり、明日の学校もあるので、涙涙で作品132は諦め、今、佃の縦長屋に戻りました。まあ、普通じゃない体の人間にはこの半端な季節は厳しい…って、いつもかぁ。

てなわけで、また淋しく独りになって、アメ大警備の官憲の動きを眺めつつ、細かい自分に対する秘書仕事やら連絡仕事をしている梅雨の日曜の夕方。サイクルは、個人的には最も興味深い「作品18の6と作品135での第1ヴァイオリンの交代はどんなことになるのか」が眺められるのにワクワクしつつ(なんせ、情熱的ながらもきっちり纏めてくるアベルと、当たり外れがちょっとあるけど当たると天才ってヴェラのキャラクターは、この両作品ではどっちに配すべきか、カザルスQのポリシーが微妙に外れる可能性がある2曲ですからねぇ)、お嫁の体調を心配しつつ、この数日、会う人々に同じ質問(というよりも嘆き、ぼやき)をされ、同じ応えを返している話をいたしましょうぞ。それ即ち、「どうしてこんなに弦楽四重奏が重なってるの、この数日?」

つらつら考えるに、この質問への回答は当無責任私設電子壁新聞に何度も記しているように思えるのだが、ま、検索しろといっても探しにくいので、あらためて記します。ご存知の方はよーくご存知の議論ですわ。

あらためて答えるに、理由ははっきりしています。日本と欧米の音楽シーズンのズレが生んだ現象です。以下、まずは欧米側の事情を箇条書きで記せば…

※欧米の都市部の音楽シーズン(オーケストラやホール、都市の主催団体がサブスクリプションのコンサートや、はたまたコンサートシリーズ、はたまた単発のコンサートを作って、あちこちの会場で提供する時期)は、原則として9月から翌年5月終わりまでである。遅い場合は10月始めからとか、6月の終わりまでとかの団体もあるが、大まか、このくらい。要は、「学校が始まってから、卒業式になるまで」ですな。

※欧米の地方や田舎での音楽祭や教育セミナーは、原則として6月終わりくらいから8月終わりまで。ズレても、夏至の頃から北米でのレイバーデーの休日明けまでである。

※結果として、5月の終わりから6月の終わりまでの4、5週間は、世界中を飛び回っているような20世紀型のスター団体やオーケストラとすれば、年に1ヶ月の家族サービスが出来る休暇タイムとなる。

つまり、5月終わりから6月上旬は、欧米演奏団体が本拠地での仕事が終わり、その気になれば最も簡単に遠隔地へのツアーが出来る時期なのであります。

実際、先週、ミロQの第1ヴァイオリンと元第2ヴァイオリン夫妻が子供を連れて日本に里帰りしていて、溜池で飯食ってたら、目の前を彼ら彼女らの知り合いのクリーヴランド管団員が行き交ったり、日本に到着したというカザルスQのシカゴ出身ヴィオラ奏者くんから飯食おうぜって連絡があったり、溜池でしっかりそっちの旧交も温められてしまった次第でありました。

一方、受け入れる日本の側にも事情があります。言うまでも無く、日本の予算年度は4月から始まる世界でも特殊な状況であります。ご存知のように、4月は役所の人事異動が多く、新人も入ってくる。で、実際の所、新体制で仕事がホントに動き始めるのは5月の連休明けからになる。これは「〇〇市文化ホール」やら「××県芸術振興財団」などでも同じであります。ですから、ホントは出来れば連休明けくらいまでは主催の公演などはやりたくない。
この数年、「東京春音楽祭」などという年度を跨ぐ民間のフェスティバルがあったり、5月連休にはラ・フォル・ジュルネ及びその派生フェスティバルが開催されるので見え難くなっちゃったけど、20世紀までは新年度から連休明けくらいまでは、海外団体などは極めて少ない季節でした。意外にも、閑散期だったのですわ。

これら双方の事情がうまく、だか困ったことにだかマッチしてしまい、連休が終わってから日本の梅雨前半くらいに、沢山の外国団体が「日本で公演したいんだけど、どうかなぁ」と言ってきて、日本の音楽事務所も「この時期ならばあちこちに売りやすいタイミングだから、考えてみましょうか」と返事することになる。

