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何故セントラル愛知が九州に行くのか? [音楽業界]

今、昨日の「仕分け」議論の膨大なテープ起こしをしながら、ぼーぜんと民放地上波デジタルのニュースを眺めておりました。TBS午後7時のニュースです。おお、かたやまうきゅー、生きておったぁ、などと安心してたら(同行者の方がまだ見つかっていないのが心配ですが)、「仕分け」のニュースが始まった。

正直、この騒動が起きてから地上波メディアなどでこの話が語られるのはまるで眺めたことがなかったもので、極めて興味深く眺めたわけです。九州の南の方の小学校に松尾さんの指揮でセントラル愛知が行き、学校の講堂で演奏会をやり、子供らが大喜びして校長先生が喜んで、みんながバスで去っていくと手を振っている。小生のような商売をしている者とすれば、それこそブルネイ奥地から佃の児童館に到るまで、世界中で無数に眺めている絵づらです。映像としては、この類の学校アウトリーチ報道では典型の紋切り型でありました。それにしても、TBSはよくまあこんなに堂々と子供らの顔を真っ正面から撮影することよ、テレビ局ってクレームを何よりも嫌がる筈なのに、と呆れた次第でもありますが。

この事業、文化庁のホームページにある「本物の舞台芸術体験事業」一覧の中にあるのでしょう。お暇な方は探して下さい。このファイル。21_jigyosaitaku.pdf

当然ながら、居並ぶキャスター陣は「こんな素晴らしいことを無くすのはよくない」の大合唱だったわけですけど…当電子壁新聞を眺めていらっしゃるオケに関心のある方々なら、ちょっと奇妙に思われなかったでしょうか。奇妙、というよりも、あれ、って感じ。

なんで九州にセントラル愛知が行かなきゃなんないの????

実はこの事例は、仕分けについて当電子壁新聞が書き始めた最初の頃に、コメント欄である専門家の方が指摘して下さってます。下の日付のコメント、真ん中くらいのhyamadaさんのコメントをじっくりご覧下さい。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2009-12-13
誰も正面切って文句の言えない「御上の予算でプロの芸術団体を小学校に派遣する事業」に関して、仕分けた側が問題にした「国じゃなくて地方がやるべき事業ではないか」という指摘を世に示す典型的な例なんですね(ちなみに、仕分け報告書を読むと猿でも判りますが、仕分け側がカットしろと言ってるのは、「国の事業としてはカット、地方にまわせ」ですから)。このTBSのニュースフィルムは、全く同じ素材を用いて、全く逆の結論へと視聴者の意見を誘導することも可能なのでありますよ。「これこそ仕分けされるべき典型例だ」と結論づけることが簡単にできる映像なんですな。

だってさ、誰がどう考えたって、同じ予算でオーケストラなんて移動に金がかかるものを九州で動かすなら、セントラル愛知を名古屋から連れてくんじゃなくて、九響を連れてくのが常識でしょ。日本国内ツアーの移動代というのはもの凄い額で、ましてや今話題の「楽器の機内持ち込み」問題だって起きてる。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2009-11-29
コストや音楽家の不安、裏方スタッフの手間を考えれば、博多から全部バスで移動することだって可能な九響がやるべき仕事になるのが当然。このアウトリーチツアーの移動代がどういう風になってるか具体的なデータがどこかに公開されてるのか知らぬが、常識的に考えて、このツアー全体として眺めれば、数十人のオケマンの南九州地区への移動を博多出発点にするか、名古屋出発点にするかで、必要経費は相当に違ってくる筈ですよねぇ。
アートマネージメントでオケを専門にやりたい方、暇だったら「40人の楽団員を連れて九州南部の4つの学校を3日間でまわるツアーを、名古屋出発と博多出発とでそれぞれ試算せよ」ってシミュレーションをしてみてちょ。ちなみに名古屋から博多までの新幹線普通車片道大人一名は1万8千円くらいですな、うぁおおおお。

つまり、無駄とはそういうことです。もしも九響がやればトータルの旅費が2割でもカット出来るなんてことになれば、ことによると回れる学校をもうひとつ増やせるかもしれない。ことによると、オケのギャラが増やせるかもしれない。

勿論、いろんな事情があってこういう事になってるのでしょう(完全に技術論となるその辺りの事情を知りたい方は、「音楽の友」来年1月発売号のオケ連事務局長発言をお待ち下さい)。でも、事情がどうあれ「どー考えても無駄」というのはこのことであります。
もしもこの事業を「九州道」とかの予算でやるとすれば、絶対にセントラル愛知を用いる事はあり得ないでしょう。九響が忙しくて出来ないならば、九州にアウトリーチ専門のプロオケを作るか、九響が東フィルみたいに楽団員を増やして複数の事業を同時に行える体制にすればいい。それでもやっぱり日程的に無理なら、広響とか近隣に頼んだり、ソウルにゴロゴロあるプロオケ(ヘタすると移動コストは東京などから来るより安いかも)などまで含め九州道としての入札をすればいい。「道」の事業となった瞬間、具体的な方策はいくらでもある。

更に言えば、仕切りをなさった方々が提案したようにこの芸術家派遣事業が「四国道」の予算でやる仕事になれば、その瞬間に「四国にもオーケストラを作らねばならない」という議論がイヤでも始まるだろう。大阪で予算カットされそうになっているオケが徳島にフランチャイズを移す、なんてことになるかもしれない。「文化に仕切りをするな」と国際フォーラムの一室に並んで言い立てた指揮者さんや音楽家さんたちにしてみれば、万々歳の結果じゃないですか!

