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「スーパージャパン」という自画像 [音楽業界]

シンガポールに来ています。土曜日の昼にサントリーホールにいなければならないので、超短期。往復深夜便、ぶっちゃけ、強行軍です。

理由は、これ。
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https://www.esplanade.com/festivals-and-series/super-japan-japanese-festival-of-arts/2016
13日からこの週末まで、シンガポール最大のアートセンターたるエスプラネードが主催する日本文化フェスティバル、「スーパージャパン」のメインイベントのひとつ、一昨年だかにサントリーホールと札幌キタラと福岡アクロスとの共同制作で創った《卑弥呼》という総合パーフォーマンスの取材であります。一応、公式取材で最終的には後パブというか、サントリーホール30周年の総合的なイベントのひとつとして書かねば成らぬので、こんな「書いてあることはみんな嘘、信じるな」をモットーとするこんな無責任な電子壁新聞にはあまり書けないのですけど…まあ、通りすがりにこんなもんやってた、というよーなことならええでっしゃろさ。

エスプラネードという文化施設は、絵に描いたような多文化モザイクをひとつの国家アイデンティティに統合しなければならぬシンガポール、それに季節がないからスポーツ大会含む文化イベントしか人々の生活に季節感を醸し出されリズムを創れるものがない場所、ということで、極めて重要な役割を担っています。日本の明治維新で薩長政府が「日本国民」を創出するために大学を頂点にいろんな文化装置を創出したのは今では(一部の素朴な方を除けば)誰でも常識として知ってますね。極論すれば、それと同じ事をせねばならない使命を担っている場所なのでありまする。

ですから、基本、ここの在り方は、「一応は英語というこの地域の文化を越えた共通語と同様のある種の普遍性を持った旧宗主国文化(オーケストラなど)を通年イベントのベースに、フェスティバルという形で華僑、マレー、インド、イスラムなどの文化をまとめて提供する」というやり方をしている。ディレクター陣も各文化毎に揃えられているわけですな。そこに、ミニイベントとしてアイスランド・フェスティバルとかオーストラリアの文化紹介、なんてのも入ってくる。

今回の日本紹介イベント、約2週間に亘る巨大なもので、こんなホール主催のメイジャーなフェスティバルを「異文化」を対象にやるのは初めてとのことでありまする。へえええ。
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ぶっちゃけ、1990年代初頭のイギリスでの「ジャパン・フェスティバル」を最初に、やくぺん先生はこの類いの「海外に於ける日本文化紹介イベント」は、もういっぱい眺めてきました。敢えて豪語すれば、少なくとも小規模クラシック音楽の視点からこれだけいっぱい見てる奴は他にはいない、と断言しましょう!えっへん←ちっとも偉そうじゃなく、妙な奴だと思われるだけだなぁ…

で、そういう流れから見ると、このイベント、とっても変わってます。というか、過去に類例のない「大規模日本紹介イベント」ですね。

理由ははっきりしてます。この「スーパージャパン」なるイベント、「日本政府なり国際交流基金なりが日本をその国に紹介したくて開催する」んじゃないんですわ。あくまでも「シンガポールのアーツセンターが、シンガポール人の視点から、21世紀10年代の自分らにとって日本とはどういうものなのか」を紹介している。無論、日本側も仕込みで関わってるわけですが、イベントに電通や博報堂、はたまた日本側プロデューサーの名前など一切出てこない。あくまでも「エスプラネードをずっと動かしてきたカリスマ・プロデューサーたるベンセン氏が見た日本」なんですね。

これはここだけの話なのですが、今回のメインイベントの《卑弥呼》にしても、アジアのホールリーグ会議などで知り合いになっているサントリーホールの相談を受けたディレクターを通して、サントリー側が最初に提示したイベントは複数あり、ぶっちゃけ、国際的にメイジャーな作曲家のプロダクションなどもあった。だけど、実際に《卑弥呼》を舞台で接したベンセン氏が「純粋に日本なのはこれだけじゃんか」という理由で、この作品が最後の金曜日の夜というメインイベントに据えられることになったそうな。ちなみに、オープニングは「きゃりゅうぱみゅぱみゅのコンサート」ですっ!

そう、このイベント、日本の愛国者の皆様やアベちゃん以下(?)日本政府が「日本を請う見て欲しい」というものを示すのではなく、「俺たちにとって意味のある日本はこれなんだよねぇ」というものなんですわ。だから、ヤルヴィ指揮N響も来なければ、新国立劇場の《蝶々夫人》の引っ越し公演でもない。そんなん、やりたきゃ一般イベントでやればいい(実際、やくぺん先生が前回エスプラネードの舞台裏に入り浸ったのは、一昨年だかの大植英次指揮東フィル公演で、その前は小澤征爾指揮ヴィーン国立歌劇場演奏会形式《フィガロ》だったわけで)。せっかくホールが主催する巨大イベントなら、そういうんじゃなくてさぁ…ということ。

無論、日程の関係で涙をのんだイベントはいろいろあるそうだが、音楽は正に「ジャパン・オーケストラ」とも呼ぶべき声明、邦楽器、和楽器、西洋オーケストラ楽器まで無節操に取り込んだ巨大舞踏劇なわけだし、演劇は「山海塾」さんです。今、宿舎のエスプラネード向かいのホテルには、声明担当のお坊さん20数名と山海塾の方々で、たくさんのアヤシいスキンヘッドの東洋人に溢れてますわ。

「自分らにとってのスーパーなジャパン」で遊んじゃおう、というイベント。こういうことが出来るようになったということは、シンガポールが多国籍文化からひとつ踏み込んだ「はっきりした自分らの文化アイデンティティを持った社会」になって来ているということでんなぁ。

とにもかくにも、シンガポール近辺にいてお暇な方は、この週末はエスプラネードにいらっしゃれば、庭には屋台村が立って日本式焼きそば喰えるし、マーライオンを眺める野外ステージではちんどん屋パーフォーマンスがあるし、エスプラネードのロビーではタケミツの室内楽やらシンガポールの若い弦楽四重奏団が演奏するジブリ音楽の無料演奏がありますので、ぜひどーぞ。

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