かくて、あれよあれよと招聘演奏会が増えるわけでありまする。

オーケストラとかオペラなど規模の大きな団体の場合、招聘は大手の音楽事務所になりますから、お互いに無茶なマーケットの奪い合いにならんように、なんとなく現場通しで調整が成されます。ベルリンフィルとヴィーンフィルは流石に東京でバッティングしないようにするでしょうし、ロンドンフィルとロンドン響を一緒の時期に呼ぶこともしないでしょう。

ですが、弦楽四重奏の場合、このところ、所謂大手事務所が日本に招聘することは殆どありません。個人規模の小さな事務所、ホール自身が自分で直接招聘する、はたまた演奏家の知り合いの個人がどこかの事務所に御願いする、ことによるとホントに個人が呼んでしまう、などなど。こうなると、演奏者側(及び、欧米の力のある音楽事務所側)の事情がまず先に立ち、それぞれの招聘元が話し合いをするなんて不可能。結果として、去る金曜日の晩のように「東京でアルテミスQとカザルスQとプラジャークQの演奏会があり、関西でディオティマQがやってて、名古屋ではデーニッシュQがやってる(んですよね)」とか、昨日のように「昼間に神奈川県でプラジャークQの演奏会を主催していた個人主催者さんが、慌てて夜のカザルスQの演奏会を聴きに来る」「昼間と夜のカザルスQのチクルスの間に、上野まで吹っ飛んで行ってミドリさんのアジア・ツアークァルテットを聴いて戻ってくる」なんてアホなことにもなる。

ちなみに、昨日土曜日は北京の国家大劇院ではパヴェル・ハースQが演奏会をしていて、最初は日本にまで来る勢いだった。この他にも、マット・ハイモヴィッツが来ていたり、そういうもんまで加えると、もう訳が判らぬ。

室内楽系に関する限り、もうぶっちゃけ「チェンバー・ミュージック・アメリカ」みたいな主催者、演奏家、マネージャー横断的な室内楽のための団体を作って、そこで主催者が立ち話や飯でも喰いながら調整するくらいしかないのでありましょうが…20世紀終わり頃からのそんな夢は、今だ夢のままで現実に至る兆しすらありません。業界内の現場でそれとなく調整する努力はそれなりにあったものの(溜池のベートーヴェン全曲演奏と他の主催団体の日程を調整する、とか)、今年はそれぞれの団体や主催者さんの都合があったようで、うまく機能していなかったみたいですなぁ。

てなわけで、欧米と日本のシーズンギャップが生んだこんな現象は、まだ来週も続きます。困るのは来週の火曜日なんですよねぇ、ホント。

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警告:このヴェローナQはおんちゃんの団体ではありませんっ! [弦楽四重奏]

別の用事で北京の秋の日程を調べていて、こんな演奏会があることを発見しましたです。
http://en.chncpa.org/whatson/zdyc/201805/t20180509_185744.shtml
おお、かの「世界最大の首都の世界最大のお城の前に舞い降りた巨大お椀型UFO」たる北京国家大劇院の正面左側、人民大会堂側のコンサートホールで、ヴェローナQが歌手さんと共演ではないかぁ!

こりゃたいへんだ、なんとか日程を繰り合わせねば、でも国慶節のお休みの頃じゃないかぁ、イヤだなぁ、飛行機高そうだなぁ、宿高そうだなぁ、でも、おんちゃんたちがあの巨大なホールに登場するなんて、上海Qでも出来ないことだぞぉ、これはなんとしても応援に行かねばあああああ!

とはいえ、歌手さんのプロフィル紹介はあるのに、弦楽四重奏についてはなにも記していない。演目が出ないのはこの国の常だから、まあ、それはそれ。どんなことになってるのか、御本人らに尋ねてみるべぇかぁ、ってなわけで、「トーキョーでは昨日からカザルスQのベートーヴェン・サイクルが始まったぞぉ。ところで、この演奏会、どんなんねん?」と尋ねたら、5分も待たずにおんちゃん御本人から連絡が戻って参りました。曰く…

えええ、これ、僕たちじゃないよぉ!