今やろうとしているのは、そういうことへの第一歩の筈なんじゃないの?

それにつけても、テレビ局のディレクターと小生とで、同じ素材を前にしながらもこれほどまでに違った結論になるなんて、空恐ろしいこった。報道ってのはこういうもんだ、と肝に据えましょうねぇ。

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コメント 6

rodrigo

なるほど、なるほど!
常々、「弦楽四重奏」の話題が出ないかなあ、などと思いながら拝見させていただいている私にもよく分かる話で、おもわず精読してしまいました。

by rodrigo (2009-12-19 07:00) 

アトストロ

・セントラル愛知
・テレビ局のヨイショ!

トヨタ財団などの愛知県の地元企業が協賛金を出しているのではないですか?
by アトストロ (2009-12-19 08:35) 

皇帝きむち

 お久しぶりです。

確かに近辺のオケが文化庁で九州へ行ったとかよく聞きます。
いろんな兼ね合いあるのでしょうが、近辺のオケが仕事する・・・というのは交通費節約、経費節約としては当然かもしれません。

ユニオンが実施している。「あすなろコンサート」でもそういう観点で演奏家送ってます。

まあ個人的には旅行できるのはうらやましいですが(爆)営業だけではなく税金使った事業ですから・・・。

我々のユニットも「本物の舞台芸術体験事業」一覧・・・の中にあるのかな?今年度は大阪、京都、三重(これはちょっと遠かった)でやりました。また違うのかな?
by 皇帝きむち (2009-12-19 10:58) 

Yakupen

地獄のテープ起こし、地獄の出した原稿全面書き換え要求、地獄の掲載誌取材協力者発送と、いよいよ年末っぽい無茶さになってきた今日この頃、まとめてお返事させていただきます。

Rodorigo様、SQネタ、いっぱい溜まってます。この世間の嵐が凪いだら、まただーれも読みに来ない話、やりますので、ちょっとお待ちを。今日も新日経ホールでの岡山Q&ゲヴァントハウスQのメンデルスゾーン、行けなさそうです。ふううう。

アトストロ様 小生思うに、単にテレビ局のディレクターが「目の前で起きていること」から「報道すべき事」を読み取る力に劣っているだけ、つまり、ジャーナリストとしてダメ、というだけのことだと思います。「音楽家が学校に来て子供が喜んでいる」、「これがなくなるのを先生が嘆いている」なんてことは、「春なので暖かい」とか「年末なので忙しい」とか、わざわざ教えてくれなくても誰だって知ってることです。もの凄いお金を使って放送局作って、公共の電波を数億円で御上から貸して貰って(どう考えても費用対効果では安すぎると思うけど)、世間に報道する必要なんかありません。
今、この九州の小学校でのイベントを報道する理由があるならば、「どうしてそんなことが出来ているのか」の筈です。「どうして」の問いかけがない報道は、ジャーナリズムじゃない。逆に言えば、「どうして」という視点を持った途端に、どんな日常的なつまらないことでもジャーナリズムの対象になる。

もうひとつの話題。今回の問題は、国が税金を「芸術文化支援基金」を通して分配した結果として行われる活動が議論となっています。私企業であるトヨタは、自分の文化財団で自前で全く金にならない文化助成をもの凄く沢山やっており(所謂「メセナ活動」ですね)、意外かもしれませんが、そういうことに金を出していることはあまり宣伝しません。メセナ活動というのは、基本的に宣伝広告しないものなのです。今の常識からすれば、もっとやった方が良いんじゃないか、と思うくらいですけど、メセナ活動を広告する金があるんなら、その金をメセナ活動そのものに使うべきですしねぇ。

皇帝きむちさま、デュオやトリオで動く場合の旅費と、オケの旅費は、文字通り桁違いになりますからねぇ。なるほど、大阪圏から三重でも遠いですか。ということは、九響が南九州に行くのも充分に遠いですねぇ。九州にはもうひとつプロオケがあっても良い、ってことですな。

by Yakupen (2009-12-19 12:43) 

hyamada

無事、帰国されて何よりです。ふと思ったのですが、「本物の舞台芸術~」のムダの多いスケジュールは、計画を組む人が何も考えなかったからではなく、もらった予算を残さず全部使い切るために相当考えた結果だったのかもしれません。

予算を効率的に使うことよりも、分捕った予算を残さずに使うことを第一番に考える思考回路は、そろそろ変えるべきだと思います。


by hyamada (2010-01-24 13:27) 

Yakupen

hyamada様

ご無沙汰です。予算が余ったら、きちんとそれを回収する経理システムって、真面目に考え始めると、案外、面倒かもしれませんね。

でも、例えば「予算余らせた率が何パーセントだかを超えると、その部署の職員全体に余らせた予算の1%がボーナスとして与えられる」なんて制度を作れば、公務員さんも必死になって経費削減に努めるかもね。ってか、そもそも公務員にボーナスなどあり得ないわけだから、公務員のボーナスとは上述のシステムによって払われる、って風にしちゃうとか。

与太話でした。

by Yakupen (2010-01-24 15:26) 

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