中国公演の話はあったが、条件で折り合いが付かなかった。この話は全く聞いたことがない。なんであれ、連絡ありがとう、こっちでも調べてみます…

ってなわけでありましたぁ。はい、OngちゃんとOnちゃん。
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ま、確かに「ヴェローナ」という名前は、イタリアの団体がいかにも付けそうだし、付けて悪いということもないわけだし、とはいえ、少なくとも北米やヨーロッパではそれなりに業界では名前が知られ始めている若手有望株なわけだから、まさか天下の国家大劇院大ホールの主催(なんだろうなぁ、よーわからん)公演でねぇ…

ともかく、事実として、北京で国慶節頃に演奏するヴェローナQは、前々回の大阪3位、前回のロンドン2位、現在はボストンはNECで鋭意勉強中の団体とは違いますので、ご注意下さいませぇ。

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溜池《大フーガ》対決:60余名VS4名 [音楽業界]

梅雨入り宣言があった途端に「梅雨の晴れ間」の爽やかをちょびっと通り越して暑いくらいの日差しが指した帝都の中枢、上空から取り組みを高みの見物するようにノンビリと横田飛行クラブのセスナも浮かぶ初夏の夕暮れの溜池。本日、此の地に音楽堂開設以来、畢竟の名勝負たろうオソロシーことが起きてしまいました。
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西の大横綱、今に残る究極の「20世紀オーケストラ」クリーヴランド管弦楽団が、連日喝采を浴びるベートーヴェン交響曲全曲演奏会の千秋楽、総勢60名以上の弦楽器奏者を大ホールの舞台にぎっちり並べる。かたや、スペイン拠点団体に拠る世界初のベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏会を今シーズン欧州各地で繰り広げてきたカザルスQが、すっかり練り上げられた演目抱えてシーズンフィナーレに極東の帝都の室内楽お庭に参上。日曜日までの集中的チクルスが始まる。

かくて、大小空間の規模に違いあれど、楽聖の究極の楽譜のひとつに浸るべく集まった帝都老若男女の前で、空前絶後の《大フーガ》勝負が繰り広げられたのでありましたですっ!

いやぁ、これは困る。ホントに、困る。やくぺん先生ったら、どっちに座れば良いのやら。会場は隣、ってか、ロビーを共有する大小ふたつの並んだホール。開演時間は共に午後7時という帝都のスタンダードタイム。幸か不幸か、クリーヴランド管側はサイクル大トリの第9の前、前奏曲的な扱い。カザルスQは、《セリオーソ》で始めるという奇策でチクルスを開始し、後半に作品130の終楽章に置かれるのが《大フーガ》なのであーる。

てなわけで、結論から言えば、両方の主催者さんにふかあああぁく頭を下げ、クリーヴランド管の作品133弦楽合奏のための《大フーガ》を聴き、吹っ飛んでロビーに出て、カザルスQの作品130(終楽章《大フーガ》)を聴かせていただいた次第。ホント、演奏家の皆さんやスタッフの皆さんには失礼この上ないとは承知ながら、こればっかりは仕方ない。お許しあれ、演奏家の皆様、笑って眺めてくれ、遙か天上の楽聖さまっ。かくて、大ホール2階から室内楽のお庭に集まる人々を眺めるのであった。
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ちなみにクリーヴランド管の第9は、カザルスQの《セリオーソ》を聴き終えたところの某弦楽器雑誌編集者さんにお渡しし、腐らせることはありませんでした。編集者さんにとっては、悪魔の誘惑だったのであろーか…

※※※

まずはクリーヴランド管&シェフ様の弦楽合奏版でありまする。びっくりしたのは、その演奏者の数。このサイクル、オケ団員として給料払ってる弦楽器奏者全員動員したんじゃないかと思うような巨大編成で、第1ヴァイオリンが16人とか17人とか。本日もコントラバス9本がズラリと並ぶ。配置は今や珍しくなったストコフスキー配置というか、舞台表に第1ヴァイオリンとヴィオラが出て、上手側にコントラバスが居て、その前にチェロがゴッソリ座ってる、というもの。昨今流行のヴァイオリン対向配置ではありません。

結果から言えば、この配置のお陰で、5声部版《大フーガ》のチェロとコントラバスの関係が「別の声部」ではなくて「巨大な低声の響きの固まり」として響いてくることになる。なんせこちとらは普段は弦楽四重奏の4声でばかり聴いてるものだから、最初のフーガの後半からコントラバスが参加し始めるや、もうポリフォニーというよりも低音の壁がどかああああんと舞台上手側に立ち上がる、って感じ。

そんなことになるのは指揮者さんは百も承知でありましょうから、これはもう意図してやってることなのでしょう。良くも悪くも、猛烈な響きの固まりが舞台の上でグァングァンど突き合いをしてる。んで、フーガ部が終わるや、巨大な弱音のレガートの流れが優しく美しく鳴り渡り、その対比たるや猛烈なもんであります。

後半のフーガではコントラバス声部はほぼ参加しっぱなしになり、ふたつのフーガが随分と違って聞こえたのはなかなか面白かったです。

ただ、やっぱりこれだけ大編成だと、最後の「もう一回フーガいこーかなぁ、どーしよーかなぁ…やっぱりやーめた」って辺りが、なんだかちょっとノンビリした感じになっちゃうのは仕方ないことでありましょう。

第9を聴くべく会場に集まった2000余名の聴衆は、この曲のドラマ性の希薄さってか、アンチクライマックスぷりってか、どうお感じになられたのでしょうか。

後半のカザルスQによる作品130の終楽章としての《大フーガ》は、サイクル初日ということもあって、「長大なガリツィン・セットを締め括るバカでっかいフーガ」という設計ではありませんでした。あくまでもこの極めて特殊な格好の巨大弦楽四重奏はこういう風に終わりますよ、という造り方。合わなさ加減の微妙なバランスは、やっぱり指揮者さんがコントロールしちゃうと判らなくなっちゃうなぁ、とあらためて思わされた次第。

流石に今日は疲れたので、これでオシマイ。とにもかくにも、コントラバス声部が入るとかなり別物感が漂うということは、いかなアホのやくぺん先生でも嫌と言うほど判らされた勝負でありましたとさ。無論、勝負としては…異種間過ぎて試合成立せず、ってとこかしらね。

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ベートーヴェンのお庭開幕 [音楽業界]

今、サントリーホール前、梅雨入り宣言が成され、人々がオルガンの前で傘を差して会場を待っているのを眺めてます。

今や世界の話題の中心になっている南の島国に居た頃から、ここ帝都中枢溜池はいつのまにやら「室内楽のお庭」の季節。ほれ。
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昨年のリノヴェーションお休みを挟み仕切り直し、制作現場スタッフほぼ一新とはいえ、メインイベントのひとつ、ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏は来年までお庭創設スタッフの仕込みで、ま、不祥やくぺん先生もお庭番裏方としていろいろ関わるわけで、かのカタロニア独立投票直後のゼネストの日に延々とヴィオラのジョナサン宅まで市内を歩き回ることになったり
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2017-10-04
アムステルダムでトークセッションやら深夜までのながぁあああいコンサートに付き合ったり
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2018-01-30
ま、なんのかんの、ともかくここ溜池までカザルスQが無事到着、先程、お友達だらけのクリーヴランド管のコンサートに向かうヴィオラのジョナサン氏とご挨拶も済ませました。あとはもう、明日からしっかり弾いていただくばかりであります。はい。

上述のようなわけで、やくぺん先生ったら、基本、広報作業でも裏方。カザルスQに関する資料のスタッフへの提出に徹しており、直接なにかを刷り物に書いたりはしてません。んで、もう先週から始まってるお庭の入口で配られている当日プログラム冊子になにがどう書いてあるか知らんわけで、ことによると話がダブってるかもしれませんけど、でもまあ、それはそれでいいや。

とにもかくにも、「お庭に於けるカザルスQのサイクルの最大の特徴はなんぞや」を、ずずぅいと皆々様にお伝えしておくぞぉ。

ええ、今回のサイクル、パシフィカQ、ヘンシェルQ、ボロメーオQ、キュッヒルQ、ミロQ、Qエクセルシオと続いてきた中で、ひとつ初めてのことがあります。おわかりかなぁ?…そう、「初めてのヨーロッパのラテン系文化圏からの団体」であることは仰る通り。もうひとつ、何を隠そう、興味深い事実がありまする。それ即ち、「ヴァイオリンが交代する初めてのサイクル」なのじゃ!

実は、間抜けなことにあたくしめもバルセロナでジョナサンに話をしたときにはそんなこと気づいてなかった。けど、1月にパリのビエンナーレで彼らがベートーヴェンばかりのプログラムを演奏し、そこでヴァイオリンの交代をしたんですわ。んで、おおおおお、と吃驚。あわてて楽屋に吹っ飛んで行き、「おいおいおい、あんたら、ヴァイオリンをローテーションするんだっけ」と息せき切って尋ねたら、良いことを訊いてくれおった、とばかりにだああああぁ、っと。オッと待て、ここではなんだから、来週にアムステルダムで話をきかせてくだしゃんせ。

斯くて、以下がジョナサン氏のご説明でありまする。
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/chamber2018/topics/interview.html
このページの真ん中辺り、「ベートーヴェン・サイクル初の「ヴァイオリン・ローテーション」によるアプローチ」ってとこをお読みあれ。ポイントだけ引っ張っちゃうと
「アベル・トマスは18世紀の音楽に資質があり、ヴェラ・マルティナス・メーナーは、19、20世紀音楽により親近感を感じています。それで、アベルが第1ヴァイオリンに座るのは、1805年くらいまでの作品、バッハ、ハイドン、モーツァルトのすべて、それからシューベルトの初期作品と、ベートーヴェンの作品18までです。ヴェラは、「ラズモフスキー」からシューベルト後期、シューマン、メンデルスゾーン、ブラームスから21世紀作品までになります。例外はほとんどありません。」(ジョナサン・ブラウン)

ってこと。つまり、カザルスQのローテーション制度は、はっきりと作品の時代様式に拠って決められていて、俺がこっちを弾きたい、あたしはこっちがいい、というようなもんではない、ということです。

このやり方って、ありそうで、ない。他にこういう形でのヴァイオリンの席スイッチをしている団体、やくぺん先生は寡聞にして知らぬわい。

サイクルとして聴いたとき、これがどのような効果を生んでくるか。こればっかりは聴いてみないと判らない。ほれ、明日の夕方から溜池に通いたくなったでしょ。さあ、どうぞぉ。
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ちなみに、初日の明日は《セリオーソ》と作品130なんで、コンサートの前半後半でのヴァイオリンの席交代はありません。


お庭開催中の溜池、隣の大きな方の空間では、もうひとつベートーヴェン祭りをやってます。クリーヴランド管がシェフでの短期集中交響曲サイクルの真っ最中。

「ああ、またベートーヴェン交響曲全曲かぁ」と思った貴方、これ、実はとても貴重なイベントなんですわ。日本、というか、トウキョウではヴィーンフィルやらベルリンフィルやら、指揮者さんならカラヤン、アバド、ラトル、ティーレマン…みんなやってるように思える。ま、確かにその通り。

だけどぉ、こと「アメリカ合衆国のメイジャーオケ」ということになると…なんと、過去に1度しかないそうな。関係者さんに拠れば、四半世紀前にドホナーニ指揮で同じクリーヴランド管がやったことがあるだけとのことであります。(追記:某評論家さんに拠れば、その前にサヴァリッシュ&フィラ管がサントリーでやってるとのこと。なるほど、理由は書き出すとひとネタ出来てしまうからしあいけど、あり得るのはその組み合わせくらいなのは大いに理解出来ます。)

考えてみれば、アメリカのオケのシステムで、このような短期集中サイクルは絶対にやれない。なんせ、チューバとハープがずっと仕事ないわけですからねぇ。今回のクリーヴランド管も、オケ創設100年の特別サイクルだそうな。すごおおおおく特殊なことが起きてる。

音楽は、真っ正直な「最高の20世紀オーケストラ」のベートーヴェンであります。今やちょっと懐かしさすら感じる、「ああ、こういう上手なベートーヴェンって、あったよねぇ」と遠い眼になっちゃいそう。

残されるところ明日の第9なんぞのみ、懐豊かでお暇な方はどうぞ…と言いたいけど、隣に来てくれ、とも言わにゃならんしなぁ。

ちなみに明日は、大ホールとブルーローズで《大フーガ》が響くというこれまたとんでもない事態になってし…さああどーするどーする、あたしっ。

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アラビア半島の先っぽでゲルギーを聴こう! [音楽業界]

新嘉坡たった数日でいろんな人にあっていろんなもんを眺めて体力無しの爺婆はヘバヘバになったまま、昨日はまともにお仕事するなどという隠居宣言にあるまじきことをしたので大いに疲れてしまい、今日は情報を入れるだけでオシマイ。

アラブ人街でラマダンの空気を味わったら、そういえばラマダン明けのアブダビやドバイの劇場はどうなるんだろうなぁ、などとしょーもない興味が沸いて、ちょろっと調べてみたら、なんとまぁ、こんなんがあります。場所は、名にし負う噂の「西アジアでもっともまともなオペラハウス」と言われるマスカット歌劇場。
https://www.rohmuscat.org.om/en/performance/performance-detail?i=355

この劇場、なんせスルタン様がイギリス帰りのインテリなもんで、ドバイやらみたいな「金積んでいちばん高いのもってこい」ってオペラハウスも作っちゃったのとは違い、ちゃんとした趣味がある。カタールやアブダビのホントのオペラ好きが唯一期待してるハウスだそうな。んで、このゲルギー様の《イーゴリ公》も、贅沢三昧慣れきったトーキョーのオペラ愛好家さんには「またゲルギエフかぁ、ジャパンアーツ、そろそろいい加減にしろよぉ」と思うかもしれないが、ま、ともかくちゃんとした引っ越し公演でありまする。ゲルギーさんだけあって、ちゃんとオケ演奏会も付いてます。なんと、《アレクサンダー・ネフスキー》やるみたいだぞぉ。
https://www.rohmuscat.org.om/en/performance/performance-detail?i=356

ちなみに、オペラ好きサルタンの面目躍如はこっちかな。9月6日と8日。
https://www.rohmuscat.org.om/en/performance/performance-detail?i=352
ドミンゴ様出演演出のサルスエラでありまするっ!

ちなみにちなみに、ドミンゴ様見物に行こうとお思いなら、どうせドバイで乗り換えなんだから、こんなのもありまっせ。
http://www.dubaiopera.com/showlist/carmen/
なにせ来る9月の6日から8日と、ドミンゴ様ともろ重なりですから、日程はばっちり。アルメニア国立歌劇場の引っ越しみたいですねぇ。なんか、全然、想像付かないなぁ。

さああああ、9月の初めは、アラビア半島の先っぽでオペラ三昧だぁあああ!

え、わしゃ、いかんですよ。誰か行ってきてちょ。今年のミュンヘンはピアノトリオですから。

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新嘉坡タクシー運転手の嘆き [たびの空]

どこの土地に行っても、現地情報を得る最初の窓口のひとつがタクシーの運ちゃんであります。ま、言葉がドーしよーもない国はともかく、空港から市内、市内から空港へのタクシー車中は、往々にしてそれなりに距離があり、淡々としたドライブが続くので、お喋りな運ちゃんにぶち当たると嘘かホントか判らないこと含めいろんな面白い情報がゲット出来る。公共交通機関が充実している街ならそれはそれで有り難いんだけど、やくぺん先生とすればタクシー料金の場合は地元情報代も込み、とマジで思ってます。

さても、今、たった数日の滞在でチャンギ空港から羽田に戻るところ。日曜の朝とあって島の南の空港道路もガラガラで、アラブ人街入りっぱたの宿から15分くらいで到着してしまいましたとさ。これで国の半分走ってるんだよねぇ。1500円くらいだから、佃縦長屋からバスで成田に往くのとかわらんぞぃ。

さても、シンガポールのタクシーの運ちゃんは、ともかく何故かお喋りなオッサンが多い。どうも、傾向として、朝の道が空いている仕事始めの頃は政府支持で、夕方のラッシュアワーになって疲れて来ると反政府色を強めるようでありまする。本日の爽快な朝のドライブは基本「新嘉坡まんせー」で、便利だ、食い物は旨い、どこに行くにも簡単、ってそれはそれで面白かったが、その中に漏れてくる口さがないジモティの本音あれこれ。

1:なんでも新しく綺麗なこの国だけど、インフラが直ぐに古くなり、5,6年でどんどん立て替えねばならない。ちょっと滞在するにはピカピカでいいけどねぇ、金がかかってしょーがない。

2:え、それなら建設業が景気良いだろう、って。いやぁ、ダメだね。建設業は稼げないよ。マネージメントがちゃんとしてないと、商売がたいへんな業界だよ。

3:ほら、今もチャンギ空港も第5ターミナルを建設していて、それが出来ると軍事施設が沖に移転するんだ。そう、街の真ん中にある基地と、北にあるパダンまでのドメスティック線がひとつ出ている空港が廃止される。街に近い一等地が出て来る。

4:タクシーが稼げるって!いやいや、お客さん、グラブが国営になって、俺たちタクシーの仕事はどんどん小さくなってる。この国では、稼げるところは頭の良い御上がみんな取ってしまって、稼げないところが民間にまわってくるんだ!がぁっはっははぁ!

おお、最後はやっぱり反政府発言になってもーたぁ。

3の話は実はもの凄い大ネタで、要は、アラブ人街の向こうの島の真ん中にある国連軍基地でもあり橫田への米軍定期便がある旧空港の空軍基地が廃止になり、シンガポール史上空前の広大な国有地が出現する、ということです。ソウルの梨泰院の旧日本軍基地から米軍基地になった広大な場所の返還及び再開発と同じ大規模再開発区域がいきなり出現するのわけで、これはもうたいへんでしょうねぇ。

なんせ、到着時に頭の上を抜けて行ったマシン鷲くん大編隊もこの基地に下りていったわけだし、エスプラネードの野外劇場やらマーライオンの前に坐ってると、三本足の上に公園をのっけたホテルの向こうをF16やらチヌークが降りて行くって、まるで通年航空ショー状態のシンガポール、流石にあれはマズかろうと頭の良い御上は思ってらっしゃるんでしょーなぁ。現状はこんな。
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アラブ人街から東を崇めると、高層アパートの間をすり抜けてタッチ・アンド・ゴーをする新嘉坡防衛軍のC-130の尻尾が突き刺さってら。

永遠に建設中のこの街、次に来るのはいつか知らねど、また新しいピカピカの場所が出来て、さあ消費しろ、さあ経済をまわせ、とせっつかれるんだろーなぁ。Viva、白い社会主義っ!

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揚げたチキンライス [たびの空]

リリックオペラ・シンガポールが年に1本出すステージ上演の《アイーダ》をエスプラネードの正面左手のドリアン内で眺め、今、バスで宿まで戻って参りました。いやぁ、寒かったあああああぁ!マレー半島やらの劇場は猛烈に冷やしてあるという事実をすっかり忘れて、お嫁ちゃんは生き埋めならぬ凍死寸前でありましたとさ。

中身については、ま、それはそれ。ひとことだけ感想を言っておけば、指揮者の「タイのマルチスーパータレント」、ライオン頭のスチャリトカル御大には、是非とも一度トップクラスのオペラオケを振って好き勝手なことをやって見せて欲しいもんでありまする。ヴィオラに周山啓太氏が座ってるリリック・オペラのオケ、この街ではシンガポール響に次ぐ第2のオケとはいえ、やはりいろいろと限界を感じざるを得ず…。このオッサン、まかり間違ってヴィーン国立歌劇場オケとか振るなんて天地ひっくり返るようなことがあったら、あたしゃ、万難排して行くぞおおお!

んで、お気楽な話はそっちではなく、こちら。ご覧あれ、これは何だか判るかなぁ?
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え、単なるチキンカツ定食でしょ、って思いますよねぇ。仰る通りなんだけど、これ、「ハイナニーズ・チキンカツレツ」なんだそーな。要は、「シンガポール・チキンライスフライ」でんがなぁ!

ご覧のように、ソースはあの赤い奴だし、付け合わせもいつものチキンライスだし、ご飯もそれっぽいもんがのっかってる。キャベツがご飯の上にトッピングされてるのが独特だけど、一応、揚げてなければ完璧にチキンライスに見える代物でありまする。

このご飯、いつものチキンを煮たお汁で炊いたんじゃなく、もうちょっと魚醬っぽい臭いがするものの、「うちのライスはこういうのです」と言われれば、ああそーですか、としか言いようが無いかな。

このご飯、喰らったのはここ。
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なんと、天下のエスプラネードの2階です。以前はエスプラネードの事務所の方とオフィシャルな打ち合わせ飯などをするときに使っていた高級中華屋だったとこが、こんな店になった。
https://www.esplanade.com/explore-esplanade/eat-and-drink/old-school-delights
なぜか注文は白板に自分で書かねばならず、卓上には消しゴムが入ったボックスが置いてある、という「懐かしの学校給食」の演出が成されたお店らしい。

懐かしがることの出来ない遙か東の島国のお上りさんには、へええええ、と思うしかないのだけど、金曜の夜にはそれなりに賑わっておりましたとさ。

建国半世紀を過ぎ、この島にもクニとしての歴史が出来、それを懐かしむ人々がおり、摩天楼が南の空を貫く。金曜夜の劇場コンプレックスには、ラマダンの気配も無し。

親爺喰う チキンは知るや 断食日

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断食の島へ [たびの空]

3ヶ月ぶりにシンガポールに来ています。「初夏の」と言いたいところだけど、なんせ赤道直下、夏も冬もない場所なんで、「いつものように暑い」としか言いようが無い。

梅雨に入ったんだか入るところなんだか、極東の島国の上には前線が張り付いているようで、羽田Cランを南に向けてひょいっと離陸した長い78くんは、まるで大阪伊丹に向かうように横須賀上空から駿河湾突っ切り伊豆半島真ん中、遠州灘じゃなくて静岡空港から浜名湖の上空東海道に沿い、エイッといきなり左に曲がり、お伊勢様の沖から一気に南に向かう。沖縄、台湾の遙か東をかすめ、ルソン島南からミンドロ島を跨ぎ、バラワン島と南沙諸島の間なんてヤバイ空域を抜け
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遙か左手には懐かしやコタキナバル、バンダルスリブガワンを眺めながら(見えなかったけど)、レイテ特攻に赴く栗田艦隊を見送るような思いっきり南の道を通り、マレーシア側からチャンギ空港東側滑走路に到着。窓は熱帯の蒸気で真っ白で、外はなんにも見えず天気も判らず。

今回はお嫁ちゃんが来月末に学生さん引率して来るラサール芸術カレッジなんぞにご挨拶したりすることもあり、いつもとはまるで違う、アラブ街の出口っ端なんて場所に宿を取っている。チャンギからは湾岸ハイウェイをぶっ飛ばして市内に降りた所をいつもと反対に、ちょっとだけ引き返すように戻った辺り。明日はイスラム休日金曜日だから練習は日暮れまでがっつりやるよってか、夜の7時にならないと暗くならないどう考えても時差あと1時間必要だろうという不思議な時間設定の夕空を切り裂き、中心街とチャンギ空港の間の住宅地の中にドカンと構える橫田にも定期便がある旧空港に向け、新嘉坡防衛軍の尖鋭鷲くん軍団がまるで国賓を迎えるかのように三角形の6機編隊で渡っていくのであったぁ。
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かくて到着したアラブ街の宿、なんせ周囲には最近流行のカプセルホテル以下、所謂ホステル系安宿が沢山ある辺り。上空今だ日が残る中をマシン鷲くん轟音撒き飛び回る下、夕飯食いに出た巨大なモスク周辺はたいへんな人の群れとなってら。マレー料理は勿論、なぜかレバノン料理の店が何軒も並ぶ門前通りを人を分けて歩くも、なんせ胃がない(比喩ではありません)お嫁ちゃまが一緒なんで、油がどんなことになってるか判らぬアラブ系飯はパス。お高そうだけどここなら安全だろうと、それなりにジモティで賑わうスウェーデン料理なるお洒落っぽい店に入り、正しくは軒先に座り、メニューを眺めれば、午後7時前の時点でこんなん。
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ああ、なるほどぉ、ラマダンの期間中って、細かくメニューが変わるのかぁ。日が落ちた(ホントは落ちてないけど)頃は飲み物だけは許してやろー、ってことなんかい。

場所が場所だけに、グスタフ一世の主教改革国の飯屋でも完全に日が落ちるまで飯は出ないのかぁ、と嘆こうとした非ムスリムであったが、おねーさんが裏にご飯はあるわよ、と教えてくれて、くるりと反対にして一安心。飯もありましたぁ。ま、隣の席を見るともなく眺めれば、もう紛う事なきムスリム衣装のお嬢さんたちが、なにやら食い物並べてお喋りに興じてるではないかぁ。そこそこ待たされてカリカリに焼いたチキン、挽肉入りマカロニグラタン(豚肉じゃなかった)なんぞがやくぺん先生ご夫婦の前に並べられても、まだまだ延々と女子会っぽいお喋りは続いてら。
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周囲は、断食の昼が終わって、さああああ日の出まで喰いまくるぞぉ、明日はお休み木曜日の夜(なのかいな、このクニでも?)って空気が漂い始める。

何故スウェーデン料理が世界中に広まらないかなぁんとなく納得し(僕にも作れる感漂う料理でありました)、さっさと宿に戻って寝ましょうと席を立ち、宿の側に向けてカプセルホテル前の歩道橋を渡ろうとモスクの側を眺めれば、ラマダンの夜は始まったばかりと黄金のドームが光る。
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田村隆一の徘徊したカトン、断食月の夜はこれから。

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